始まりの事件の始まり
主要登場人物
風越修二
吉祥院空
篁紳人
僕が務める交番に通報があったのが始まりです。
近くアパートに住んでいる中年の女性からで、隣の部屋から奇妙な物音と異臭がするというものでした。
それはそれは物凄い剣幕で直ぐにきてくれと、酷く怯えていて、悲鳴に似た訴えだったのを覚えています。
僕と同じ交番の先輩である葉山巡査は、女性に出来るだけ安全を確保するように伝えると準備を整え現場にむかいました。
通報があったアパートの管理人に事情を説明し、現場の部屋の前まで案内してもらうと、通報した女性も少し離れたところから駆けつけて来ました。
「すいません。近くの交番のものですが」と、葉山さんはドアどしに何度か声をかけて、僕も声をかけてドアノブを握りました。
鍵はかかっておらず、何度も声をかけても反応がないので葉山さんと僕は部屋の中に入りました。
周りは暗くて、むせ返るような変な匂いがしました。葉山さんが奥へ進んでいくと悲鳴をあげて倒れました。慌てて駆けつけようとしたときにゴツっというような音が聞こえて、気を失いました。
「と、これが現場を発見した篁巡査の証言だな。」
中年男性が、自分のであろう手帳から目線をあげて周りを睨みつけるように見回した。とこどころに傷のある強面の顔が、周りの陰惨な光景に歪む。
そこは、アパートの一室だろう。ただ、そこは天井に至るまで赤黒い血で塗り潰されていた。
「それで気がついて見れば、周りは血だらけ。先輩も首から上が・・・ね。」
凛とした女性の声が言葉を続ける。その目の前には首から上がない、警察官の制服を着た死体が転がっていた。
女性にしては高い背丈を屈めて死体に向かい手を合わせる。可愛らしい顔立ちであるが瞳や眉などに気の強さを窺わせる女性は、相方である男性に向き直り
「そんで、これはウチが絡む案件な訳?おやっさん」
と、声をかけた。
「風越さんと呼べ。まぁ、この様子からすると8割方な・・・。異常殺人だとしてもここまで派手にはならんだろう。」
顔を顰めている男性の名前は風越というらしい。
「でもさ、おやっさん。その、助かった方の・・・」
「篁巡査だ。篁紳人、21歳。さっきの証言の通り、近くの交番勤務だ。」
「なんでそっちは助かった訳?気絶までさせてんのに。」
「さあな、土御門が調査してるらしいが。」
土御門、という言葉を聞いた女性が顔を顰める。
「あの女、調査っていっても部屋の掃除で、でしょ?」
「だろうな。って、どこ行く気だ?」
風越は血塗れの部屋から出て行こうとする女性を呼び止める。
「決まってるでしょ。その篁ってのに話を聞きに。じゃ、あとは任せるね、おやっさん!」
「おい!吉祥院!」
吉祥院と呼ばれた女性は振り返りもせずに部屋を出て行った。
「やれやれ・・・。俺一人でこれを調べろってか・・・。」
ため息をつきながら風越は真っ赤な部屋を再び見渡した。
本当の始まりの始まりまでです。
これからゆっくりと続きを書いて行こうと思います。
ペースはゆっくりです。多分。
読んでくれたら嬉しいです。