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1話:島

隼人の朝は早い。

日課の…、


なんてかっこいい前置きはなく、のんびりと寝そべっていた。

隼人の朝は遅い。

11時を回った頃になってのそのそと布団を後にしたかと思えば、カップラーメン片手にいそいそと戻り、テレビをつけてニート生活。

食べ終わると携帯端末を取り出し、漫画アプリで暇をつぶす。

ちらりとも見ないテレビはそのままに、今度はピコピコとゲーム。

ゲームと言っても頭を使ったボードゲームや、ストーリーにのめり込めるRPGではなく、ただ走っているキャラをジャンプさせて死なないようにするという単純なもの。

「あ、死んだ」


特段変わらぬその日常は、特筆すべきこともなく、今日も日が没していく。



俺は隼人。

実は俺には凄い能力があった。

俺は剣を片手に握りしめ、魔王を倒すためにこの世界に呼ばれたのだ。


などと妄想を膨らましながら今晩のカップラーメンを作っていた時、ピロリと携帯端末が鳴る。

「ん?真澄さんか」



件名:真澄です


明日、お家に伺います。

大会の申請書を持参するので、是非参加していただけませんか



「またかよ、めんどいな…」



件名:Re:真澄です


申し訳ないのですが、お断りします

僕は頭を使いたくないので、大会なんか無理です



「よし。なんかアホっぽい文章になったけどまあいいよな」

端末をポケットにねじ込むと、お湯を入れたカップラーメンを片手に窓際の椅子に座る。

机にカップラーメンを置き目の前のチェス盤を眺める。

盤面は白のチェック。

星明りに照らされたそのチェス盤を前に、隼人は涙を流した。

「俺にゲームをする資格はない」

あと一手で確実に黒が詰むその盤面は、黒の手番で終わっている。

「俺がゲームを楽しいとさえ感じなければ…」

自責の念に押しつぶされる寸前で、タイマーがなる。

「……。食べよう」




「ねえ、隼人?ほんとにゲーム好きなんだね!私とチェスで勝負してよ!」

遠い。果てしなく遠いその声はどこか優しく隼人を包み込む。

夢を見ているようだ。

「私が勝ったら、ほんとに結婚してよ?」

勝ったらな。

「いったからね?男に二言はないからね?」

ああ。勝ったらな。

「あーあ。しーらない。私チェスだけは得意だし」

期待してるよ。




「ほーら、起きて、隼人くん」

「真澄さん…」

目が覚めると、そこは相変わらずの自室だった。

強いて違うところを上げるとするならば、部屋がいつもより明るいことぐらいだろうか。

「約束通り来たよ」

書類を持参しているところを見ると、昨日の件で来たらしい。

「勝手に入ってくるのはどうなんだ?」

たった今目をさましたばかりの隼人にとって、それは仕方がない疑問だったが、どうやら真澄の怒りセンサーに触れたらしい。

笑顔から途端に憤怒の表情になって怒鳴りはじめた。

「何回もピンポンしたわよッ…!!!」

「え」

「何時間待ったと思ってんの!このクソ寒い中何時間もひたすらインターホンを眺めさせられたのに、なーにが「勝手に入ってくるのは」だ!!バカにすんじゃねぇ!!!今もう昼の2時よ!?いくら何でも頭おかしいでしょ!!!倒れたんじゃないかってヒヤヒヤしたわ!馬鹿じゃないの!」

「はい…」

怒涛のラッシュに、流石の隼人もだんまりを決め込むしかない。

どんな理由であれ自宅に勝手に入ってきたのだから文句言われる筋合いは無いのだが、いかんせん堕落した生活をしているため、何も言い返せないのが辛いところだ。

「はぁ…。まあいいわ。っと、大会の話なんだけど」

「断る」

「いや、でも…」

「なあ、それ以上言うなら俺は日本の担当を降ろさせてもらう。正式の招集の時には応じているし、結果も出しているはずだ。問題はないだろ」

「でも、聞いて欲しいの」

「何を言われても俺は出ない。そんな資格は俺にはねーよ」

「ふーちゃんが関わってるとしても?」

途端、空気が張り詰める。

真澄は隼人の禁忌に触れたのだ。

冷徹な視線は絶対的なまでに相手を服従に追い込む。

「おい…。その名を出すってことは、分かってるよな?」

「………!」

真澄は目をみひらいてたたずむ他にできることはなく、その体を震わせていた。

それでも真澄は隼人に真意を伝えるべく、必死に声を出す。

「大会のけい…、ふーちゃんが…」

「なに…?」

隼人の同様は目に見えて明らかだった。

体の力が抜け、床に倒れたかと思うと、時間を確認し、即座に起き上がる。

「ふろ、はいってくる」

体の緊張がとけた真澄はただ呆然と見ることしかできなかった。




「人が多いな…」

「あなたが外で話したいって言ったんじゃない」

隼人はいまカフェに来ていた。

「さて、続きを話してくれ」

「今回の大会、ふーちゃんが景品の一人になっているかもしれないの」

「その話は確かなのか?」

多少語尾が強くなる。

「定かではないけれど、有力ではあるわね」

曖昧にすら聞こえるその情報に、隼人は歓喜する。

「……ッ!」

「当然、参加するでしょう?」

「まて、それはおかしい」

一瞬動揺した隼人だが、すぐに頭を回転させ始める。

「?」

「冬花はゲームで負けて取られたんじゃない。ある日突然攫われたんだ。キレイにごっそりと」

「ええ。そうね、それが…?」

頭に疑問符を浮かべる真澄に、隼人は落胆を禁じえない。

「はぁ…。あのなぁ、他国がわざわざ日本国の代表者の一人を攫っていったんだぞ?どう考えても自分たちに非があるのは明らか。そんな奴らがわざわざ「我が国がさらいましたー」って言ってるようなことするか?他国の代表者攫っていったなんて知れたら島から追い出されるわ。こんな事もわかんないのが政府の人間って…。」

「す、すいません…」

よく考えず冬花の情報が入ったので慌てて連絡したのだが、良く良く考えればその通りだ。

「で、でも、日本はもう3度も連続で優勝してるわけでしょう?周りの国ももみ消すんじゃ…?」

「馬鹿か。3度も連続で優勝した国家?敵に回すより味方につけて潤った財政の端くれ齧ったほうがよっぽど美味しい。仮にここで揉み消しても、4度目の優勝取られるのなんか明らかだからな。逆に敵国にでもなってみろ。自国の開催するギャンブルに優勝国の人間が毎度毎度入ってきては大金かすめ取られるんだぞ?はっきり言って誰も味方しねえよ」

「でも、可能性としては」

「無いね。ここで日本の拉致を黙認してみろ。自国が連勝したときに代表者攫われても何も言えなくなるんだ。意地でも非難して日本に貸し作っとくほうが為になるのなんて分かりきってる。わざわざドラゴンに火を投げつけたりしないだろうよ」

「じゃあ、大会の件は…?」

おずおず…といった雰囲気で聞いてきた真澄だったが、結果はわかっていたのだろう。

「無駄なゲームはしない。頭使いたくなんかねーよ」

と言われても、それほど落胆しなかった。




世界が最もお金をかけているもの。

それは自国の政策じゃないのだ。

お金を稼ぐところ。

実に本末転倒である。

世界の名だたる国々が大金を賭して、金儲け場を作っている。それも、下手をすれば、元が取れないどころか、倍以上の損害になるという大博打。


「我々は戦争をしない」


世界が一丸となって宣言したのは、ほんの五十年ほど前だ。

しかし、そうなると人種の壁や、金銭面でのトラブル、国際問題の解決の際、時間がかかりすぎてしまい、何より、自衛隊や兵隊達の仕事が無くなり、戦争が盛んだった地域になればなるほど路頭に迷う人々が増えてしまう。

戦争をやめた途端働き口がなくなる、では困るのだ。

勿論、最低限度の私兵は各国々で所有しているが、ある程度の数を超えると、戦争を疑われ、輸出入が困難になるため、各国控えているのが現状だ。

更に言うと、銃に使う素材を売っていた人々も仕事が激減、戦車の部品の取扱をしていた人々も不要。もはや無視できる人数ではなくなっていたのだ。

この人々の仕事を与える。また、国庫を潤す目的。そこで作られたのがこの島なのだ。

戦争ではなく、ゲームで平和的に争う。

この島にはは名だたる大富豪や、超天才児、各国の主要人物とその護衛、など数千人が暮らしている。

当然、ここにある建物は一流の人間の指導のもと、完全終戦により無職となった人々が作り上げたものだ。

鉄などの多くは、戦争地域に売り捌いていた業者に頼み、電気は島に発電所を作ることで解決。

この島では日々各国の天才たちがゲームを行い、お互いが対等であると判断した場合にそれを賭けている。

さらに、年に一度、各国100億支払い、合計1兆7600億の総取りゲームを行う大会が開かれ、勝った代表者の担当国では一気に国庫が潤う、と言う、事実上の戦争のようなことを繰り返しているのだ。

良くも悪くも争うのはやめられないらしい。

大金を狙ってテロ組織が活動しないよう、外界との交信は一切不可。インターネットの地図にすら載っていない。

余談だが、この島にはすべての国が参加しているわけではない。

当然自国だけで回したほうが有利な国もあり、参加する必要がないと判断した国々は島の移住はしていない。

閑話休題。

ゲームで100億が消えるか、一兆となって戻ってくるのかが決まる世界だ。

必然としてどの国も自国の天才たちを探し、子供の頃からゲームの世界に慣れさせることが必要だった。

そんな中、目を付けられたのが隼人だった。

隼人はこの島に連れて来られると、部屋を与えられ、ゲームをし続ける生活を続けた。

島の中には大量の料理店やショッピング店、諸々の施設があるため、何不自由なく暮らすことができた。

最低限どころか、最高ランクの教養を身につけた天才児は、もはやコンピューターと見違えるほどだ。




「わかりました、では不参加ということで…」

「ああ。んじゃ帰って寝るわ」

「お疲れ様です」

頭を下げている一方、こっそりと大会申請書を書くことを心に決める真澄だった。




1話も読んでいただきありがとうございます!

いやー、実は僕ね、さけるチーズ大好きなんですけど、この前食べてたらふと「割かないで食べる人いんのかな」って思って、割かないで齧ってみたんだけど、無理だわ。

やっぱり、割かないときついね。

大きくてもじわじわ食べたい派だからね。


次話も読んでね!!

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