学園1
○ケイラ王国 幻獣使いの学園
四月の入学式が終わってから一月が経ち、学園では新入生の幻獣使いたちが親交を深め、いくつかのグループができていた。
そんな中、どこのグループにも所属せずに、校庭の木に座って寄りかかっている少年が一人。
名を二条 大和。
1-Aに所属している彼は、憂鬱な顔をしていた。
「はぁ、失敗した…………友達作りに失敗した」
俺は、ガクンと首をうなだれて足の間から地面を見つめた。
ああ、思い出されるのは入学式直後のクラスでの自己紹介……。
初めて会う自分以外の幻獣使いのクラスメートに対し、ガチガチに緊張してしまい……俺はなんも言えなかった。
『……二条、大和です。』
『……え、えっと。二条くん?他には何かない?』
『……特には』
『そ、そう!なら、次の子にいきましょう!』
……特には、って何だよ。
なんか言おうよ。読書が趣味とか、自分の幻獣はこんなのですとか。
あまりに素っ気なさ過ぎて、めっちゃ先生困ってたじゃんか。
しかもこの自己紹介のせいで、クラスメートからはもれなく暗い奴イメージを持たれ、近寄られないし。
近寄られないから、話す機会もできないので、友達なんてできるわけないし……。
「はぁ……」
もはや、ため息しか出ない。
悲しくなるね。
そう悲観して、あいも変わらずに地面を見てると、俺の影が揺らめきだして、影の中から一匹の獣が現れた。
俺の幻獣である黒狼のクロヨンだ。
『ヴォン‼︎』
「ん?なんだ、クロヨン。慰めてくれるのか?お前は優しいやつだな」
『ヴォン!ヴォン!』
現れたクロヨンは、俺にふさふさの黒毛を擦り付けながら、顔を舌で舐めてくる。
くっ……!なんて良い狼なんだ。
友達が居ない俺を慰めてくれるなんて!
……なんか、こんな良くしてくれる幻獣が居るんだし、いつ迄もくよくよしてないで頑張らないといけないよな。
「よし!クロヨン!俺、決めたぞ!」
『ヴォン!』
「俺……友達なんて要らない!」
『ヴォ、ヴォン⁉︎』
「俺、分かったんだ。俺には、お前が居ればそれだけで良いって……だから、友達なんていいや!諦めよ、諦めよ‼︎」
『ヴォン⁉︎』
ん?どうしたクロヨン?
そんな『諦めんなよ!どうして諦めちまうんだよ、そこで‼︎』みたいな顔して。
……いいんだ。
まあ、友達が居ないのは確かに寂しいけど、絶対に居なきゃいけないわけではないし。
それに……
「クロヨン。お前らの為にも、いつまで無駄な……いや、友達つくる努力は無駄ってわけじゃないけど……でも!これ以上、時間は取れない。いつか、仇を討たないといけないだろ?その為に……強くならなきゃ」
『ヴォン……』
悲しそうな声出すなってクロヨン……って、言っても無駄か。
なんせ、あんな事があったからな。
俺はクロヨンの頭を撫でながら、真っ黒な瞳を見つめる。
「安心しろ。絶対に、強くなって俺らで仇を討とう……な?」
『ヴォン……ヴォン‼︎』
良し!元気でたな。
じゃあ、この元気のまま訓練でも始めようか。
俺は背を木から離し、立ち上がった。
その時だった。
「ッ……⁉︎なんだ、悲鳴?」
微かに聞こえてきた悲鳴。
何事かと思い、悲鳴が聞こえた背後を振り返り、木の脇から顔を覗かせると。
空を黒く覆い尽くす蜂の大群が、学園に向かって来ていた。
続きは、数ヶ月以内には……書きたい