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森の娘と獣たち  作者: OWL
森の娘
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2-41 辺境領主の娘の侍女Ⅱ⑥

・・・・・・・皆様お久し振りでございます。ハンネです。


お、お嬢様がグレました。

こんな事は今までありませんでした、半日家出したくらいが精一杯でしたのに。

お世話し甲斐はありますが、こんな自堕落な雰囲気になったのは初めてです。


エーヴェリーン様がお嬢様をお慕いし始めたご様子なのはいいことですが、今までこのお城の最上位の女性なのにご自分の侍女達まで含めてお嬢様に嫌がらせをしていたことを止める事はありませんでした。まだ油断なりません。

今もお付きの者がお嬢様に胡乱な終末教なるものを吹き込んでいます。

慈愛溢れるお嬢様には終末神なんて似合いません、話をやめさせるべきでしょうか。


最近あの男の事を見直してきていましたのに、部下たちがあんな惨状を作っていたのを放置していたのが悪いのです。

最近は幸せな日々を送っていたというのに。

しかし今まで真面目に生き急ぎ過ぎていたようにも思います。

ちっちゃな頃から地面に枝で文字を書いてこちらの字を必死に覚えようとしたり、夜遅くまで蝋燭に灯をともしてお勉強していたりと。


せっかくですからゆっくりして頂きましょうか。

でも、いちおう婦長さんにグレ始めた子供の扱い方を習っておきましょう。やはり同じ年ごろで話題や感情を共有できる方がいないのは問題ですね、ナジェスタ様なら良い話し相手になってくれるでしょうに、ちょっと相談のお手紙を送っておきましょうか。


父親役も物足りませんが、母親役がいないのが難ですね、奥様の様な包容力がある女性が身近にいらっしゃればいいのですが、セルマさんはのんびりし過ぎてそういう感じでもありませんし。

ついでに婦長さんにはお嬢様を守ってくれるような女兵士に心当たりないか聞いてみましょう。今回の巡行でもアルミニウス様の負担は重かったですからね、他の騎士様と従士さん達がいてくれて助かりました。


と悠長に構えていたのですが、急転同地の展開になりました。


女兵士どころか例の女騎士を紹介されたり戦争が起こったり、と。

私には摩訶不思議な力の事はよくわかりませんから女騎士様の相談はあの変なお爺さんのお弟子さんに任せました。

あれよこれよという間にお嬢様の哀しみとグレてしまった原因は解決し、女性の護衛も手に入りました。

一時期はもうこんな世の中大嫌い、終末の神でもなんでも来ればいいじゃん、と愚痴っておられた時にはどっきりしましたね。

そしたらハンネともずっと一緒だよと仰るのでそれも悪くないかなと。


お嬢様が長い眠りにつくと聞いて心配しましたが、それで長年苦しんでいらっしゃった、頭痛やめまいがよくなるそうです。完治まで数週間くらいらしいというので我慢して待ちましょう。


「ねえ、お嬢様はあの男に懐きすぎだと思いませんか?」

「あの男ってエドヴァルド様の事か?お前にしちゃ随分な言い草じゃないか、もう酔ったのか?」

私も成人になりましたので、レベッカ先生と時々お酒をたしなむようになりました。

セルマさんや最後の成人の儀を終えたグリセルダも混ざる事もあります。

「だって旦那様にもなかなか懐かなかったのに、私は口惜しいです。それにあの男を自分でお嬢様の様子を見に行かずに頻繁に呼び出すせいで私が愛人になっているんじゃないかってお嬢様に思われてたんですよ!あんまりです」

「お前も年ごろだからなあ、二人っきりで会ってたらそう思われても仕方ないだろう」

お嬢様の事は聞かれては困る話が多いので二人きりで話さざるをえないのです。

「そんなのお嬢様にわかりっこないじゃありませんか。あの辞めて行った侍女達が吹き込んだんですよ。もう私に頼らないで自分を頼れってお嬢様を取り込んで依存させようとしてたらしいです」

仲良くなったグリセルダが昔の話をいろいろ教えてくれるようになりました。

もう他の貴族の心配をしなくてもよくなったからみたいですね。

「ははは、それなのにイルンの要求に耐えられなかったのか?馬鹿な話だ。それよりオイゲンの事だが、もっと早くイルンと親子らしい事をしておけばよかったと後悔していてな、エドヴァルド様にあれこれ入れ知恵したらしい」

「あの人見知りの激しかったお嬢様がそれだけで懐きますかねえ」

「お前の評価は低いみたいだが、権力も武力もあって城に囲ってイルンの事を守ってくれるような理想的な男が他にいるか?」

「それはそうですが・・・でも娘に借金まみれなんてそんな情けない親はお嬢様に相応しくありません!」

オイゲン様を見習って欲しいです。あ、見習ってお嬢様に接しているんでしたっけ。無念です。

「それそれ、そのお金だよ。いつの間にあんなに稼いだんだ?」

ぐいっと先生は強いお酒をあおっていますが、私はこれ以上飲めません。

「染料が裕福な国から順に大分普及してきたみたいですね。衣料品も汗を吸って伸縮して乾きやすい編み方が流行しているそうですよ。あらゆる人が使いますからねえ」

ヨハンナ様が送った職人さん達とお嬢様の努力が実を結びましたね、城の使用人や婦長さんに試作品を渡してみましたが大変好評でした。

せっかく環境が整ったんですから、お嬢様には早く目が覚めて欲しいものです。

私もお嬢様が目覚めるまで、ひとつ編み物を習ってみましょうか。


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