2-26 いつかどこかでみたもの
ミリアムさまはわたしの返答を聞いて納得はしていないが、思案顔。
他の皆さんはまったく納得いかなかったらしい。
「呪術など・・・迷信ではないのか?おかしな病を持った寄生虫か何かでは?本当なのか?本当だとしたら何故わかる?知っている?」
お父様は困惑顔だが、わたしも困惑だ。
「呪術ですか?」
「君がそういったのではないか!?」
むむむ、違う違う。
「わたしは単に呪い、だと。呪術というからには学術として成立したものなのですか?」
術ということは術理、理論化されているのでは?
それならよく知っているのは皆さんの方では?
お互い困惑顔だ。
「ああ、なるほど。姫さんのいいたいことはわかったよ。エドヴァルドがいう呪術ってのは迷信が集まってそのせいで分類され整理されたもの。お伽噺も大陸中集まれば似たような構成はたくさんあるからね。迷信であることには変わりない。姫さんはその原初的なもののことがいいたいだけだろう」
ああ、そうそう。そういうこと。
「あたしやあのろくでなしのジジイは昔呪術について研究したが、結局迷信以外の何者でもないと結論づけた。まあ世の中には迷信にどっぷりはまったおかしな奴が呪術師なんぞと名乗っていたが、何の力も無かった」
あぁ、それであのお爺さんあんなに怒ってたのか。それは悪いことしたな。
「で、姫さんはなんでまた呪いだと。迷信にあんな状態が引き起こせるのか?皆は結局奇病といった。実際そういう症例が歴史上あったからだ、肉体がああも爛れるのを見たのは初めてだったが」
「問題の大元は肉体じゃありません」
「あれが問題じゃない、だと!!」
ひええ、お父様が怖い・・・。帰りたい。
「エドヴァルド様落ちついてください。姫様が怯えてらっしゃいます」
水を取るフリをして、そそくさとイーデンディオスおじいさまの後ろに隠れる。
「す、すまん。だがな、イルンスール。どういうことなのか教えてくれ。何故君にそんなことがわかる」
仕方ない。
「問題は汚染されたマナスです。誰かのおぞましい思念がこもった毒、霊媒を飲まされたのでしょう。単に呪われただけでああなるとは思えません」
「姫様、マナスとは何ですかな?」
「お爺さんは内なるマナだっていってました」
「ふうむ」
「結局毒なのか?迷信なのか?私にはまったくわからん・・・」
「イルンスール様、エドヴァルドではありませんが、結局毒なのですか?癒す方法はあるのですか?」
思考が散り散りに乱れているお父様の代わりにオルプタさまが引き継いだ。
「毒の部分についてはわたしにはわかりません」
皆がわたしの返答にがっかりする。ってまだまだ話してる途中だってば。
「でも癒す方法はあります。わたしに癒せるのは迷信の方です。ともに神に祈りましょう」
また皆が期待したような目で見た後がっかりする。失礼な!
安易に神様に頼っちゃいけないと叱られたばかりだけど、こんな時こそ神様におすがりしましょう。
「お待ちください、皆さん。姫様を信じてみましょう」
おお、トレイボーンおじさまは信じてくれた。
「姫様達がお持ちくださった聖なる森の泉で汲んできた水で作った回復薬や秘薬の効果は何倍にも跳ね上がりました。ですから・・・」
げ、あれ、そんな使い方してたのか。
わたしが頻繁に水浴びしてるのに・・・菜園に撒くっていってたじゃん!嘘つき!!変態爺!!!
わたしの出汁でちゃってるよ。いやいやいや、泉の大きさからすれば問題ない、海水浴してる人だっているんだ、水くらい泳いでる時飲んじゃう事あるだろうし、へ、平気さ。
「確かにかつての解毒剤をもう一度試してみる価値はあるかもしれませんね」
無いです、やめてくださいオルプタさま。
「いえ、ですから毒の分解だけでは駄目です。マナスの汚染を同時に取り除く必要があります。そう聞いています」
さっきからそういってるじゃん、変態じいさんのおかげで話がそれたけど。
「「誰にだ(です)!?」」
「お父様がご存じの通り、引っ越しする前に住んでいた所で、ですよ。ちゃんと癒しの儀式に参加したこともありますし、毒の方は話に聞いただけでもうほとんど治っていたのでよく知らなかったんですけど」
「な、治るのか?あれが?」
「毒の方さえ何とかなれば、あのくらいの汚染ならわたしでもやれるはずです」
「・・・どうやら姫様には我らとは違う世界が見えているようじゃのう」
「確かにわたくしにはマナの動きがまったくわかりませんでしたし」
「そう、姫さんあれはどうやったんだい?あの飛び出してきた、あれを焼き払ったのは」
あれか、あれはちょっと痛かった。
「あれは火の魔術ですよ?」
「イルンスール!火系統の魔術は使うな、と固く戒められていた筈だぞ!!」
うっ、でもあれはちょっとピンチだったのだ。緊急避難措置なのだ。勘弁してください。
考えなしに行動するもんじゃないね、よく怒られてるけど。
「あの、ですから最後に火の大神にご加護を願って魔術は切りました」
まあ、そちらも安易に頼るなと怒られそうだけど。
でもつい祈っちゃうの。
「イーデンディオスおじいさま、オルプタ様、みなさま。あの体の毒素は本当に弱められますか?あれに邪魔をされると火の魔術を使って体を守りながら汚染を浄化することになります。汚染自体はわたしが吸い出して浄化できます」
「お任せくださいイルンスール様。我らが必ずや毒素はなんとかしてみせましょう。ですから火の魔術は使ってはなりません。姫様が火系統の術を使うと著しく寿命を縮める可能性があります」
知ってた。




