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森の娘と獣たち  作者: OWL
森の娘
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2-22 辺境地方の転機

酷い物を見た。

なので引き籠り生活に入った。


イーデンディオスおじいさまが完全復活したので後は万事うまく統率してくれるだろう。

しかし、あのおじいさま90歳は越えているそうだけど凄い体力だねえ。

城内に住んでいる人たちは結構お年を召した方たちも多いし、普通に生きてたらこんなものなのだろうか。

父さんもわたしを拾ってくれた時から50の大台を突破していたのにまだまだ働き盛りだったし。


・・・だというのに。


パタパタと扇で仰ぐ。

ん、いい匂い。

先日買った新しい扇だ。

以前フッガー商会のダニエルさんがもっとお金使ってくれないと溜まる一方では経済に良くない、お金は天下の回りもの、使ってなんぼですぞ、と訴えるので片っ端からいい匂いがする扇を買ってみた。でも既に持っているものとは違うのを選ぶのが大変だった。

毎年の事だが、誕生日が近づいて来たのでナジェスタや母さんと贈り物をやりとりしている、フッガー商会が持ってきてくれるのでわたしも色々買い物せざるを得ない。


わたしが不機嫌そうに長椅子に肩肘ついているので、小さな下働きの子達が慰めようと植木鉢や花瓶をたくさん持ってきてくれた。

いい子達だ。


「お姉様、まだ気になさっているのですか・・・?」


そりゃまあ、気にする。でももう忘れたい。

わたしは世の中の仕組みにまで首を突っ込みたくないのだ。

エーヴェリーンは何故か最近東の塔に引っ越してきた。

アルべルドと喧嘩でもしたのだろうか。わたしに構うと兄妹仲が悪くなりそうだけど。

目を輝かせてわたしを慕ってくれて可愛いのだけど、あんまり期待されてもちょっと荷が重い。お姉様達もこんな気持ちになることはあったのだろうか。

いや、ない。ないよね。

あれだけの能力に加えて包容力があった偉大なお姉様達だったから。


「お姉様は十分な事をなさいました、皆さん聖女のようだと崇めていたじゃありませんか、私もそう思います」

「やめて、エーヴェリーン。そういう尊称はレベッカ先生達にこそふさわしいの」


わたしには医師の先生達みたいに感染のリスクがあるのに、手を血まみれにして体を切り開いて手術なんてできないし。神様に疲れていたレベッカ先生達のお手伝いをお願いしただけ。

大変だったのはレベッカ先生だ。


「そのようにお考えだからこそ、皆さんからの尊敬を集めるのに相応しいのです」


なんだかエーヴェリーンの目の輝きがさらに怪しくなった。


やれやれ


アルヴェラグス様の言うとおりだ。

安易に神様に頼るべきではない。


「エーヴェリーンはかわいいなあ」

「え?」


おっと素が出た。いけないいけない。

エーヴェリーンの髪の毛を人差し指に巻いて弄びながらぼんやりしてたら油断した。


イーデンディオスおじいさまのおかげで何とか代替薬のメドも付き始め近隣の領主に乞われて旅立つレベッカ先生と一緒に治療活動に出た。

そしたら色々不愉快なものを見て今に至る、というわけだ。

不愉快なものは政治の話だから、私が口を出す筋合いじゃない。


「亡くなってしまった人たちはきっと終末の神様がお救いくださいますよ、イルンスール様はお優しすぎるのです」


お城で待機していたエーヴェリーンの侍女アフティアが何かいっている。

彼女は治療活動について来ることは許されずお城にいた。前からいる侍女だそうでわたしのところで見かけた人じゃない。首から幸運のお守りだという兎の足の骨を下げている。


「終末の神?現世の幸福を望まず来世に望みを託す人が信じるという?」

「ええ、でもそんなに悲観的な教えではありませんよ。生きている間に出来るだけ善行を積んでおきましょうという教えが本来のものです」


ふーん・・・。

まあいいことなのかな。

お爺さんもいってたっけ。神々の始まりの時代が終わり、時の神が人の現代に移った事を告げた。いつかまたこの時代に終わりを告げに来ると予言されているって。

まだ現れていないという終末の神様に彼らの冥福を祈るのもいいかもね。


でもいまはそういうことを気にしているわけじゃない。


せっかく遠出してもこれじゃなあ。

何処にも行けそうにない。


エーヴェリーンがこちらに来てくれて一緒に舞のお稽古をしたいというので初めて共に舞う相手が出来た。

ナジェスタとは交流もあったけどお互い自分の流儀があったし。

ちょっと気が沈んでいてあんまり心が動かないけれど、嬉しい事は嬉しい。

エーヴェリーンに誘われても今は引きこもって早々にお稽古サボっているけど。


セルマの奏でてくれる音楽を聴きながらぼんやりを続けた。

あーこのまま財力と地位にものいわせてのんびりしようかなあ。

お針子さん達にデザイン画を渡してエイメナースお姉さまみたいな服も発注した。

侍女たちはせっせと私の髪を梳いて、簪をさしたり、お手入れしてくれる。

肩くらいまでだったわたしの髪も背中の中ほどまで伸びて手入れし甲斐があるようだ。

みんなよく働いてくれてるけど、わたしはやる気がでない。


あー、だるい。

エーヴェリーンがまだ熱があるんじゃないかと心配してくれたけど、わたしはもともと熱っぽい。こんなものだろう。


視点人物を切り替えつつ徐々に何が起きているかは明らかに


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