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森の娘と獣たち  作者: OWL
森の獣
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1-7 最初の勉学期間

「さて、イルンスール。貴方はまず読み書きを覚えねばなりません」

「先生、それって生活に必要なんでしょうか」


わたしが読み書き出来ない事に気づいて、二の姉様の教育方針がすぐに変更されたようだ。

教育期間中は先生と呼ぶように、と二の姉様からは命じられている。


「必要です、読み書きが出来れば他者の記録を通じて自分の知識とすることが出来ますし、自分の能力を成長させる事も、大勢の人間に影響を与える事ができます。こうして一対一でやり取りするより効率的です」


そういわれてもあんまりよくわからない。


「例えばエーゲリーエが持っている小狡い道具を貴方が自力で扱う事も出来るようになるでしょうし、独りで寂しい時も本でもあれば気が紛れるでしょう。もっと色んな事を知りたくはないですか?」

「はいっ知りたいです!」


よろしい、向学心の高い妹を持てて私は嬉しいですよ、と二の姉様は喜んだ。


続いて三の姉様の所では教育というより助手みたいな感じになった。

一緒に採集しながら、採ったもののそれぞれの特性を教えて下さった。

実地勉強だ。


「お姉様、でもこの辺りの植物は見た事のないものばかりです」

「まあ、私が品種改良したものばかりですからね。とはいえ体系別に整理して学ぶ事ができれば自力で応用して食用、薬用、その他諸々の用途として栽培、抽出、調合などができるようになるでしょう」

「採集や栽培も学問なんでしょうか」


今度は体を動かす番かと思ったのだけれど・・・。


「ええ、毒草もありますからね。手当たり次第集めれば良いというものでもありませんし。

植物も病気になります。植物の癒し方を学び、植物から貴方自身の癒し方も学びなさい」


なんだか難しい事をいう。

近くに生えてた美味しそうな実を適当に食べてたよ。。。


頭を使いながら体を動かし四の姉様の所へ向かった、くたくただ。

今日は一緒に楽しく料理を教えて貰って美味しく食べて、幸せにお昼寝した。

ただ、三の姉の所で何か貰う時は注意するように、決して料理に入れないように釘を刺された。


「彼女は自力で解毒できるからって、自分自身を実験台に使ってみたりするのよね」


食材、香辛料の現物ならいいけど調合済みの持ち込みは不可だそうな。

時々失敗して、二の姉様が後始末に乗り出す事があるそうな。

怖っ。


休んで元気になったので五の姉様の所に向かう。

ちょっと相談があったのだ。


「三の姉様の所で森での採集について習ったのですが、自宅から遠く離れると時々動物のおっかない声が聞こえるのです」


でも、近所だけではそんなに採れるもの少なそうです、と訴える。


「森の動物が貴方に危害を加える事はありません、怖がる必要はないですよ」


でもでも、前に大きい毛むくじゃらの動物に追っかけられた、とさらに訴える。

逃げる途中坂で足を滑らせてごろんごろん、転がって落ちて凄く痛かった。


「む、躾の悪い子もいたものですね。でも今はもう私たちの姉妹なのですから、きっと睨んで命じればきっと退散しますよ。大事なのは気魄です!」


むむむ・・・、それができるのは姉妹の中では異色の、常に武装している五の姉様だけじゃないかな。

一応追い払っても駄目だった時の為に護身術は教えてくれることになった。


「貴方の体では武器を持てないでしょうし、格闘術を中心に教えましょう。でもその前に準備体操です!」


わたしは五の姉様の健康体操とやらにについていくのがやっとだ。

ぜいぜい荒い息をついていると、五の姉様に感心された。


「イルンスールは根性がありますね、誰も最後までつきあってくれないのですよ」


他の姉妹達もついてこれないようなのやらせないでください・・・・・・。


「今後は一緒に体を鍛えましょう、護身術もすぐ身に付きますよ」


かんべんして!


「次は、下界ではいつもお腹を空かせているそうなので、獲物の取り方を教えましょう」


罠の作り方や釣りの仕方を習った、こちらは役に立ちそうだ。

でも腕力足りなくて満足いく結果にはならなかった。

悔しい。

ところで、下界って・・・一番高い所にある奥宮から見れば全部下界なのかな?


エーゲリーエ姉やエイメナース姉様の所ではいつもみたいに遊んだり、楽器の演奏を習った。エイメナース姉様は五弦の大きな琴を、エーゲリーエ姉は片手で持てる二弦の琴で。

エイメナース姉様が楽器を奏でたりお歌を歌ったりすると、どこからともなく森の動物たちが集まってきて、側にすり寄って聞いていたりやんちゃな仔がはしゃいでじゃれている、とても平和な光景だ。

私もいろいろ教わったお礼に巫女様達の見様見真似で神楽舞を舞ってみると、お上手お上手、と皆凄く褒めてくれた。


エイメナース姉様の所に皆集まって見比べてみると、集まる時はみんな慈母みたいな一の姉様みたいな雰囲気になるけど、自宅周辺ではそれぞれ好き勝手な服と趣味に走っているようだ。

二の姉様は、大つばの優美な曲線を描いた帽子にひらひらした飾りのついた豪華な服。

三の姉様は完全に実用本位で汚れてもいい採集用の動きやすい服か、白衣。二の姉様も白衣を着ていることがある。

四の姉様は、家事で汚れてもいいような楽な服。

五の姉様は常に武装しているので凄く異質で光り輝く銀の弓が特に際立っている。

エーゲリーエ姉は薄手の半そでとズボン、無邪気で天真爛漫といった風情なのに時々妙に色気がある。自宅にいる時は女の子らしい恰好で、一の姉様に編んでもらったというショールを羽織っている。

わたしは相変わらず着の身着のまま、でも皆まったく気にしないで凄く可愛がってくれる。


優しい姉妹たちに囲まれ、


それからの一年は幸せな日々だった。


エーゲリーエに毒される前に助け出せた、と二の姉様はお喜びです。

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