1-4 転機
山小屋まで戻ると怒りの形相の巫女長様が居た。
「いったい今までどこにいたのですか・・・?」
形相とは裏腹に意外と声は落ち着いている。正直に答えたら・・・きっとよくないよね?
「ここには先代が残した防寒具があったはずではありませんか、それはどうしましたか・・・?」
答えないと、次の質問が来る。
「それもマリーナに取られましたか・・・」
ふぅ、とため息をつくと独り言のようにつぶやく。
「巫女長が決まりを破るわけには行きません、ほとんどの巫女は数年しかここにはいられません。奥宮の方々は二度と俗世に関わらない事を条件に保護されています。貴方の世話はマリーナに任せるしかないのです、仲良くやりなさい」
到底不可能な事をいう、お姉様達に助けられなければわたしはきっと死んでいた。
巫女長が何やら抱えて神殿戻り、わたしはいつものように食べられそうなものを採集して戻ってくると泥まみれの防寒具と食材が小屋の中に置いてあった。
わたしは泣きながら先代様の綿がつまった防寒具を湧き水で洗って木にかけて干した。
湧き水が痛いほど冷たい、何十本もの針で串刺しにされたかのよう。
傷めないように、と気を付けるまでもなくわたしの力ではしっかり水を絞り出せなかった。
ちゃんと乾くだろうか。
採集中にまたお社に行ってみたけれど、お姉様達の所へは行けなかった。
門は相変わらず固く閉じられ、囲む壁伝いに回り込もうとしてもそのまま岩山の断崖に阻まれ中には入れない。
日が暮れるころマリーナが湯たんぽを持ってきた。
明日からは神殿からここまでの途中に置いておくから勝手に取りに来るように、と憤然と言い残す。
私がこんな重たいの持って山道登ってこれるわけないじゃない。
翌日、防寒具を干していた所に戻ってみるとかちんこちんに凍っていた。
はて?
それから何度もお社でお姉様に会いたいと祈っていても、会えなかった。
時々、奥宮に向かう人をみかけるくらい。誰だろう。
神殿の近くでは相変わらず巫女様達に石を投げて追い払われる。
何日も通ってお祈りを捧げていると、ある日食べ物がお供えしてあるのを見つけた。
食べた。我慢出来なかった。
お姉様方、御免なさい。卑しい私を許してください。
何の抵抗もなく欲望に負けてしまった事を必死にお詫びしていると、覚えのある感覚が襲ってきた。
駆け込み寺的な所にいますが幼い主人公視点なのでまだわからないことが多い状況が続きます