表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の娘と獣たち  作者: OWL
森の獣
37/212

1-37 慌ただしい秋の転機

今年の秋も収穫祭の時期になって来ると獣たちが活発化して、狩人達が今までよりたくさん集まってくる。この辺の頭数調整は上手くいってるらしいけれど、南方の村々は獣害に困っているらしい。

かなり大きい被害が出ているのに最近父さんが領主館を留守にしていることが多く何処かにいっているので指示を出すものがおらず、母さんも困っている。

一応補佐官の人が雇った狩人を送ったけれど返り討ちにあったのだとか。

こうなってくると騎士達におでまし願ったりや人海戦術で山狩りできないと辛いみたい。


大人たちが困っていたそんなおり、去年もいらっしゃった帝国騎士の一団が再びやってきた。今回は去年より少し数が減っている。

イーザン老師と知り合いだったらしくて、お爺さんにいわれてその獣を狩りにすぐに出立してしまったけど。騎士さんが帝都で学んでいる時に知り合ったそうな。


入れ違いに父さんも帰って来て、講義中のわたしたちの所にも帰宅の挨拶に来たところその件を老師が伝えた。


「近隣領地との兼ね合いで人海戦術は取れんというからの、あやつも丁度いい時にやってきおったわい。熟練の狩人でも狩れんというとただ巨大化したのでなく魔獣化している恐れもある。魔獣化しておってもあやつなら心配はない。安心して朗報を待つが良い」

「よろしかったのですか・・・その帝国騎士に狩りなどさせてしまって」


父さんがさすがに帝国騎士に狩人の真似事をさせてしまうことに気兼ねしている。


「気にすることはない。王侯貴族にとって害獣狩りで領民を守ることは責務であり娯楽でもある。あやつは帝国騎士だから領民は関係ないが、街道周辺の治安を守ることはあやつの業務じゃ」


山の中みたいだから業務じゃない気がするけど、まあいいか。

うちの人からの評価は低いけど、帝国騎士に指示を出せるなんて昔はイーザン老師は結構偉かったのだろう。そういえば爵位も持ってるとかいってたっけ。


「ではその件は有難く好意を受けておきます。・・・イルン、別に話がある。最近領内の人の出入りが多く治安も多少悪化している。知らないひとにはついていかないこと、何かあったら私の名を出す事。それから裏庭の作業は当分やめること。これらを守っておくれ」


いつも落ち着いた態度を崩さない父さんが疲れているのがわかるので、疑問はあったけど大人しくいうことを聞いた。まあ小さい子への普通の注意だよね。染料はどうせいま大したことできないし。


それから近隣の農村の収穫祭に連れて行って貰いたかったのだけど、今年は駄目だって。しょぼん。


わたしの外出は日曜日の神殿参りだけになった。

まあどうせね、今までもね、たまにハンネと町に買い物行ったり、レベッカ先生と釣りしてみたりくらいしか屋敷の外にいってないけどね。

友達いないし。


冬を楽しみに待つさ!


そしたら間の悪いことにナジェスタからは今年は新しい市長さんから通行許可が降りなかったので、そちらへ行けません。代わりにこれを送ります、と立派な絨毯や、薬木、お茶に丁寧な手紙が届いた。

ま、また来年があるさ!


ハンネと週一の神殿参りと買い物に行っていると、前に比べて町がざわついているのを感じる。もともと町行っても胡乱な目で見られる事が多いから町は好きじゃなかったのでたまにしかいかなかったけど、昔より明らかに町人じゃない人が増えた。

去年からこっちいろんな所から人が集まって町の方でも暴れる人が出たり、泥棒もどこからともなくやってきたようだ。屋敷の衛士さんも大忙しで町の応援に結構な人数が行ってしまった。元から少ないっていうのに、もうもうもう!男爵様のケチ!!


そして領主館は規模の割に衛士が少ないのは町の人間の誰もが知るところだったので、見計らったかのようにウチにまで泥棒が入った!


そうだよねー、父さん金持ちなのに本来は領主の館の衛士さんがいるから警備員なんて置いてないもの。

母さん達は本館の手伝いで、私邸にいるのはわたしとハンネだけ。

わたし達がおでかけしちゃうと誰も居ない状態になってしまう。とはいえ領主館の敷地内だし、皆油断してた。

私邸は植木の壁しかないからねえ。


一番高価そうな父さんの私物は数が多いし父さんが不在なので、何が無くなったのかリリヤさん達でもよくわからない。父さんは私物にあまり使用人を近づけないのだ。

他は母さんの宝飾品がいくつかと兄さんの望遠鏡がやられてしまった。わたしのものは髪飾りとかは無事だったけど、衣装がやられてしまった。

大事にしまっておいた若葉祭や7歳のお披露目衣装まで・・・。

また作ってあげるわ、と母さんが慰めてくれたけど、愛用のもこもこさんまでやられてしまった、うぬぬ・・・変態め!

詐欺と盗賊の守り神ナルヴェッラという方がいらっしゃるけれども、この泥棒は少し欲張り過ぎです、どうか加護を取り除いてください、とお祈りをしておく。


わたしの服はハンネが用意してくれた最高級の糸でみんなが熱心にたくさん刺繍してくれているので、あれ買おうと思ったら結構値がはりそう。

下手人は余程慌てていたのか、衣装ごと側にあった練習用の端切れまでまとめて持ち去ったようだ。


他の服はともかく子供から大人になっていく節目の儀式で着る記念のお披露目衣装が盗まれたのは辛い。

皆が最近あんまり感情を激発させないように、と口を酸っぱくしていうのもあるけど、それほど怒りが沸いてこない。

なんだか怒りより虚しさで苦しい・・・・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ