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森の娘と獣たち  作者: OWL
森の獣
25/212

1-25 ある一家の侍女③

翌日、私たちは男性組と女性組に分かれて所用を済ませにいきます。

いろいろな店舗を覗きたい所ですが、イルンお嬢様は少しばかり疲れが残っているようですので、総合店で鏡の無い個室に専門の美容師をつけて貰いお任せします。


さすがは専門家ですねえ、巧みな話術でお嬢様の気をそらせている間に髪を切ってしまい、さっさと髪飾りをつけてしまいました。

来年の春に行われる若葉祭の準備です。その年7歳になる子供達はめいめいに各家庭の守り神と縁の近い神の神殿か、もしくは鐘をならす一番大きな神殿で祝福を受けます。

農業が盛んな地域ですので豊穣の女神や種子を運ぶ風の神が一般的です。

カウフマン家では商売の神様ですけどね。


もちろん別に各家庭でもお祝いをします。

そちらは奥様が久しぶりに昔取った杵柄ということでご自分で縫製と刺繍をするそうです。

私の実家からもできるだけ質のいい布を提供させていただくので、染色ギルドに発注しなければなりません。


いくつか髪飾りを試していましたが、お嬢様は小さな赤い花と小さな花を模した飾りを選ばれました。あまり大きなものは好みではないようです。奥様のたってのお願いで大きな花のものも買われました、こちらはほんとうに華やかで素晴らしいですね。

お嬢様が選んだ花の大輪版です。黄色い中心部が赤い花弁に囲まれなかなか鮮やかです。

普段使いはできませんので、旦那様がおっしゃっていた社交の場用にするのでしょうか。


他にも店員さんおススメのものを幾つか購入し、服も色々着せ替えて皆で至福の時を過ごさせていただきましたが、お嬢様が本当にお疲れになってぐったりしてきてしまいましたので、軽いお昼を頂いてからレベッカ先生に部屋に先に連れ帰って頂きました。

あれだけ何種類もの職人が入れ代わり立ち代わりやってきては大人でも大変ですね。

こちらから訪問するとあちこちのギルドや店舗に赴かなければなりませんから、このような大都市では代わりに職人を集めて指示してくれる美容師がいると重宝します。



その後は男性陣と合流してそちらも買い物です。

まあこちらはどうでもいいです、適当に無難なものを選びました。




早々にホテルに戻るとお嬢様やレベッカ先生達は遊牧民の娘さんと仲良くなってのんびりお茶や遊戯をして過ごされていました。

着飾ったお嬢様を見てヨハン坊ちゃまが瞠目されていたのが少し可笑しかったですね。

旦那様の後を継ぐにはもっと見る目を養わなければならないでしょう。

優しく扱わないと5,6年後後悔しますよ、と脅しておきました。


夜になるとお嬢様が少し熱を出してしまいましたので、消化に良いものに夕食を変えて頂きお薬を飲んで早めの就寝です。


滞在三日目は戸籍登録と銀行口座の作成です。

幸いお嬢様も回復されておりましたので、役所にいって手続きをしてすぐに終わりです。

市長から予め話が通ってましたので、待たされることもなく必要な書類にサインして終わりです。これで正式にお嬢様はカウフマン一家の一員です。

午後は家庭教師を呼ぶ為に人材斡旋ギルドで職員と打ち合わせをして希望、条件にあうものがいたら領地のお屋敷まで面接に来るよう伝えておきました。

旦那様はヨハン坊ちゃまの教育方針を見てもそうですが、できるだけ才能を伸ばしてやろうと教師の手配はしますがそこから先は本人の意思に任せたいようで多少言葉遣いが荒っぽくても放置しています。

社交も最悪自分ひとりがやればいいとお考えのようです。

今回の手配もあまり徹底する気はないようですね。


旦那様と奥様はリリヤさんを連れてまだお買い物を続けるようですが、私たちは先にホテルへ帰ります。ヨハン坊ちゃまも馬車を降りるときにイルンお嬢様をエスコートしようとしたり兄の自覚が出てきたようです。残念ながら背丈が足りずお嬢様の乗降はレベッカ先生頼みです。

御者たちも慣れない街で迷うことなく案内して立派でした。

予めコンラートさんやリリヤさんと打ち合わせをしていたようです。

まったく使用人も大変です。

こうして大人たちの働きぶりを見るとやはり私はまだまだ子供のようです。


夜になると、旦那様からご家族に贈り物がありイルンお嬢様は子供向けの物語集を、ヨハン坊ちゃまは高価な筆記用具を渡されそれぞれ喜んでいらっしゃいました。

奥様にも私邸の庭に珍しい花の苗や種を手配されたそうです。


私も奥様から可愛い髪飾りを頂いてしまいました、幸せのお裾分けだそうです。

ふふ、私もお嬢様のご相伴ですね、有り難いです。昨日のお店では私もいくつか欲しいものがありましたから。



ギィエッヒンゲンから帰る途中、お嬢様に懐いていた獣がいないか一度馬車を少しだけ停めて分かれた地点で車内で昼食を取って待ってみましたが、そう都合よく出てくることはなくお嬢様は少しだけ気を落とされていました。さすがに今回は森に入りたいと我儘をおっしゃるようなことはなく、素直にお屋敷まで戻られました。


留守中特に変わったことはなく、私も休暇を頂きました。

しばらくのんびり過ごしましょう。

記憶にある初めて読んだ本はキリストの伝記でした。

他は仏教系の幼稚園だったせいか仏さまの訓話的なおはなしだったかな・・・

もちろん絵本とかも呼んでいたのでしょうけど、あんまり記憶にありません

学研の漫画とか図書館とか本屋さんで読みふけってましたねえ

難しい感じが読めるようになってくると歴史の偉人の伝記とか祖父の家にあった仏典とか・・・

祖父が亡くなった後、聞いてみたら貴重な本が処分されていて哀しかった憶えがあります

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