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森の娘と獣たち  作者: OWL
森の聖霊
184/212

4-8 家出娘②

突然横から体当たりされて押し倒された。

「エーゲリーエ姉!」

「大きくなったねえ・・・、あんまり顔を見せないからそろそろこっちから捜しに行こうかと思ってた所だったよ」

エーゲリーエ姉はそういいながら起き上がってわたしを持ち上げようとしたけど、重い、というので掴まって立ち上がった。

並んで立つと背丈も同じくらいになっている。

「そら、いっといで」

三の姉様の方へ押し出された。

「あの・・・以前は申し訳ありませんでした。わたしお姉様に酷い八つ当たりをしてしまってずっとお詫びしなきゃと思っていたのですが、どうしても戻れなくて・・・・・・」

頭を下げてぺこりとお詫びした。

「いいの・・・。幼いあなたに売り言葉に買い言葉でみっともない事をしてしまったわ。貴女が私の事嫌いになってしまってここに来るのが嫌になったのかと」

「そんなことはありません!」

うう、やっぱりお姉様もずっと後悔して苦しんできたんだ申し訳ない・・・。

「ほら、大丈夫でしょう。お互い気にし過ぎていたのよ。それより随分大きくなったわね、イルンスール」

二の姉様はわたしが大きくなった事に少し不満げだ。

「ふふん、エイファーナお姉様より少し背が高くなりましたよ」

「でもぺたんこだね!」

エーゲリーエ姉!

「末の妹なのに生意気だわ」

二の姉様は再教育が必要ね!と昔の様に教鞭を取り出してびしびしやり始めた。

「もう少し小さな子を育てたかったわ」

「そうですね」

「わっ、エイダーナ姉様!ビルビッセ姉様!」

いつの間にか後ろに忍び寄っていたエイダーナ姉様が両脇の下に手をやって持ち上げた。

相変わらず力持ちだ。

「では少し背を縮めてもいいかしら?ね、いいでしょう、イルンスール?もう少しかわいい盛りの時代を楽しみたいの」

失った時間を取り戻させて、とエイファーナお姉様がわたしの頭に手を乗せて縮めと押し込んだ。

「わ、わ、わ。止めて止めて!せっかく苦労して大きくなったのに!!」

「エイファーナお姉様、さすがにそれは可哀想だよ」

エーゲリーエ姉が引き込んで庇ってくれた。ひしっとしがみ付く。

「ああっ、ずるい。私の所にも」

五の姉様は鎧着てて抱きつかれると痛いんだよなあ・・・。

「じゃあ私の所ね」

おお、ふかふかだ。四の姉様は相変わらず暖かい、抱かれ心地がいい。

「それより下界で酷い事されなかった?エイメナースお姉様が凄く心配していたのよ」

うう、されたけど。今は無事だし。

「あの人が守ってくれたので平気です」

お父様の事を指さす。

「まさかイルンスールが男を連れて来るなんてね」

「先を越されたわね」

「どんな方かしら」

「悪い虫なら追い払いましょう」

「エイメナースお姉様の目には適わなかったみたいだよ」


ちょっと離れましょう、体の調子を見てあげると言われて二の姉様の家で検診を受けた。

大分渋い顔をして膝をこんこんしていらっしゃる。

体の異常はほぼ完治している筈なのだけどそんな風にされると少し痛い。

目を覗きこんだり、喉を診たりしたあと三の姉様に薬を出すよう指示した。

「・・・まあいいようね。でも一応栄養剤を出しておきましょう」

ほ。

「お姉様達に習ったことのお陰で最近は飢えることもなくなりましたから調子いいのですよ」

とてもとても助けになったとアピールする。

「しかし昔より足取りが鈍くなった気がします」

「そうそうそんなおしとやかに歩く子じゃなかった!」

いやそういうことがいいたいのではなくて、と五の姉様とエーゲリーエ姉が意見を戦わせ始めた。

「はいはい、イルンスールはもう貴女達より立派な淑女です。昔と違って当然でしょう」

「服装の趣味はエイファーナ姉様に似たのね?とても似合ってるわ」

「ビルビッセ姉様に教わったお陰です」

職人さん達に手伝って貰って頑張りました。

森を歩くのには不向きだけどお出かけ時は二の姉様が参考です。


「昔みたいには遊んでくれないのね、わたしは哀しい!」

エーゲリーエ姉は相変わらず元気いっぱいだ。皆でできる遊びをしようと香当て等に興じていたけど楽しい時間はすぐに終わってしまいエイメナースお姉様に呼ばれて戻るとお父様がぐったりしていた。

何があったのやら。

それから別れ際にエーゲリーエ姉から餞別を貰ったけど、どうせ持ち帰れないんだよね・・・・・・。エーゲリーエ姉といえば昔盛られたという毒素みたいなのと似たようなのを下界で見かけた事を報告しておいた。


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