表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の娘と獣たち  作者: OWL
眠れる森の茨姫
134/212

3-35 北へ

ストレリーナ様に早めにくるように言われていたので、転移陣で春になるかどうかという時期にやってきた。

めっちゃ寒い。

ナツィオ湖畔もちらほら雪降ってたし、寒い中でも我慢して歩いて慣れてたつもりだったけど、ヘリヤヴィーズもそんなに雪積もってないのに全然レベルが違う。

北部といっても山脈に囲まれていて雪はそこで降ってここ高地地方へは乾燥した冷たい空気が流れ込み、豪雪地帯では無いらしい。


この転移陣は帝都やバルアレス王国にあるような魔術師の塔の転移陣と違って、巨石を円状に配置した独特のものだ。

あんまり積もってないとはいえ、それなりにまだ雪はある。

ちゃっぷい、ちゃっぷい。


スヴィータに紹介されて高地地方の大族長で北方選帝侯のアヴローラ様にご挨拶して、巫女様達の儀式に参加する許可を頂いた。

しばらくは巫女様達と一緒に舞の練習だ。

神鳥スィールに捧げる為のものらしい。

白鳥に合わせて真っ白な衣装を着るのだけど、あんまり寒いので下に自前の肌着をつけるのは許してもらった。

本土とも東方ともかなり違う文化圏で、アヴローラ様を中心に女性が部族の意思決定を行う。

夫はかなり厳選して選ぶので結婚はかなり遅くなるらしく、スヴィータの祖母にしてはアヴローラ様はかなり高齢だ。


女性は女性だけで食事を取ってあんまり男性と接する機会はないみたい。

今も囲炉裏を囲んで皆で床に座って食事を取っている。

冷えないよう毛皮を床に敷いて胡坐をかいてみんな座る。

ターラも侍女達もみんな扱いは同じ。

こんな風に座って食べるのはもう記憶の彼方にしかない頃だなあ。

アヴローラ様が直接鍋の料理を取ってわたしに振る舞ってくれた。

この辺も全然今までに出会った文化圏とは風習が違い過ぎる、本読むだけじゃやっぱ駄目だなあ。


「ツェレス候はその年で当主だなんて立派だねえ・・・。うちの娘達は結局スィールに認められるのをみんな放棄してしまってね。スヴィータもさ。なかなか後継ぎが出来やしない。巫女達は巫女達で族長なんか興味ないっていうし」


ストレリーナ様とスヴィータに他の娘さん、お孫さん達が居心地悪そうにする。

スヴィータにもストレリーナ様も他に姉妹がいたようだけど、あんまり帝国が好きじゃないので誰が学院に通うか押し付けあってスヴィータが選ばれたらしい。

ストレリーナ様の代も同じで。

初陣に出てからとかなんとかって言い訳だったんじゃないかしら。


「アヴローラ様はどうやってご当主になられたのですか?わたしはただ遺言で任されただけですよ」

「前の族長にどれが神鳥スィールだと思う?と聞かれて思うまま答えただけさ。別にスィールに認められたわけじゃないんだがね。遺言で任されただけといっても、受け入れるだけ立派なもんさ。ストレリーナはスィールの事はわからないし、自分は未熟だからと跡を継ぐのを拒否してしまったからね」


溜息をつかれるアヴローラ様。このお歳で重責を担い続けるのは気苦労が絶えないんでしょうね、近くには蛮族がいるし。


「お母様は西方市民戦争の時から部族を率いて活躍されて十分な実績があったからでしょう。三十年前に低地地方の軍団が破れた時も再び弓を取って戦われて、誰もが認める大族長です。私には何の実績もありません、跡を継いだ所で皆従わなかったでしょう」

「ふん、あんたはいつもそういうね。結局私もいつかは死ぬし、誰かが後を継がなきゃいけないんだ。ま、一度ばらばらになってから族長を決める戦いでもなんでも好きにすればいいさ」


少し突き放したようにおっしゃられる。

7,80年前からもう部族率いて戦ってたという偉大すぎる大族長を持つと後継者は誰が継いでもきっと混乱はあるだろうね。


食事の後は部族の語り部のご老人達にスヴェン族の言い伝えをたくさん伺った。

水の大神ドゥローレメ様以外に氷の大神もいたらしく、月の主神とも親しい関係だったみたい。

ただ北方は古代から蛮族との闘いを優先して帝国が神話をどう編纂しようがあまり興味なかったらしい。東方の神様達みたいに不当に貶められたわけでもなかったようだし。

寝る時も皆で雑魚寝する風習だけど、わたしに対しては警護の都合上ということで配慮して頂いたので一室貰った。

お部屋の数があんまり多くないらしいので、できれば誰かと一緒に寝て欲しいというので久しぶりにハンネと一緒に寝た。誰かと一緒ならハンネがいい。

寒いのを口実にたっぷりくっついてべたべたしたさ。8歳の時以来かな?

レベッカ先生は帝都でお仕事があるので今回は護衛もたくさんいるしあちらに残っている。


朝はまた巫女様達と舞の稽古。

スヴィータといつも一緒だった側仕えのコルヒーダさんもかつては巫女さんだったそうなので一緒に手ほどきして貰った。ターラは宗派が違うから、ナジェスタは別の氏族だからと見学するみたい。

スヴィータは何か思うところがあったのか加わった。

巫女様達みてたけど、結構黒髪の方が多い。スヴィータみたいにみんな銀髪かと思った。

なんか高地地方だけじゃなく低地地方からもいろんな部族から集まって来てるらしい。

高地地方はあんまり白の街道が豊富に整備されていないので、将来旅して回る時は難関になりそうだなあ・・・。


コルヒーダさん銀よりもかなり白っぽい白金っていうのかな?そんな感じだけど、

髪の色は東方も茶色や黒系が多く帝国も北部は黒が多いらしい。

黒は染色が用意で染めてる人も結構いるみたいだからわかりづらいなあ。

困った困った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ