表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の娘と獣たち  作者: OWL
眠れる森の茨姫
110/212

3-11 ある一家の長男②

ハンネの奴!


帰り際ハンネに、だから優しくしておかないと将来後悔しますよといったでしょう、それみたことかと笑われた。

まあ美人になったよ、見違えた。

眉間に皺寄せておっかない顔してたのが嘘みたいに柔らかい顔で俺たちに微笑んでいた。

ハンネやレベッカ先生のよく知るあいつの本来の顔だったってわけだ。


彼女の年齢は本来の妹に合わせてたけど、実際はもうちょっと年上だったんだろうな。レベッカ先生の見立てが正しかったんだろう。

あいつも段々警戒緩んできて上半身が露わになるから、薄着にたおやかな物腰にどきどきしてしまったさ。


蛙食ってたあいつが、お姫様になって、今は帝国貴族の当主だって・・・、世の中何が起こるかわからないもんだ。

父さん達のお土産にあわせて俺も天体望遠鏡を置いていった。

昔望遠鏡に興味津々だったから。

部屋の中じゃ、あれがどんなものかわからないだろうけど夜にあれを使って星をみたら吃驚するぞ。

こっちもあいつを少しくらい驚かせてやらないとな。


父さんに金を借りて望遠鏡を調達してもらった分、これから頑張って金を稼ぐ事になる。

商会自体はあいつの開発したものを優先的に商品化して貿易に勤しんでいるからかなり儲かってるけど、個人的にはまだ見習いだし。


帰り際、父さんが見送りに来たレベッカ先生に本当の所を聞いてみたけど、実際大分体調は改善してきてるらしい。今日はたまたまだというから一緒に夕食でも取る予定だったけど、また半年後か1年後かの楽しみにしよう。


翌朝訪れると、ほんとに元気になっていて改めて挨拶をして借り家だというところの庭で少しだけ茶飲み話をした。

帝都で住む家はまだ建設中だから次回来るときにはそっちに来て欲しいんだそうな。

おっかない騎士達に囲まれていまひとつ落ち着かない。

本当に別世界の人間になっちまったんだなあ・・・。

あいつに紹介してもらったんだけど、あのレインヴァールが凶暴化した魔獣を女騎士が一人で倒しちまったなんて信じられるか?エルマーに教えてやっても絶対信じないよ・・・・・・。


出航の時間が近いから、すぐに家を辞して港へ向かったけど、あいつももう平気だからと着いて来た。

チェセナ港は貿易用の商船団の停泊所と旅客用が完全に別れていて俺たちは商船団の停泊所へ向かう。船員達はもう積み込みを終えていていつでも出航できると父さんに報告した。

父さんも母さんもあいつを抱きしめて頬に軽く口付けをしている。

あいつは吃驚していたが西方や帝国本土じゃ珍しくない習慣だ。

旅客者が見送りの家族達ともさっきそうやって別れの挨拶をしていたので納得する。

「じゃあ、またね。イルンスール、体に気を付けて」

「はい、母さんこそ。父さんもお元気で」

「ああ、また会おう。商用で帝都に来るときがあれば必ずナツィオ湖畔の館まで寄らせてもらう」

「兄さんも、またね」

「ああ、そんなに船旅に興味あるならそのうち俺が乗せてやる」

ここに来る馬車の中でもあいつは船をちらちら見てた。

「え?」

「昔から俺の望遠鏡借りて沖合の船ちょくちょく見てたし、今も興味あるんだろ?」

「うん」

「そのうち一人立ちして自由に船を扱えるようになったら、世界中どこにだって連れてってやるさ」

ちょっとカッコつけてみたが、やりすぎたかな?

しばらくあいつは固まっていたけど、急に抱きついてきて頬に口付けされた。

「有難う兄さん!きっとだよ!!」

「ああ、任せとけ」


南方へ向かう船の中で母さんにさんざんからかわれたよ。まったく。

「ちょっかい出す気なら旦那様のお許し貰わないと駄目よ」

「兄として、だよ!兄として!妹の望みを叶えてやるだけだってば!!」

あいつに父親が二人いて、弟と妹がいるらしいけど、兄貴は俺だけさ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ