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異世界で俺の土下座が役に立つ  作者: ストレッサー将軍
悩める街 ~カマキリじいさんの憂鬱~
9/50

土下座その8

 俺は走った。

 森の中を無我夢中で走った。振り返れば、土蜘蛛様がすぐそこにいる気がして、怖くて、振り返ることはできなかった。

「あ」

 俺は木の根に躓き、転んだ。五、六回でんぐり返しをして、仰向け状態で止まった。

 そのまま空を見上げると、金色に輝く月が見えた。遮るものが何もない、満開の星空が見えた。

 その事実に気づいたとき、安堵でため息が出た。

 ――そうか、俺はようやく『土蜘蛛の森』から脱出できたのか。

 俺は起き上がり、森の方を振り返った。

 森の木々は揺らめいていた。森という巨大なハコの中で何かが暴れているかのように、森は揺れていた。時折、悲鳴なのかうなり声なのか、それとも風が木々の間を通り抜けるときの摩擦音なのか、よくわからない音が聞こえた。それらの音は、森という巨大な生き物が発する生活音のように思えた。

 一瞬、音がやんだ。静寂が辺りを包んだ。

 俺はその静寂から逃げ出すように、再び走った。できるだけ森から遠ざかりたかった。


 俺は走った。

 疲れたら歩き、体力が回復したらまた走った。

 疲労困憊で、身体は悲鳴を上げていた。もう、限界で、これ以上走れないと思った。

 それでも俺は、走り続けた。

 意識がもうろうとして、まともな判断ができない状況だった。それでも、心には畏怖が常にあった。だから、走った。

 ふと気がつくと、辺りが薄明るくなっていた。立ち止まり、東の空を見上げると、太陽が昇り始めていた。

 日の光をこのまなこに感じたとき、なんだか目眩がして、そのまま地面に土下座の姿勢で倒れた。

 そしてそのまま、俺は眠りについた。ほとんど、気を失ったように、プツリと意識が途絶えた――。


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