表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で俺の土下座が役に立つ  作者: ストレッサー将軍
天狗に告げ口 ~目指せ黄金郷~
29/50

土下座その27


 蛇行する急斜面を登り切ると、まるでナイフで切り取られたような平地に出た。

「おっとっと」

 ずっと傾斜面を歩いていたので、逆に平面をうまく歩くことができなくて、少しだけふらついた。

 平衡感覚が狂っている。脳はまだ、傾斜面を歩いているつもりなのだろう。脳が平地に慣れるまでに、もう少し時間がかかりそうだ。おっとっと。

 平地は整備されているらしく、本来生えているはずの木々が一本も生えていなかった。ここだけぽっかりと穴が開いたようだ。空を見上げると、遮る木々がないので、三日月がよく見えた。

 三日月には相変わらず梯子はしごが垂れ下がっているのが見えたが、今はそんなことに気を止めている場合ではないので、俺はすぐに視線を戻した。

 視線の先には、物置小屋にしか見えない小さな神社があった。どうやらあれが、きのこ神社らしい。

 きのこ神社には、申し訳程度に賽銭箱さいせんばこと鈴の付いた綱があった。賽銭箱の奥には三段しかない小さな階段があり、その先には本殿の扉があった。神社の裏側はここからでは見えないが、おそらく何もないのだろう。左側面には木枠の窓が一つあるのが見える。それ以外、特に目を引くものはなかった。

 俺とカマキリじいさんは息を殺し、忍び足で神社に近づいた。

「ぐぉー。ぐぉー」

 神社に近づくと、変な音が聞こえた。

 最初、それはウシガエルの鳴き声かと思い、辺りを見渡したが、カエルらしき生き物はいなかった。

 俺とカマキリじいさんは目を合わせて、お互い首をかしげた。

「ぐぉー。ぐぉー」

 耳を澄ましてみると、この奇妙な音はきのこ神社の中から聞こえているようだった。

 俺とカマキリじいさんは再び目を合わせて、頷いた。

 そして、きのこ神社の窓から中を覗いた。

 息を殺して、音という音を体内にとどめた。けして体外に音が漏れないように、細心の注意を払った。骨がきしむ音や、生唾を飲み込む音でさえも、消さなければならない。脅迫的にそう思った。

 そうしなければ、すぐに気づかれてしまう気がしたから。

 

 ――そこには、いびきをかいて寝ている、天狗がいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ