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異世界で俺の土下座が役に立つ  作者: ストレッサー将軍
悩める街 ~カマキリじいさんの憂鬱~
10/50

土下座その9

 ――夢を見た。

 ――俺は巨大なロボット? みたいな何かの中にいて、そこから外の景色を見ていた。

 ――俺は巨大な何かを操縦することはできなくて、景色を眺めることしかできなかった。

 ――巨大な何かは道ばたにみすぼらしく咲くタンポポを見たり、太陽を目指して飛ぶテントウムシを見たり、小さい子供に手をさしのべるおばあさんの目尻のシワなんかを見ていた。

 ――俺はそれらの映像に、少々退屈していた。

 ――巨大な何かはゆっくりと近くにいた人間に近づいた。

 ――俺に……じゃなくて、巨大な何かに気がついた人々が、驚いたような顔をして逃げ出した。

 ――巨大な何かは人を追いかけることもなく、ただ下の方を見るだけだった。

 ――視界に映るのは地面だけ。

 ――変わらない映像に退屈した俺は、逃げ出した人間の方を見た。

 ――逃げ出した人間のうちの一人が石を投げようとしているのを見つけた。

 ――俺は思わず、危ない! と言っていた。

 ――俺の声が届いたのかどうかわからないが、巨大な何かは飛んでくる石に気づいた。

 ――それなのに、避けようとしなかった。

 ――巨大な何かに石が当たった。

 ――俺は痛みを感じなかったけど、巨大な何かはきっと、すごく痛かったのだろうと思った。

 ――石をぶつけられた巨大な何かは、空へと飛んだ。

 ――空を飛べるエンジンが付いているのだろうか? それとも翼でもあるのだろうか?

 ――どうやって飛んでいるのか疑問に思ったが、そんなことは些末なことだった。

 ――空から見える景色は、格別に美しかったから。

 ――巨大な何かは、空から小さな街の小さな人を、見下ろしていた。

 ――そこで、夢は終わった。


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