~プロローグ~
異世界もので、人気になりたい! 俺も異世界ものを書くで!(作者の意気込み)
~プロローグ~
俺は土下座だけでここまで生きてきた。
初めての土下座相手は母親だった。俺は土下座をした。同じ血の通う、実の母親に、だ。
俺は母親が大切にしていた花瓶を割った。それはたいして高価なシロモノではなかったが、祖母から贈られた大切な一品だったらしい。普段はやさしい母親だったが、そのときばかりは顔が般若になった。
――おそらく、それは俺の遺伝子に組み込まれていたのだろう。
俺は涙を流すよりも、謝罪の言葉を口に出すよりもはやく、膝を曲げ、額を床にこすりつけて、土下座をしていた。
それが、俺の、土下座デビューだった。
いわゆる初体験ってやつさ。普通は高校とか、はやい奴でも中学くらいだろ? でも俺は、小学三年生の時点ですでに、初体験を済ませたのさ。
どこかのエライ学者さんが言っていた――ゼロとイチとの間には、大きな壁がある――と。
ゼロからイチへの壁は高くて乗り越えるのは困難だ。でも、そこさえ超えてしまえば、後はなし崩しにことは進むものだ。一の次は二だし、ニの次は三である。そうやって、数字は積み重ねられていく。ドミノ倒しみたいなもんさ。
俺の土下座も同じだ。
初めての土下座さえ超えてしまえば、後は数を重ねるだけだった。宿題を忘れたときも土下座。同級生にいじめられそうになったときも土下座。ヤンキーに絡まれそうになったときも土下座。妹のプリンを食べてしまったときも土下座。高校受験の面接の時も土下座。彼女に振られそうになったときも土下座。会社の面接でも土下座。仕事でミスをしてしまったときも土下座。社長のカツラを取ってしまったときも土下座――。
とにかく俺は土下座しまくった。片手ではとても数え切れない。
俺は過去の難局を全て土下座で解決してきた。俺の土下座には”力”があるのだ。これは絵空事ではなく、結果を伴った事実なのだ。
そして、その土下座力は、異世界でも遺憾なく発揮される。
――俺の土下座で、解決できないことはない。