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9、なにがどうなってそうなった!?妹の友よ!

 俺のこの言葉に悪意がないことを、笹塚さんは感じ取ってくれたのか、そうですかと一言だけ答えてくれた。

 運転中なのでこちらに顔は向けていないが、にっこりと笑っているような雰囲気を感じた。

 その後、七羽から簡単に昨日の出来事を説明すると笹塚さんも納得したように頷いていた。


 それから数分が経ち、ようやく家の前に車が着いた。

 特と同時に、数名のメイドがリムジンに駆け寄り車の扉を開ける。

 そこで目にしたのは、


「いらしゃいませ、守様のご友人様方」


 と数十名のメイドと執事が左右からお出迎えしてくれたのだ。

 耐性の無い俺と銀田と華渕はぎこちない笑顔で、お邪魔しますとお辞儀をした。

 一方七羽はと言うと、二度目だったお蔭かそれほどでもなさそうだった。


 頭を下げる執事とメイド群の中央を進むとこれまたオシャレな細工の玄関扉をメイド様方が開けてくれた。

 そしてすぐに、来客室があるからとそこに通されたのだがその部屋がまた広すぎる。

 キャッチボールなんて余裕でできるくらいの広さにどうやって作ったのか不明な程巨大な一枚テーブルといかにも貴族って感じの椅子が数脚ある。

 そしてその少し先には、フルーツの盛り合わせやら、チョコレートフォンデュ用の溶けたチョコが流れ出る山やら、ケーキやら、ジェラートやら、なにやらかにやらが所狭しと並べられていて、各ブースには一人一人シェフもしくはパティシエが就いている。

 更には給仕のメイドも俺達一人に対して三人が付く感じで控えていた。


 金持ちってもう何なんスかねぇ~と、隣の銀田と現実逃避をしていると、ここまで案内をしてくれた笹塚さんが片膝をつき頭を下げだした。


「えっと、笹塚さん?」

「お待ちいただく間こちらのビッフェをお楽しみいただければと思いますが、このようなものしかご用意できなかったことを一同を代表してお詫び申し上げます」

「……………」

「やはりご満足いただけませんでしたか………」

「あっ、いや、いきなりの事で俺達も反応が出来なくてですね、決して満足できなかった訳ではなくて、驚いたというかなんというか……」

「みな!守様のご友人に対し我々は大変な失礼をした。今すぐこれを下げ、相応のモノを用意しなさい。すぐにです!」

「いや、だから、ちがっ…」、

「ご友人の皆様、大変な失礼に失礼を重ね申し訳ありません。もう少々お待ちくださいませ。ただいま御口に合うものをご用意させますので」

「あぁ………はい………」


 俺達の話は全く聞かずに一瞬で片付けられたデザートビッフェは、目の前に用意された洋食のフルコースに変わっていた。

 飯前にフルコースってどうよ……

 まぁうまいからいいけどさ。

 銀田も華渕も無言で黙々と食っている。かく言う俺も同じわけで。


 ともあれ、早い気もするが飯も食って落ち着いたので、そろそろ本題に入りたいのだが、その本人は未だにこの場に姿を見せない。

 相当重傷な様だ。

 ため息一発、直後に銀田と華渕を交えたトーク。


「あんだけ旨いモン食ってため息吐くんじゃねぇよ、このラッキースケベ」

「うるせぇ、あれは不可抗力だって言ってんだろうが!」

「兄さん、不可抗力だからこそのラッキースケベなのではないですか?」

「うぐっ、確かに……でも断じて俺はスケベを装ったつもりはない!」

「ならさ、今ここで私が見せるって言ったら?」


 そう言うと華渕はその二つの西瓜を持ち上げて見せた。

 にやりと笑う顔が艶っぽくてつい、お願いします!と叫びたくなるが、視界に入る七羽の姿で正気を取り戻す。


「バ、バカモノっ!そのような事に己の体を使うでないわ!」

「その割には、めっちゃ視線がココを見つめてたし言葉使いもおかしかった気がするんだけどなぁ~」

「兄さん……」

「いや違うんだ七羽ッ!華渕が言ってることは妄言だ!」

「あの~、日華ちゃん?その見せてくれる権利は僕には使えないのかな?」

「銀田キモッ!あり得ない!」


 静かに突っ伏し泣き出す銀田。足元には一瞬で鼻水と涙で水溜りが出来ていた。

 お疲れ銀田、と心の中で合唱しつつ、七羽への平謝りの体勢を維持する俺。

 どこの世界に行っても男の立場なんてこんなもんさ。


 **********


 それからしばらくすると、執事の笹塚さんが俺の下にやってきた。


「朔真様、少々よろしいでしょうか?」

「はい?何ですか?」

「守様に皆様がいらっしゃっている旨をお伝えしましたところ、朔真様のみで部屋に来るように申し付けられまして。他の方々もいらっしゃって下さいますので一度ご挨拶をとも申しあげたのですが、どうしても朔真様とふたりで会わなければならないのだと言っておりまして……」

「そうなんですか。合うのは別に構わないのですが嫌な予感しかしないのは何故ですかね?」

「理由までは伺っておりません。ですが、お会い頂けるという事でよろしいでしょうか」

「まぁ俺は全く構わないんですけど……」


 と視線を七羽に向ける。


「私は問題ありませんよ? マモルちゃんが来て欲しいと言ってるのであればむしろ行ってあげた方がいいかと思うんですけど……それに謝るのに他の視線があると気になりませんか?」

「まぁ確かにそうなんだけどさ、七羽は俺が他の女の事と二人きりの部屋に入る事は嫌じゃないのか?」


 俺だったらもう死ぬほど嫌だ。

 そいつを抹殺します。原型留めません。

 それほど嫌だと言うのに、七羽は友達の為なら良いと言う。

 なんだかちょっと複雑な気持ちになるが、そこは考えても仕方ない。

 俺はわかったと一言つぶやくと、七羽が近づいてきて耳元で、


「信じてるから、今回だけですよ」


 と、囁いてくれた。

 それに、おう!と返し、笹塚さんについて行く……が、


「ダメェ~! 絶対ダメェ~!!」


 とおもいっきり襟首を掴まれ引き倒される。


「ってぇ、なんだよっ! せっかくボスに立ち向かう前の勇者の演出っぽくキメたのに台無しになっただろ!」


 俺がすばやく立ち上がりズバズバ抗議をするも、聞きませ~んとでも言いたげに両手で耳を塞ぐ華渕。

 こんのダブルウォーターメロン装備の女形巨人め!

 何がしたいんだよ何が!


「ったく……もう行くぞ俺は! いつの間にか夜六時も過ぎてるし、さっさと終わらせて帰るんだからな」

「っだから、ダメって言ってるの! 他の女の事二人っきりなんてダメなのぉ!」

「えっ? どうしたのお前、そんなキャラだっけ? なんかそんな君が痛々しい……」

「なんでそうなるのよ、もうっ!! 人の気も知らないでさ!」


 冷たい視線を向ける俺に何故か強い怒りを向ける華渕。

 そんなに行ってほしくない理由でもあるんだろうか。

 たぶん、ここの令嬢であるマモルと一番にお近づきになりたくてダダをこねているんだろう。

 でも、今回は俺指名だから仕方ないのだ。

 許せ華渕……

 俺は悪くないのだ。


「っという訳で行ってきま~す!」

「ちょっと、ダメっていってるでしょ!」


 騒ぐ華渕を数人のメイドさんにお願いして、俺は来客室を後にした。


 **********


「あの、まだ着かないんですか?」

「この先の突当りを右に行って、二つ目の階段を上ってすぐの扉の向こうにある通路を抜けた先にありますので、もう少しでございます」

「はぁ、そうですか……」


 とは簡単に言ってる笹塚さんだが、この先に突当りなどあるのかと疑う程先が見えないんだけど……

 その前に、外から見た感じより明らかに広すぎる気がするのは気のせいだろうか。

 うん、たぶん気のせいだ。俺も疲れているんだろう。

 そう思わないとなんだかやっていけない様な気がする。

 脳と体にこの不可思議空間を強制納得させつつ笹塚さんの後を追い続けた結果、ようやく一つの部屋の前にたどり着いた。


「ご足労頂きましてありがとうございました。こちらが守様のお部屋になります、私はこちらでお待ちしておりますので」


 と、恭しくお辞儀をして扉を開く。

 中に入ると、扉が閉められた。

 で中はいたって普通の女子学生の部屋だ。

 机があり、普通サイズのベットがあり、その横にぬいぐるみがいくつか並べられている。


「でだ御堂さんや、なんで俺だけ呼んだんだ? とその前に謝らせて下さい。昨日は不可抗力によりあなたの裸体を見てしまい申し訳ありませんでした。今後はそのような事がないように細心の注意を払いながら、教室の出入りをします。以上ッ! ではッ、失礼しまし、」

「待った!! いきなり勝手に謝っていきなりいなくならないで貰いたい! 少しは僕の話を聞けないのか!」

「なんだよ、布団の中に隠れてもぞもぞ怪しいことしてた奴に言われたくないんですけど……」

「怪しいことなどしてはいない! ただ、その……昨日裸を見られた相手といきなりどんな顔して合えばよかったのかわからなかったんだ」

「そうですか、そうですか。俺が言うのもなんだけど、これでお終いでいいか? みんな心配してるぞ。 特にうちの七羽だけど」

「いや、ちょっと待て! お前に言わなければいけない事がある。だからお前だけ呼んだんだ」

「ん? なんだ?」


 普段、家ではサラシは巻いていないのだろう。

 その大きな胸の上で顔を真っ赤にして、両手をぎゅっと握る。

 何かを言おうとしているのか顔を上げては口を開いて閉じ、下げては黙りを何度も繰り返している。

 俺も早く帰って、七羽との幸せ楽園生活in休日前夜バージョンを楽しみたいのだ。


「お~い、そろそろ帰るけどいいですかぁ~?」

「ちょっ、ちょっと待てといいてるだろう!」

「ちょっとどころか、めっちゃ待ってるんだけどな」

「ぐっ、分かった! 言う、言うからホントに待って!」


 ハイハイと言う感じで肩をすくめて見せる。

 スーハ―スーハ―馬鹿みたいに吸ったり吐いたりしているがまた一向に話す気が無いらしくドアに手を掛け開けようとすると、


「僕と、僕と結婚してくれ!!」


 …………は?


如何でしたでしょうか?


いつもいつも読んでいただいてありがとうございます!

皆さんに読んでいただいていることがすごく嬉しいです。


もしよかったらコメント、感想、なんでもいいのでご意見お待ちしています。

泣いて喜びますので是非ともよろしくお願いします。


それでは、次回もお楽しみに!!

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