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5、帰宅最高! でも妹が!

遅くなりました。

5話目になります。

 高校生活始まって以来、初めて幸せというものを噛み締めることが出来た昼飯の時間もとうの昔に過ぎ去り、現在の時間は夕方の四時。

 さぁ帰ろう、すぐ帰ろう、今すぐ帰ろう!!

 意気込んで椅子から腰を上げると、前の席からいつの間に復活したのか銀田が声を掛けてくる。

「おっ、今帰りか?なら帰りにどっか行かなっ、はばべぇら!」

「うるせぇ黙れ、俺は帰る。誰が悲しくてお前と一緒にお手々つないでウインドウショッピングしなきゃならんのだ」

「あってて、いきなり鼻にグーパンするなよ!美しい俺の顔が歪んだらどうしてくれるつもりだ!」

「そんなもの知らん。華渕にでも治してもらえ」


 華渕に看護されている姿でも想像したのだろう。デレっと顔を崩す銀田を横目に急いで教室の外へ向かう。

 が、


「ねぇ、サクマは今から帰り? ならさならさ、一緒に帰ろうよ!」

「いや待て華渕、俺は急いで帰らなきゃ、」

「はぁーい!! サクマくん、僕も一緒に帰るぅ!!」


 いつの間にか覚醒したのか、目をギラギラさせた銀田がここぞとばかりに食いついてきやがった。

 だが!


「だから俺は早く帰りたいって言ってるだろ。そんなに帰りたかったら銀田と華渕で帰ればいいだろ?」


 おい銀田、やめろ。

 申し出に感謝するだけならまだいいとして、その感動のあまり涙目で俺の太腿をサワサワすんな! 気持ち悪い!

 そんな銀田とは裏腹に、華渕は少しムスッとして口を開く。


「だったらいい! 一人で帰るから!」

「そんなぁぁ、に、日花ちゃぁぁん」


 なんだか銀田があまりに可哀想になってきた。

 今日のこいつの出番ってなんだか可哀想なのばっかりだったよな……

 そう思ったら少しくらい帰るのが遅くなってもいいよな、なんて柄にもなく考えてしまうワケで。

 思わず俺は、「わかったよ、でも寄り道はナシだからな!」と言ってしまっていた。

 パァっと音が聞こえてきそうなくらいの満面の笑みを見せる幼馴染二人。

 まぁ帰れば確実に我が愛しの女神・七羽様はいらっしゃるからこれくらいはいいだろうと妥協することにした。


 **********


 華渕と銀田を急かし、きびきび歩けと尻を叩き、さっさと靴を履き替えろと煽り、ようやく校門までたどり着くと、いつもと違う光景が。


「七羽!どうしたんだ? 誰か友達と待ち合わせか?」

「あっ、兄さん! そうですよ、いま人を待ってるんです」


 そこには昼飯を一緒に食ったあの時間から変わらない、女神の様な可愛さと神々しさを醸し出した七羽がいた。

 いつもならすぐに帰って晩御飯の準備やら何やらに精をだしているはずなのだが……

 ふっ。いや、まさかな……

 でも、万が一……万が一の確認が必要だ。

 今ままで七羽が誰かを待って帰ると言うのはなかったし、帰るとしてもクラスの女子と一緒に玄関から出てくるはずだし。

 たとえ男子が居たとしても必ず近くには他の女友達が居るはずだ。

 そうだ、やはり確認が必要だ。

 迷うなよ、迷えば道は閉ざされる。


「そうなのか。へ、へぇ~。それはそうと七羽が人待ちなんてめずらしいなぁ。えっとぉ、そのぉ、まさかとは思うが……」

「七羽ちゃんは彼氏待ちだったりして?」


 この華渕アマ

 足首から下コンクリ固めにして海に放り込んだ挙句埋め立ててその上にテーマパーク建ててやろうか!!

 俺が聞こうと勇気を振り絞ったと言うのにお前は、横からかっさらっていくなよ!

 でもまぁ今はそれどころじゃない!

 今は七羽の事が先だ、って七羽さんが顔を赤らめてモジモジしちゃってるぅぅぅ!

 嘘だ、そんなはずは。


「なぁ、七羽。ちょっとだけ兄さんと話を、「お待たせ、ナナちゃん。待ったかい?」……しな、い、か……」

「大丈夫です! さっき来たところですよ」

「そうかい。それは良かった、じゃあ行こうか」


 後からやってきたそいつは俺の横を通り抜け、そっと七羽の肩に手をやるとにっこり笑い行こうと促している。

 な、な、なんだあの超絶出来過ぎてるイケメンはぁぁぁ!

 あんな奴今まで見たことねぇぞ!ってかあんなんいたら学校内で有名になっててもおかしくないだろ!

 それはそうだろ!

 身長は俺を越え、目算だが170後半くらい、うっすら茶色みがかったさらさらストレートショートヘアー、目鼻立ちのくっきりした顔に存在感を強調するような青い瞳、そしてその紳士的な振る舞いが王子様ですよ僕は!とでも言いそうなほどの佇まいと気品を醸し出している。

 はっきり言おう、イケメンだ。

 それも、誰かが人工的に作ったのではないかと言うくらい恐ろしく精巧にできた人形みたいな出来の。

 ただひとつおかしい所を上げるとすれば、制服姿ではなく、少し小さめのジャージを着ているというところだろうか。

 でもまた、それすら様になっているのだからもはやマイナスにはならない。

 そんな彼が笑ってでも見ろ大抵の女子、いや万物の女性という生き物はイチコロだろう。

 そしてその特殊効果は例外などない。

 あの、七羽が、俺にも見せたことの無いような、それはもう可愛い顔で笑っているのだ。


「はいっ! 行きましょう。あっ、兄さん何か言いましたか?」

「あの、いや、別になんでも……」

「そうですか?それと、今日の夜ご飯なんですけど何かあるものを食べて下さい。昨日の残りも冷蔵庫に入ってますから大丈夫だと思いますけど」

「そ、そうだな。えっと、それじゃあ七羽の夜ご飯もかねて何か作っておこうか?」


 俺からの申し出に七羽は首を振り食べてくるのでいいですと答えた。


 **********


 それから七羽は何かを言ってたような気がするのだがまったく覚えていない。

 銀田も華渕も居たのかすら定かじゃない。

 それからどうやってここまで来たのか、気が付いたら一人、自宅近くの公園のブランコに揺られながら止まらない涙を流していた。


 妹に彼氏が。

 俺の気持ちに気が付いてたんじゃなかったのかよ!

 一緒に寝たり、弁当作ってくれたり。

 あれは幻だったのか?いや、そんな訳はない。

 さっきの出来事は嫌なくらい鮮明に覚えているというか、脳に焼き付いている。

 待て待て、朔真さくま。考えても見ろ!

 普通の一般的な妹なんて彼氏の一人や二人くらい作るだろ?

 しかもそのままいけば、高校生とかそれくらいには男より先に大人になってしまうのが現代の普通だろ?

 しかも極めつけに、兄は嫌われるものだろ?

 近い親族にはそう言う感情が芽生えない様に匂いとか存在が嫌いになる様に出来てるんだろ?


 そうなんだよ、そう!

 それが普通、スタンダード、常識さ。

 常識……

 その常識が今は辛い。だから泣けてくる。

 でも駄目だ!俺は今この時から一般的な兄妹の関係にならなくてはいけないのだ!

 まずはそうだ、一般的な兄妹の距離感を実践するのだ。

 今まで俺は甘え過ぎてたんだ。

 一緒に寝たりとか、膝枕とか、とか、とか……

 今後は一切禁止にしよう!

 そうと決まれば、まずは帰って飯食って、風呂に入ろう。

 気分をまずは変えねば!


 自身で決めたことを胸の中で呟くたび、心のどこかが痛むのを感じたがそれは一時の気の迷いだと、その痛みにフタをした。


いかがでしたでしょうか?

よろしければご意見ご感想などをお待ちしてまります。

次回もお楽しみに!!

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