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4、まだまだ会えそうにない。妹に!

4話目になります!!

 朝のホームルームが過ぎ、一時限、二時限が過ぎ去り、次は三時限目だ。

 七羽と会えるまではまだまだまだまだ先は長い。


「さて次は体育か。おい銀田。いつまで寝てんだよ、さっさと行くぞ!」


 いまだに気を失ってから覚醒していない銀田の足を掴み引きずって男子更衣室まで移動する。

 タダでさえ坊主の頭がズルズルいっているのは痛そうだがそこは気にしたら負けだ。


 それはそうと、体育と言えば大抵は疲れるだのめんどいだのと言ってサボる奴らが大勢出るイメージがあるだろうが俺たちのクラスは違う。

 本日の体育はバスケットボール。

 というかここ最近ずっとバスケだ。

 四十人のクラスを五人で割り八チーム作る。

 んで、今のところ俺が入っているチームと銀田が入っているチームがひたすら競っているという状況だ。

 そして現在の銀田チームとの勝敗は10勝10敗9引き分け。

 いったいどれくらい長くバスケだけをやってるのかという感じだが、この勝敗数と俺たちが全力でプレーする様を見た体育教師が、


「素晴らしい情熱だ。お前らのどちらか一方が勝つまでバスケをさせてやる、だから思う存分やれ!!」


 との号令がかかり今に至るというわけだ。

 俺の知ったことではないがあの体育教師、職権乱用とかで来年はいないかもな・・・でもありがとうございます。

 これで今日のこの試合で因縁にケリがつきます!!

 そして今日は最後の試合ということもあり特別に校庭にある特別試合用の野外コートを使ってもいいことになった。

 野外コートは、基本的には体育祭の決勝戦や地域とのイベントなどでしか使われていないが、今回に限り体育教師が校長に直訴して承諾を得てくれたらしい。


 照りつける太陽の下、俺のチームと銀田のチームが対峙する。


「ヘイブラザー、負ける為にのこのこやってきたのか?」

「ドヘタレ銀田くん、好意を寄せる女性に気持ちも伝えられない奴が、このリアルが充実しきっている俺に勝てるとでも思っているのかね?」

「それは関係ねぇだろ! とにかくこれで最後だ! お前に勝って俺は自身を手にする!」

「無理だな。お前に俺は倒せんよ。俺には女神がついてるからな」


 互いに啖呵をきりコートの両サイドに分かれて挨拶をする。

 開始のジャンプは俺と銀田。

 俺は決して身長が大きいというわけではないがジャンプ力には自信がある。

 一方の銀田は身長と体格には恵まれている。

 やはり身長という武器はバスケでは大きな意味を持つ。

 今回もジャンプでボールは銀田のチームに奪われる。

 そして試合は銀田の先制ゴールから始まった。


 **********


 体育の時間も残すところ後五分。

 今のポイントは、46対50で銀田チームが優勢。

 そしてボールを持つのも銀田チーム。

 このままでは負けが確定してしまう。

 銀田チームは30秒ルールをフルに使い時間を稼いで逃げ切る作戦に出ている。

 パスワークでボールを回し中々手が出せない。


「銀田! 勝負しやがれ! お前はどこまでヘタレなんだ!」

「ふっ、これも作戦なのだよ。勝負をしろだと? 俺はもうとっくに勝負をしてるぜ。悔しかったら奪えばいいだろ?」

「くっ、こんな時ばっかりそれっぽいこと言いやがって」


 さぁどうする!どうする!このままじゃ負ける!

 銀田の持つボールを睨みつけながら片手で頭をガリガリと掻き毟るが、妙案も浮かぶはずなく時間だけが過ぎていく。

 残り三分。

 そしてここに来て、俺の下に本日二度目の神が降臨する。


「負けないで、兄さん!」


 声がする方に視線を向けると、校舎二階の窓から身を乗り出して俺に向かって叫ぶ七羽の姿が目に映った。

 おいおい、今授業中だろと心配になったがそれは杞憂に終わった。

 いつの間にか授業中にも関わらず、ほぼ全校の生徒が窓から俺たちの試合を観戦していた。

 集中し過ぎて気がつかなかったらしい。

 そんな中で、七羽は俺に声をかけてくれていた。

 七羽に心配されている。

 俺は両手で顔をバシンと叩く。


「おい銀田……」

「なんだ?」

「お前らはもう負け確定だ」

「はぁ? あと三分もないのにあと四点は結構無理あると思うぞ。諦めておけよ。それともなんか秘策でもあんのか?」

「秘策はないが俺に今、神が降りた!」


 銀田が右の奴にボールをパスするためにボールから手を離した瞬間、俺は手を滑り込ませそのボールを相手側コートの方へ弾く。


「しまった! 追え!全員でだ!」


 そして俺は転がるボールめがけ走り出す。

 ボールを拾い上げそのままゴールめがけシュートを放つ。

 銀田のチームの誰もが追いつけぬままハーフラインから放たれたボールは、


「自棄になったかサクマ! そんなふざけたシュートが入るわけ……」


 バスっと重い音を立ててゴールに吸い込まれた。


「なにぃぃぃ!ば、ばかなぁぁぁ!!」

「言っただろ銀田。俺には今、七羽という神が降りていると」


 これで49対50。

 残り一点差まで詰め寄ったが、残り時間はあと一分弱。

 そして相手ボールからの始まり。

 時間から見て絶望的だがまだ諦めない。

 何せまだ俺の女神は俺が勝つということを疑っていない。


 相手側のパスからタイムが流れ始める。

 やはりここ一番のボールの持ち手は銀田だ。

 ボールを受け取ると華麗にさばきながらドリブルをしてくる。


「残り一分を切った。そろそろ女神さまの顔色も悪くなってきてるぜ? お前も諦めろよ」

「七羽に心配掛けちまうなんて俺もまだまだだな。でもな銀田」

「なんだ? 話してる間も時間は過ぎてくだぜ?俺は一向に構わないけどな」

「それは俺も同じだ。だからこその切り札だ」

「なに?」


 朔真は大きく息を吸い込み叫ぶ。


「華渕ぃぃっ!!」


 同じくコート脇でクラスの女子と観戦していた華渕は、朔真からの合図・・・・・・・に頷く。

 華渕は銀田の時を止める魔法の言葉を口にする。


「銀田くーん! スキーっ!!」


 残り二十秒、銀田の時は止まる。

 そしてボールが足元に転がる。


「はいっ、貰った!!」


 朔真はボールを拾い上げそのままゴールへ一直線に向かいゴールを決めた。

 俺を追わずに華渕に熱い視線を向ける銀田。

 そこで試合終了の笛がなり響くが銀田は構わず華渕の方へと走っていく。

 息を切らし華渕の下へたどり着くとさっきのは本当かと華渕に詰め寄る。


「本当だよ? なんで?」

「俺の事スキだって言ってくれただろ。もう一回聞かせてくれ!」

「もう一回? はぁ、まぁいいけど……。銀田君、隙だらけだよ。これでいい?」

「はぁぇ?」

「えっと、だから、隙だらけだよ……って言ったんだよ。朔真がね、俺がお前の名前を呼んだ時は銀田が勝負に上の空になってるはずだ、だから隙だらけだって教えてやってくれないか。って言ってたんだよ? 銀田くんにせっかく教えてあげたのにボール盗られちゃうんだもん。もう少し頑張ってほしかったな」


 花渕からの言葉に銀田は完全に停止してしまった。

 試合には負け、そして己中の何かにも負けてしまったのだ、無理もない。

 後からやってきた朔真は銀田の肩をポンと叩き一言。


「いろいろお疲れっ!」


 銀田は崩れ落ち、保健室へと搬送された。

 今日はもう帰ってくることはないだろう。

 さて、次のかったるい授業が終われば、極上の昼飯が待ってるぜ!!


 **********


 四時限目を勝利の余韻と七羽の嬉しそうな顔を想いだし、昼寝の時間に費やすとようやくやってきた昼の時間。

 七羽のお手製弁当を誰にも邪魔されず食べるにはいつもの場所で食べるのがベストだろう。

 そう思いそそくさと準備を済ませ移動する。


 着いた先は、学校内の部活動棟の屋根の上。

 いつもここで昼飯を食ったり昼寝をしたりしている、俺だけの特等席だ。

 事前に用意していた古めかしい感じの木製のはしごを掛け上ると、誰も上がって来れない様に梯子を回収する。

 ようやく一息つき、楽しみに待っていた弁当包みを解いていく。

 とどこから飛んできたのか小石が弁当箱のフタにカツンと当たった。

 辺りを見回し、上から降ってきたのかと思い上も見てみるが誰もいない鳥すら飛んでいない。


「なんだ? 気のせいか? ってぇ!」


 割れる程の衝撃が眉間走る。

 痛みにうずくまり何が起こったのか再度見回すと、また石が転がっているのだが、明らかにさっきよりサイズがデカくなっている。

 するとまたサイズが大きくなった石が下から放物線を描きピンポイントで俺めがけ飛んでくる。

 その石を躱し、屋根の下の不埒者に文句でも言ってやろうかと顔を出すと、そこにはなぜか女神がいらっしゃった。


「七羽、なんでここに? 飯はどうした? 友達と一緒じゃないのか? 大丈夫なのか?」


 七羽はクスクスと笑うと質問が多すぎですと人差し指を立てながらたしなめてきたが、律儀に一つ一つ答えてくれる。


「私もちょうどお昼のご飯を食べようかと思って食堂に向かって行っていたのですが、途中で兄さんを見つけたのでついてきたんですよ。だからご飯はもっていないです。友達には食べててもいいよって言ってあるので大丈夫です。それより兄さん、私もそこに行きたいんですけど、ダメ……ですか?」

「ダメなわけあるか! 今すぐ梯子下ろすからそこで待ってろ。危ないから俺が下りるまで登るなよ」

「兄さんは心配し過ぎです。梯子を下ろしてくれれば自分で行けますから大丈夫ですよ」


 そう言う七羽のところへ梯子を下ろすと、危なげなくひょいひょいと上まで登ってきた。

 俺が座る横に当然の様に座ると、まだ開け途中だった弁当に視線を向ける。


「これから食べるんですか?」

「そうなんだけど、七羽もまだだろ? 一緒に食べないか?」

「いいんですか? でもそんなに多く作ってないので兄さんが食べる分が無くなってしまいます」

「いいんだよ。 それに俺は七羽と一緒に食べられるだけで最高にうれしいんだ!」


 そう言って俺は弁当のふたを開ける。

 すると中には色とりどりのおかずと綺麗に形が整えられた俵型のご飯の握りが入っていた。


「すごいなコレ! どれもこれも見た目も綺麗で旨そうだ!」

「それはそうですよ。 兄さんの為だけに一生懸命作ったんですからね」

「ありがとう。その言葉が何よりのおかずになります! ごちそう様です!」

「まだ食べてないのにごちそうさまじゃないでしょ? いただきます!」

「そうだったな、じゃあ改めて、いただきます!」


 手を合わせ弁当箱についた箸に手を伸ばそうとすると、七羽がそれを横からひょいと取り上げ、弁当箱からアスパラと人参の肉巻きを摘んで俺の口元まで運んできてくれる。

 顔を真っ赤にしたまま、心配そうに見つめてくる。

 恋人でいるのは家の中だけと言ってた七羽がこんなだれが見てるとも分からない場所で、俗にいうあ~んをしてくれるだなんて!

 いいのか、俺!これ食っちゃって! 学校内で初のあ~んだよコレ!

 天使かお前は! いや違う、女神だった! だがしかし、ここで食ってもいいのか?兄として男として七羽との約束を反故にしてもいいのか?

 本当に食べていいのかと頭の中で葛藤が起きて迷っていると、しびれを切らした七羽が、上ずった声で思考に渦巻く俺に声を掛けてきた。


「あのっ! えっと、今日は、その、バスケットで勝ってくれたので特別です! さぁ、ど、どうぞ!」

「いただきます!」


 俺の葛藤クソくらえ! 女神が良いと言ってるのだ、ダメなわけなかろう!

 何を迷っていたんだ俺は! 馬鹿者め!

 たとえそれが毒でも、汚物でも差し出されれば食ってやるわ!

 と思っているうちにも、七羽から差し出されたモノをすぐさま頂く。


「うまいっ! うますぎる!! アスパラと人参は絶妙な歯ごたえで、肉に絡み付いたタレが全てを包み込んで後味に不快感さえ残らない程さっぱりしている!七羽は神か!」

「神は言い過ぎですけど、自信作ですよ! だって兄さんの為のお弁当ですからね」


 兄さんの為、頂きました!

 口に残る旨みと七羽からの言葉に最高の瞬間を感じながら弁当を食べ進めて行く。

 七羽はこの弁当を食べ終わるまで食べさせてあげますと言って箸を手放さなかった。

 それでは七羽が食べられないじゃないかと言ったら、もともと兄さんのお弁当ですと言って聞かなかった。

 ならばと俺は指でおかずをつまむと、七羽の口元に持っていって口を開けろとホレホレ言って催促する。

 始めは顔を真っ赤にして、いりません!とか恥ずかしいですから!とかっていたが、しつこいくらいやっているとようやく折れて食べる気になってくれたらしい。

 これだけですからねと小声でつぶやくと俺の指ごと口に入れてしまった。

 てっきり口でくわえる程度で終わりかと思っていた俺はまさかの展開にフリーズする。


「んっ」


 七羽は口に入れたおかずを飲み込みながら俺の指についたおかずの残りも綺麗に舐めた。

 顔を真っ赤にして俯き、綺麗になりましたよ。と、ポロっと呟く。

 恥ずかしがっているのにいつもなぜか大胆な七羽の行動にはいつも驚かされる。


 神よ、俺を今日何度殺すおつもりですか。

 このままではいつまで生きていられるか心配です。幸せすぎて!

 童〇の俺には刺激が強すぎます。


 神への感謝の言葉とほんの少しの恨み言を呟きながら、顔を真っ赤にした兄妹は昼休みを目いっぱい使って弁当を食べた。


如何でしたでしょうか?

是非ご感想お待ちしております!!

次回もお楽しみに!!

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