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37、せいてんの……

「晴天の霹靂」


 目の前のあなたはこれが読めるだろうか。

 んでもって意味が分かるだろうか。


 この俺が直々に答えを教えようではないか。

 心して聞いてくれ。


 ん?

 そんなの読めて当たり前だって?

 まぁそう言うなよ。な?

 たまにはさ、俺の愚痴にも付き合ってくれよ。



 おぉ、ありがとうありがとう。

 目の前の君は聞いてくれるのだな。

 感謝してもしきれないくらい嬉しいぞ!


 うむうむ、よしよし。

 長らくお待たせしたな。


 答えは「せいてんのへきれき」と読むのだ。

 言葉の意味は簡単だ。

 ヒャッホーしてたらドーンってなるって意味だ。


 えっ?

 それじゃわからないって?

 仕方がないな……ならもう少し具体的な話をしよう。




 ほんの数分前の話だ。



 ……………



 …………



 ………



 ……



 …


「ペアリングも買ったしこれから先俺と七羽はもう無敵だな」


「ふふっ、無敵?かどうかはわかりませんが、今はとっても幸せです」


「そうだなぁ~ほんっとに幸せだなぁ~」


「本当にそうですね。それじゃあ兄さん、次はどこに行きましょうか」


「そうだな……」


 穏やかで温かくて陽気で幸せなこの時間。

 もうどこに行っても楽しいに決まってる!

 たとえ荒れ放題になった近所の公園の隅っこにある小汚いトイレの中の虫がいたるところから湧いてくる個室の中でも楽しいさ!きっと!




 いや、すまん。

 さすがにそれはないな……

 せめて荒れ放題の公園くらいまでなら楽しいかもしれないとも思わなくもない。

 まぁなにが言いたいのかと言うとどこに行っても七羽となら一緒にいるだけで楽しいという事だ。


 そんな俺の頭は幸せいっぱいになりながらもどこへ行こうかと脳内データベースでデートスポット検索を始める。

 遊園地か?いや、ちょっとベタすぎるな。

 なら水族館か?う~むそれもなんだかベタな気がする。

 それじゃあ公園はどうだろう。…いや、やめよう。

 さっき荒れ放題だとかなんだとか想像しすぎちまったからちょっと行く気になれん。


 どうしたもんか……


「ん~と……」


 いつも稼働させないでいるためか在り来たりな場所しか検索に引っかからない。

 どうしたもんかねぇ…


 一次検索を終えた俺の脳に二次検索を掛ける。

 が、結果は同じで引っかかるワードは在り来たり。

 それでもなんの情報もない為、三度目の検索を掛けるがまたも同じ結果に――

 というところで脳が何をトチ狂ったのか唇を動かす指令を出し、俺の意思に反してこう答えていた。


「そうだな、学校に行こうか」





「はい、そうしましょう!」





 はぇ?


「ちょ、え、まっ、ちょちょちょちょっと待った!今のナシっ!!あまりに思いつかなくて俺の口が勝手に発しただけなんだよ!だから今のはナシっ!!……っていいの!?!?」


「はい。兄さんがそう言ったのであれば行きたい場所ってことですよね。だから学校に行きましょう!ちょうど今日はお休みで部活動の方々くらいしかいないでしょうから、屋上に行けば二人だけの時間も過ごせますね!」


 ……確かに。

 考えてみれば二人きりになるには意外といいかもしれない。

 じゃあ行こうか学校に。


「そうだな。いきなり学校なんて言っちゃったからどうかとは思ったけど、七羽と居られるなら俺もそれでいいかな。じゃあ早速だけど行くか」


「はい、行きましょう!いつもの登校とちょっぴり違っていてドキドキしますね」


「そうだな。いつもより七羽が可愛いから俺もドキドキするよ」


「そんなこと……あの、えっと、兄さんもいつも以上にカッコイイです!うん、カッコイイです!」


「ははっ、ありがとうな。七羽」


 そう言って隣を歩く七羽の頭をくしゃくしゃと優しく撫でる。


 いやぁ、変なこと言ったと後悔したが、うまい具合に転がってよかったよかった。

 歩いてるだけでもイッチャイチャできるしなぁ。

 最高だ!


 そんなやり取りを続けながら俺と七羽は学校へと向かった。










 はい、ちょい待った。


 そこの画面の向こうのキミっ!

 なんかいやらしいことが起こるのかもとか考えてるんじゃないだろうな?


 いやはや失敬なっ!

 この超絶紳士的美男戦士・佐倉(さくら) 朔真(さくま)が大事な大事な妹神様(ななは)にいかがわしいことをするわけがなかろう!

 一同恥を知るがいい!!


 ん?

 何か言いたいことがあるのかね?言ってみなさい。


 何回もキスしただろって? 太ももスリスリしたこともあったろって?


 ………


 ……


 …



 さっ、学校に行くかっ!!

 なんかブーイング的なものが聞こえるが、きっと俺と七羽の関係を羨んだ声だろう。

 ふっ、負け犬め。あーっはっはっはっはっは!!

















 ………ってなぜこうなったのだろう。





 学校について屋上に行くまでは最高の気分だった。

 天国へ続く階段を二人で登っていくような、それはそれは幸せな時間だったのだ。



 それがどうして……







「あら、元気そうで何よりねサクマ、」



 開け放った扉の向こうから俺の目に入ってきたのは、



「それと……」



 眩しいほどに照り付ける太陽の光と、



「兄にべったりとくっついて離れない気持ちの悪い妹の七羽ちゃん、」



 屋上に吹く爽やかな風と、



「さぁ、私にサクマを返してもらおうかね」



 俺と七羽の実の姉の姿だった。






 どんなに気持ちのいい天気でも、




 いきなり降るんだよな……




 ……雨って。

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