17、俺と七羽と
遅くなりました……
息が出来ない。いや、むしろしたくない。
一度キスをしてしまったら、互いをとどめていた何かはもう完全になくなってしまった。
息苦しくなり、唇が離れると上記した互いに顔に愛おしさを感じて、また唇を重ねる。
離れては重ね、それを離すまいと二人は共に腕に力を入れて引き寄せあう。
いったいどれくらいそうしていただろうか。
昼飯を食べてからからずっとそうしていた気がする。
気が付けば今は、時計が3時を刺そうとしている様だった。
「はぁ……はぁ……兄さ……あむっ…ん……」
俺を呼ぶ七羽が愛おしくてたまらない。
汗でぬれた前髪、羞恥と喜びに上記した肌、柔らかい香り、すべすべとした柔らかい体……
そのすべてを俺は欲してる。
麻薬は一度手を出したらもうやめられないと言うけど、この感覚も似たようなものなのだろうか。
欲して欲して、そこあるのに少しでも離れると不安になるからまた欲して。
手に入れるとその幸福感でいっぱいになるけど、まだまだ満足はできなくて。
それが永遠に続く……
「ぷはッ……はぁ……はぁ」
何度目かもわからなくなった口づけを再度離す。
見つめ合って、何も言わずとも互いが通じていると言うのがじんわりと流れ込んでくる。
するとまた、七羽が欲しくなる。
衝動的に体が少しづづ前傾していくが、それを無理矢理止める。
(マズイ……このままじゃ本当に理性がトぶ。これ以上はヤバい! ストップストップ!!)
何とか背筋に力を入れて傾く体を元の位置に戻すことに成功する。
(ふぅ……さすがにここから先はマズイ。よく耐えた俺!)
キスを耐えたと言う謎の達成感で思わず脱力してしまった。
すると……
*****
唇が離れ、まだ息も整わないのに、また兄さんが目の前まで近づいてくる。
私の頭は息をしろと必死に訴えてくるが、体は吸い寄せられるようにその唇に向けて動いていく。
目を閉じ、その感覚に酔いしれようと目を閉じて待つ。
だけど、先ほどまではすぐに重なってきた兄さんの唇がまだ来てくれない。
目を開け、兄さんに視線を向けると気が抜けたと言うか、何かに安堵した表情で元の位置まで体を戻していた。
そんな兄さんの姿を見ると余計に自分が止められない。
「七羽? !!――んむ……」
気が付けば私は、自分から求めるように唇を重ねに言っていた。
止められない。
兄さんを一度感じてしまったらもうどうしようもないくらい切ない。
こんなにいつも近くに居たのに……今もこんなに強く抱きしめあってるのに……
体が勝手に動いて、頭が痺れていく。
「ぷはっ…兄さん……」
吐き出しきった酸素を早い呼吸で少しづつまた吸い込んでいく。
すると、少しスッキリした私は、さっきの兄さんの行動に少しだけ不満を抱く。
「兄さん、なんでさっき途中でやめてしまったんですか? 私はずっと待ってたのに」
「いやその、ゴメンっ! いこうとは思ったんだけどさ、その、いろいろありまして」
なんだかモジモジと歯切れの悪い兄さん。
また何か隠してるんですかね。
だから私は、今できる限りの最高の笑顔で兄さんに問いかける。
「ねぇ、兄さん? まだ何か私に言えない事があるんですか?」
ただ優しく聞いただけなのに兄さんは小刻みにプルプルしながら、あのそのと繰り返している。
私、何かしましたっけ?と疑問に思っていると、ゆっくりとだが兄さんは教えてくれた。
「い、いやその、ヒジョーに言いにくいのですが……その、えっと、このまま続けているとですねよろしくないかと思われまして……」
?
どうしていけないんですか?
初めてのキスでお互いがより近くに感じられて、もっともっとこの幸せが欲しいって思うのはいけないことなんですか?
それとも兄さんは、やっぱり……嫌だった、とかですか?
心の中の言葉は外には出ずに、表情だけが不安を作り出してしまっていたようだった。
それを見た兄さんは慌てて私にそうじゃないんだと言う。
「ち、違うんだ七羽、その、なんていうか………言いにくいんだけど、その……」
やっぱり兄さんは………
表情は更に曇り兄さんから視線を外して俯く私。
敷いたあるシーツをぎゅっと握り込むと、突然兄さんが私の肩を勢いよく掴む。
「そんな顔しないでくれよ。七羽が悪いわけじゃないのは本当だよ。ただその…」
「その?」
「ああもう!! だから、あのまま続けてたら俺は七羽を襲っちまうかもしれなかったんだよ! 折角、七羽とキスできたのに、そのあと流れで襲ったなんて考えてもみろ! 俺は七羽に性欲しかなかったのかとか思われるのが嫌だったんだよ! わかったか!」
捲し立てるようにそう言い切った兄さんはシーツに視線を落として、さっきの私の様にどんよりと後悔の二文字を隠そうともしないで落ち込んでいた。
七羽に嫌われるとかどうせ俺は性欲の魔人さとか、ぶつぶつとつぶやいている様だった。
そんな兄さんに私は、同じように肩に手を置き、鎖骨から頬骨まですっと撫でると、そのまま両手で顔を持ち上げる。
「兄さん、言ってくれてありがとうございます。そんなに気にしなくても大丈夫ですよ? 男の子はみんなそうなんですよね? だから私はそんなことで兄さんを嫌いになんて絶対なりませんから……だから安心して下さい」
「七羽……」
うるんだ兄さんの瞳が揺れ動くたびに、また近づきたいという衝動に駆られて軽く唇を重ねる。
あっと思い、兄さんにごめんなさいと謝る。
さっきお朝得られなくなるからって言われたばかりなのに。
だってだって、兄さんがこんなに近くに居て、こんなに可愛いんですから仕方ないじゃないですか!
そうです、兄さんが悪いんです!
そう勝手に思い込み、気恥ずかしさからまた目元はシーツに落ちていく。
私たち兄弟は何度同じことをすれば気が済むんだろうなぁなんて思いながらも、恥ずかしさで顔があげられない。
すると兄さんは、いつもしてくれるように頭を優しく撫でてくれた。
今度は心地よさかの所為か、顔があげられない。
単調なリズムでゆっくりと頭を撫でられ、火照っていた体も心も落ち着いていく。
そして今この瞬間に幸せを感じながら、私は温かい兄さんの腕の中でゆっくりと目を閉じた。
*****
「七羽?寝た……みたいだな」
頭を撫でられて、気が緩んだのか七羽はそのまま俺の腕の中で眠ってしまった。
そんな七羽を、ベットに横にして布団を掛けて寝かせてやる。
スースーと規則正しい寝息を立てているから、たぶんもう熱は無いだろう。
片付け忘れて米がこびりついた土鍋と茶碗を手に一階に降りる。
そのまま洗っても落ちない為、水につけて放置しておく。
洗うまで少し時間が出来てしまったが、やる事はまだ沢山ある。
いつも七羽がやってくれている、洗濯や風呂の準備やら晩飯の用意やらと山積みだ。
いつも学校上りにこんなにもやってくれているのかと思うと、確かに体調を崩してもおかしくはないと思う。
「七羽はすげぇなぁ……なんでも出来て、がんばってんだもんなぁ」
ぐったりとソファに腰かけそんな言葉を口にする。
そしてそんななんでも出来る妹が、こんなダメな兄貴を心から好きだと言ってくれている。
途端に顔に熱が戻ってきて、先ほどの短くも濃密な時間を思い出す。
(俺はついに、妹にキ、キ、キ、キスをしてしまったのか……)
頭で単語を出すだけでその時の光景がフラッシュバックしてくる。
あまりの興奮と恥ずかしさからソファーから転げ落ちて後頭部を強打する。
ジリジリとした痛みが響いてい来るが、熱くなった頭の中にはちょうど良いくらいの刺激になった。
(ホントにしちゃったんだな……俺達。いいのか、こんなに幸せで! 神様ありがとう!)
折角冷めた頭が再沸騰していく。
熱に浮かされて騒ぐのはいいが、まだ家事のかの字もやっていないのだ。
早々にやらないと七羽が起きてしまうからさっさと済ませるか。
そう思いながらまずは、こびりついた米がイイ感じふやけた土鍋を手早く洗いながす。
その後は、風呂に湯を入れていつでも七羽が入れるようにしておく。
汗まみれで気持ち悪いだろうからな
それも蛇口をひねるだけなのですぐに終わり、晩飯の用意をしていく。
まだ風邪もよくなっていないだろうから、シチューにしよう。
まぁ、消化にいいのは同課は甚だ疑問だが、俺が作れるレパートリーなんかカレーの派生であるシチューか、ご飯を炒めて醤油で混ぜただけのチャーハンか、カップ麺くらいのものだ。
そう思ったら……ねぇ。
もうシチュー一択でしょ?
家にある野菜どもをかき集めて刻んでいく。
それが終わると、少量の油で軽く炒めて水を入れてあとは煮込むだけ。
ルーの入っていない鍋をグルグル都会混ぜている時にふと、思い出す。
「そういえば、今日七羽とデートできてねぇじゃん……」
そうだった。
始めの目的は底だったのだが、今回ばかりは仕方ないだろう。
七羽の体調が一番なのだ。
まぁ、体調が治ってから改めてすればいいか。
そんなことを思いながら、柔らかくなった野菜たちにの中にルーを入れてかき混ぜた。
今日のシチューは、七羽との出来事の様にとても暖かい空気と香りで俺を満たしてくれた。
ま、味の保証は出来かねますけど。