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空のお話  作者: 空のお話
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空のお話、第2話

挿絵(By みてみん)


FL180=18,000feetを過ぎたころ、Mはようやく、オートPILOTをオンにする。十分楽しんだ。 そして25,000を過ぎたころだろうか、ロスではなく、再び頭上に宝石箱が輝く。 


挿絵(By みてみん)


満天の星空だ。少し一息つける時間だ、駆け上がる機体の振動を感じながら、ショルダーハーネスをカチッ スルーーーっと外し FMSのFIX確認をし始める。


フェイズ3 上昇/巡行編



描写し忘れたが、航空機は18,000feetを超えるとその先はFlight Level という呼び方で高度を表現する。

ここでMは「プル スタンダード ALTチェック 180 と言う」

Jは「スタンダード イズ プルドゥ ALT イズ チェックッ」

と確認し 高度計セッテイングは2992になる。


FL190ならば19,000feet の事である。 エアバス社のA319はFL400までは機体が軽ければ昇れるが、A321だとどうしても中距離路線(4時間から6時間)に投入されるため、乗客や燃料など重いものをより多く積むA321は高く速く飛べない。。。。


正確には、カラなら速く高く飛べるが、エアラインとしてそんな運航は大抵しない。つまり、PILOTの立場からすれば、150人乗りのA319のほうが180人から230人乗りのA320とかA321より楽しいと言う事になる。


最高速度も軽いA319であれば高度FL350-380でMach0.81まで引っ張れるが。A321だと燃料満載で乗客満載、重い状態ならば、飛行フェイズの大半を大抵 Mach0.78で巡行、しかもマックタックを気にしなければならない。恰好の良いものが常に良いものとは限らない良い例かもしれない。


話を戻すような感じで、LAセンターが「Frontier 1272 Climb and Maintain 350」と言ってきた。


無線交信レディオは通常そのレグで操縦していない方のPILOTが行う。このレグはMが操縦、機長のJはモニター役なので、無線交信はJが行う。


Jが「LAX Frontier 1272 Climb and Maintain 350」と返答する。


MはFCP Flight Control Panel (以下FCP)のALTボタンを35000まで回し、ボタンを引く。



目前のディスプレイの中のFMA(Flight Management Announcer)の表示が OP CLBに変わる これはオープンクライムと言って、コンピューターが 毎分XX千feetと言う制限なしに最適な速度でガンガン上昇していくモードである。


これで、フライトプランの中で指定された35.000feetまで勝手に上昇してくれる。不意にガクガクと機体が揺れ始める。私はチラッとJの顔を見る、Jはコクっとうなずく、

Mは頭上のシートベルト着用ボタンを再度サイクルさせる。


客席ではポーンポーンと二回ベルが鳴り、アテンダントが「皆さまただいま機長がシートベルト着用のサインを点灯させました。どなた様もお席にお着きになり、シートベルトの着用をご確認ください。」と英語でアナウンスする。上昇中なのでもともとシートベルトサインは点灯していたのだが、ここで必ず数人は勝手に席を離れ、トイレに行く人がいる。

どのフライトでも必ずいる(w そのためのサイン再点灯でありアナウンスである。 しかも、SWをONにしたのはコパイだがそんなこたぁー、彼女(彼ら)は知らない。


ちょっとした乱気流の層を超え34,000feet、FFT1272は大気の層を掻き分けながらその腹一杯の重い体をあと1000feetほど引きずるように上昇する。


A321で6時間の燃料を積み、230人乗せ、ここまで上昇すると、1000feet上昇するのに2分もかかる。軽ければこの高度でもガンガン上がるが、それは会社の赤字を意味する。

マックタック(意味はグーグル先生に聞いてね?)に気を付けなければならない。 ここ35,000feetの成層圏下部、薄い空気の中では水は61度で沸騰し、外気圧はわずか0.2PSIだ。外気温度は-48C、温かいコーヒーも一瞬で昇華しバキバキと音を立て凍ってしまう世界だ。


アラスカ時代、ベセルで温かいコーヒーを頭上にばら撒くと、頭上数メートルからコーヒーの飛沫が地上に落ちるまでの数秒ですべて凍り付く、そう、バキバキともジャッとも、とても例えようのない、音をたてて、-40度以下とはそういう温度だ。


そんな厳しい世界と快適なキャビンは、薄い合成素材とアルミ合金に囲われて区別されているだけだ。キャビンの最大気圧差は9.0PSI セーフティーバルブは8.6PSIで作動する。8.6PSI以上外気圧との差が出た場合、バルブが開き機内の圧を抜く。航空機は風船のように膨らんだ状態では非常に強いが(9.0気圧差まで耐えられる)逆に大気圧が機内気圧より高いという状況ではわずか ―1気圧までしか耐えられない。


そういうことを普段は考えることもなく、また考える必要も全くなく、お客様は眠りにつく。

そうたとえ11000m / 11km上空でも機内気圧は8000feet / 2.4km上空と変わらない。


あたりは満天の星空以外は雲の上で何も見えない。機上レーダーも300mile先の街をくらった―として映しているが、それ以外は何も映っていない。


高度計カーソルがはチカチカ点灯し、FFT1272は今ようやく35,000feetに到達した。

(この文ではさらに長いようだが大体20分-30分で巡航高度に入っていることが多い)ラストの3000feetはヒーヒー言いながら上昇してきた。


CRJや他の旧型JET機やターボプロップ、そのほとんどの固定翼機において、巡行に入ったらPILOTはパワーレバーを巡行に適した位置に戻し、パワーが減る分、若干AOAを増して、トリムを取り、ようやく巡行高度で巡行を始めるが、エアバス社の318-319-320-321-330-340-350-380などの現行すべての機体やボーイング社のB777、B787、はVNAV+オートトリム+フルフライバイワイヤなので、何もしなくてもパワーも姿勢もトリムもコンピューターがやってくれる。


エアバスやボーイングでも旧型のA300、A310、B737,B747などはフライバイワイヤではない。


B757/B767はどうなんだろうか?たぶんCRJなどと同じ世代の機体なので、セミフライバイワイヤだろうか? だが、まぁ すべてマニュアルだろうと、軽飛行機-ターボプロップ-JET-旅客機とここまで上がってきた操縦士は経験が最低でも10年ほどはある。なので別にシステムがオートでなくてもドーってことはない、Mのように1トリップ中フライト一回はクルーズフェイズ以外はフルマニュアルで飛ぶ変態もいる。


ようやくクルーズに入るとMはクルーズチェックに入る。 ECAM画面のエンジン、ブリード、油圧、操舵、キャビン気圧、ドア、タイヤ、ブレーキ温度、電気系(AC/DC バス)などをすべて確認して、 左席、スタンバイ、右席三つの高度計の誤差を確認する。 誤差が大きくなる上空でもその差が100feet以上なら、整備に連絡したほうが良い。そうしてすべての確認を終えると、完全なリラックスタイムになる。


J隊機ならここで索敵時間になるのだろうが。。。。民間機は他機が近づけば、まずATCセンターが続いてTCASがその接近を教えてくれる。もちろん、くつろぎながらも基本はECAMやレーダーには目を光らせてはいるが、、、、


JやMはここで、新聞を広げたり、雑誌を読み始めたり、スナックを広げて食べ始めたりしながら、雑談を始める、トピックは大抵、趣味の話や家族、子供、恋人、仕事関係の話が多い。エアラインPILOTの趣味はバイク、車、釣り、狩猟、ボート、山登り、軽飛行機などが多い。 軽飛行機はヘリや、カブなど、旅客機では普段到底できない芸当をこなす機体に乗りたがる。もちろん エアロバティクスな機体、エクストラやピッツを持っているお金持ちPILOTもいる。


Mは当然、釣り、車、狩猟、そしてご無沙汰しているがバイクである。

Jなら、やはり車、そして息子と遊ぶ、MS WINのフライトシミュレーターの話。

最近のシムは物凄くて、彼の息子は私たちのFFT1272のフライトをインターネットからダウンロードして、リアルタイムで、コンピューター上で再現しながら一緒に飛べるのだそうだ。。。。末恐ろしい世の中、私がこうして毎日飛んでいる状況が、全米のエアラインマニアに毎日見られて、興奮されているのである。なんだかHな女優さんもこんな気分なんだろうか?(笑


Mはスターゲイジングを楽しみながら、そんな話をし、「今夜の夜食、チキンサラダ420KCAL」を食べる。


挿絵(By みてみん)


エアバスはフル フライバイ ワイヤ サイド ステック方式なので正副操縦士の前には大きな収納式のテーブルがある。


MもJもガシャーッとテーブルを前にひきだし、各々の食事を乗せる。


このテーブルはどのくらいの重さまで耐えられるかと言う質問を入社後の訓練時に試験官からされた時、Mは「可愛くてきれいでスレンダーな フライトアテンダント 一人分の体重、体重の重いおばさんが乗ると自動的に壊れます」と答えたら、試験官は「お前、、、、絶対国家試験合格」とお墨付きを盛らもらった。


今日のアライバルは BENKY4だ朝の時間のトラフィックや風向きにもよるが、西風ならおそらく中型のB757やA321から上はRWY28Center B737やA320 そしてCRJやERJは27L、 小型機やビジネスJETもしくは北側通路からの機体は27Rに振られるはずだ。


(アライバル アプローチ 編へ続く)

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