虚しさ
彩雲の浮ぶは
万華鏡が如き
不定の 美しき
孤蝶の堕つ
湖面が細波、
その静けさや
幻影の翼にて
劫初、劫末、
蒼の誘う方へと
積んだ金や
踠く命もまた
水石が泡なり
遍く風となり
砕葉より月へ
陶酔のおかしさ
彩雲あるは
うすき網膜、
この虚しさや
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後書き
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孤蝶:読みは「こちょう」。連れのない一つの蝶。
劫初:読みは「ごうしょ」。この世のはじめ。
劫末:読みは「ごうまつ」。この世の終わり。
水石:読みは「すいせき」。水と石。
砕葉:Suyab. スイアブ。詩仙李白の故郷と言われる。現在のキルギスにある。
僕は確信した。やはり西脇順三郎氏は偉大だ。