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21『奴隷オークション』

前回の話を更新した際、一人の友人から猛抗議を受けました。どうしてだろう。

 時はアイシャの買値が決まった少し前へと遡る。人材派遣商会ジャニュア中央支部の本当の顔である奴隷商会セグレート、そのオークション会場は人で埋め尽くされていた。その全てがジャニュアの貴族や富裕層、そしてジャニュアの外からやってきた商人で、使用人や行商の手伝いを探すという名目でやって来る者が殆どである。

 フューダル家の一人息子エザルタは座席に深く腰掛け、今か今かと始まりの時を待ちわびていた。

 6年の歳月と多額の資金を費やし、ようやくアイシャを自分の物にする事が出来る所まで来たのだ。


 両親と共に中央区にやって来ていたアイシャを一目見て以来エザルタはずっとアイシャに惹かれ、どんな手を使ってでも自分の手の中に収めたい、そんな強い衝動に駆られた。

 邪魔だった両親を排除し、引き取った親戚を裏で操りアイシャを一人取り残してどこかへ消えるよう指示。

 身寄りを無くしたアイシャが職探しをする事を見越し、立ち寄るであろう地区の全ての施設を手持ちの資金を利用して働かせないよう話を通した。全てはセグレートと提携して、アイシャを奴隷オークションに出品させる為だ。

 何の特徴もない少女一人に興味を持つ者はそうはいない。ましてやまだ年齢は15歳、使用人にするには若すぎるし雑用やらを押し付けるには力が無い。愛玩道具として利用する事はあるかもしれないが、それも直ぐに壊れて使い物にならなくなるだろう。

 金をいくらでも積み上げて確実にアイシャを買い取れるようにしたいエザルタだったが、ただの少女に多額の金を掛けてしまえば他の連中がいらぬ興味を持ってしまうかもしれない。

 そうエザルタが考えた結果用意した資金は250万ゴル、最低価格が100万から始まる奴隷オークションで少女一人を買い取るには充分過ぎる額だ。


 オークション会場の照明が暗転し、中央舞台がライトアップされる。

「ご来場の皆様大変長らくお待たせしました、これより始まりますは皆様が公然と所持する事が叶わなくなった奴隷のオークションにございます。

 本日は人間を始め獣人やオーク等の様々な種族の奴隷を御用意しております、それでは早速始めていきましょう! 最初の奴隷は……」

 現れた司会進行役の男によってオークションの開催が宣言され、会場が拍手の渦に包み込まれた。

 一人、また一人と奴隷が紹介される度、白熱した金の積み合いが起きた。

 エザルタはそんな会場の様子を気にも留めず、ただ一人の奴隷が紹介されるのを待った。


 そして━

「さあ、続いての商品はうら若き少女の奴隷です! 今はまだ全てが未熟ですが、将来を見越して調教してみるのも一興と言うものでしょう! さあ、では100万ゴルからスタートです!」

━来た。この時が。中央舞台には拘束され、眠っているアイシャが椅子に座らされている。

「あれは……僕の物だ……!」

 気が付けば、エザルタは誰にも聞こえない小さな声でそう呟いていた。膝に置いていた拳を強く握りしめ、大きく深呼吸する。

「101万」

「102万」

「120万」

 徐々に金額が吊り上がって行く。

「250万!」

 エザルタは興奮気味に自身の用意した金額を宣言した。

「250万が出ました! さあ、他にいませんか?」

 司会進行の熱狂的な声とは裏腹に会場は静まり返っていた。そこにいる全ての者がエザルタが裏で糸を引いて用意したのだと察したからである。

「……どうやら、いないようですね!」

 司会進行がこの言葉を放ったと言う事は、買値と買取者がほぼ確定したと事になる。

 エザルタは笑みを抑えきれずにいた。

「ああ……長かった、遂にあの子が僕の者になる……!」

 父上にばれぬよう、あの手この手で金を工面してもらい、何十、何百と言う人間を利用し、6年を経てようやく自分の物となる。

 手に入った暁には何をしようか。まずは逆らえぬように徹底的に体に刻みこませ━

「1000万」

「いっ、1000万ゴルが出ました!! 他にはいませんか!!」

 次は一日を使ってたっぷりと愛してやろう、それから━

「い、いないようですのでこれにて終了とします!」

 エザルタが妄想を膨らませている間に、落札が完了したようだ。今一度、深呼吸して勝利の瞬間を待った。

「では、この奴隷の少女は1000万ゴルであちらの方が落札されました!」

 衝撃の言葉がエザルタの耳を襲った。1000万なんて金額は出していない。司会進行の男が指す方見る。

 襟の長いコートを身に付け、帽子を深く被った顔の全く見えない者が立っている。

「何が……起きているんだ……!」

 落札者と、いつの間にか目覚めて顔をひどく青ざめさせたアイシャの両方を交互に見る。自分が落札したのではない事を改めて自覚したエザルタは頭が真っ白になった。

 エザルタの意識が再びはっきりした時には、奴隷オークションは幕を下ろしていた。

次回更新も早い内に行えるよう全力で頑張ります。


最近ちょっと呟いている作者Twitter↓

@GS70_freedom

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