19『ルドルフ、感づく』
一ヶ月ぶりです。
次の日、ルドルフは自身の部屋で読書をしていた。読書とは言ったが実際は他の考え事をしていて本の内容なぞ頭の中には一切入っていなかった。
アイシャが紹介されたジャニュア中部で行われるらしい仕事とは一体何なのか、紹介して来た者が人間だったからと言って信用できるのか。
「……考え過ぎか」
本を閉じ、窓の外を見る。気が付けば空は赤み掛かっており、時期に夜が来る事を知らせる。
そろそろ夕飯の準備をしなければならないとルドルフが立ち上がった時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「どうした? 今から飯の準備をしようと思ってたンだが……」
「いえ、ご飯じゃなくて今からお仕事の研修なので部屋を空ける事を言いたかったんです」
ドアを開けたルドルフはアイシャから発せられた言葉に、ドアノブを握ったまま固まった。
「ど、どうしましたか?」
「いや、何でもねェよ。 じゃあ飯は向こうで食って来るのか?」
アイシャに心配そうに声を掛けられた事にルドルフは慌てた様子で返した。
「終わるのがいつになるかも分からないですし……それでお願いします。 じゃあ、私行かなきゃいけないのでこれで失礼します!」
「あ、おい待っ……」
ルドルフが引き止めるよりも先に、アイシャは部屋を後にしてしまった。後を追いかけて外に出たが、既にデュークの馬車に乗って出発する所だった。
「参ったな、今から始まる中部の仕事って言ったら……」
険しい表情で自室に戻り、本棚から一冊の本を取り出して、ペラペラと激しくページを捲っていく。
そして、とあるページで捲る手を止め、じっとそこに記された文章を黙読した。
「やはりか、あいつはそれを分かっていないンだろうな……とにかく急がねェと」
手に持っていた本開かれたページそのままに投げ捨て、ルドルフは大急ぎで支度を行い、部屋を出た。
投げ捨てられた本の表題は『ジャニュア全地区踏破』、ジャニュアの全ての地区に関する事が事細かに書かれている本である。
『ジャニュア中部は貴族層が多く住み、貴族や富裕層に向けた高級品を取り揃えた商店の並ぶ地区である。その一方、奴隷商売や危険物の取引等、現在は法律によって禁じられた行為も行われていると言われている』
そう書かれた本の一部分だけが、ルドルフの部屋の窓から差し込む夕日で強調されているかのように照らされていた。
今回は短めですが、次回以降はもっと長くなるかもです、いや長くしたいです。
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@GS70_freedom