13『フィーピューアその2』
かなり詰まってました。あと厚いです。
「ささ、この中に入って」
パトラがアイシャの背中をポンポンと叩いて、更衣室へ入るように促す。
「さあ覚悟しなさいな、色んな服を試すわよ~、腕がなるわ~」
アイシャを更衣室へ入れるだけ入れて、パトラは袖を捲って意気揚々と服を選び始めた。
「うーん……これでもないわね~」
「あの……ま、まだ他にありますか?」
パトラが服を選び始めて一時間が経とうとしている。派手にフリル等をこさえた物から露出が多い物まで、着せ替え人形の様にアイシャは次から次へと服を試着していた。
「違うわね~、これでもないわ~」
唸り声を上げるパトラ。見る者によっては何か力を溜めているのではないかと錯覚しそうな声である。
「何だかすみません、こんなに悩ませてしまって」
視線を下げて、アイシャはぼそりと呟いた。ここまで決められないのは、アイシャ自身が衣服の事について分からない、と発言したのが大きな原因である事だと、アイシャは自覚していた。
「あら、アタシが好きで悩んでいるんだからアナタが気負う事なんて何も無いのよ」
「で、でも……」
先を言おうとした所で、アイシャの唇にパトラの人差し指が重ねられた。
「自分なんて……みたいな事言おうとしてるでしょ、ダメよ過小評価なんて」
「う……すみません……」
言おうとした事を当てられたからか、アイシャは更に縮こまってしまった。
「そうねぇ、やり方を変えてみましょうか!」
重くなってしまった空気を壊す様に、パトラは大きな声でそう言った。
「変えるって……どんな風にですか?」
アイシャも顔を上げて聞き返す。
「今からアナタに軽く質問するの、その答えからアナタに似合う服のイメージを確定させようと思うの」
「な、なるほど?」
パトラの言った事を、アイシャはあまり理解していない様であったが、パトラを信じ頷いた。
「それじゃ早速聞いていくわね、まず歳はいくつかしら?」
「15歳になります」
「あら若いわね、いいわぁ~若さはイメージの結びつきに大きく近づくわねぇ~」
ジェントルでのルドルフとのやり取りを、再度している様にアイシャは感じた。
「あっ、あのそう言えば私一つ、その……服の事であるんです」
昨日のやり取りと重なったアイシャは、はっと思い出した様に口を開いた。
「あら、何かしら」
「その……出来るだけ、お金が掛からない服がいいんです」
「いいけど……一応理由を聞かせてもらえるかしら?」
「私のお金じゃないので……あまり使いたくないんです」
自身の指を絡めて、小さな声でアイシャは言葉を続ける。
「身の回りをしっかり整えろって言われてかなりの額を手渡されたんです、でも申し訳なくて……せめて1ゴルでも多く余らせて、返したいんです……!」
自身の両手を握りしめ、アイシャは静かに力強く言った。
「うん……うん! よし、固まったわ!」
何度も何度も頷いて、パトラは元気よくそう言う。
「か、固まった?」
「アナタに似合いそうな服よ! ゴメンネ、もう少し時間貰うわ!」
そう言って、パトラはアイシャを更衣室に残し店内へと急ぎ足で駆けて行った。
ろくな知識も無いのにこういう話を作ろうとするから時間が掛かりました。
次回更新もまた間が空くかと思います。