11『デュラハンと少女の一時』
最近ブックマーク増えてちょっとうれしいです。
馬の道を駆ける音のみが、馬車の中に軽快に鳴り響く。窓の外の景色が右から左へと、凄まじい速さで流れて行く。
その割には馬車がガタガタと激しく揺れる様な事も無く、ジャニュアの出入り門へ到着した。
アイシャの乗せた馬車が停まったのは、ジャニュアの出入り門の左側に設置された停留所で、他に数台の馬車が停まっている。
馬車から降りたアイシャは、デュークがこちらを向いて何かジェスチャーをしている事に気付いた。
「えっと……何か?」
アイシャの問い掛けに対して、デュークは馬車や地面を指したりとあたふたしている。
「ブルゥ!」
あまりに事が進まないのに見かねたのか、デュークの馬車を引く馬がデュークに鼻を鳴らした。口で器用に紙とペンを持っている。
デュークは拳でもう一方の手の平を叩いて紙とペンを受け取ると、スラスラと何かを書き綴り、アイシャにその紙を見せた。
『往復分の運賃をルドルフ様より頂いております、日が沈み始める夕刻より、こちらで待機しております。 それ以降にお越し下さい』
「わ、分かりました。 ありがとうございます」
感謝を述べたアイシャは、ジャニュアの門へと向かって行く。
「……いってらっしゃいませ」
ぼそりと、若い青年男性の声がアイシャの耳に届き、後ろを向いた。そこには先程と変わらず、馬車達とデュークがいるだけだ。
「……デュークさん、喋れたんですか?」
「はい、首が無い関係上せっかく利用してくれようとしてくださったお客様も、話し始めた途端に皆逃げてしまうのでお見送りの際だけ、声を出すと決めていたのです」
肩をすくめるデューク。
「そう……だったんですね」
「恐ろしいですか?」
「いえ、もう……慣れちゃいました」
何度衝撃的な出来事を体験して来たアイシャには、デュークが声を出す程度では今更驚かない様だ。
「ははは、初めてです……そんな事を言ってくださった方は」
デュークに顔は無い、それなのに照れ臭そうに笑う表情がアイシャには見えた気がした。
「改めて、いってらっしゃいませ」
「はい、行ってきます」
アイシャは深く一礼すると、今度こそジャニュアの中へと入っていった。
やっと入りましたよ!!ええ!!
ところでサブタイトルがまた別の一作品みたいですよね今回。
特に派生作品になるわけではありませんが
次回はアイシャちゃんのお買い物になる筈です。