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理論武装とオカルト少女  作者: ちかーの
6/10

少女の過去

私の名前は、真冬。雪ノ原、真冬。


まだ小さくて、周りに友達がいた頃はよく、寒そうな名前だねと言われた。


この頃はその言葉が褒められてるのかけなされてるのかよくわからず、ただ戸惑っていた。


今やその言葉を聞くどころか、私の名前を知っている人さえ余りいない。


誰かが私をこう呼んだ。


「オカルト少女」と。


たちまちその呼び名が広まったのは、きっと、お父さんとお母さんがつけてくれた真冬という名前より、私に合っていたからだ。


また、こういった特異な体質のせいで、一部の人達からは迷惑なほど信仰されている。


曰く、神に愛された少女、だそうだ。


思わず乾いた笑みがこぼれた。


愛された?的外れもいいところ。呪われたと言われた方が全然しっくりくる。


5年前、お母さんが死んだ時から、私に関わった人達はみんな不幸になっていった。


最初はお父さんだった。


お母さんがいなくなって二人で過ごしていたから、誰よりも早く私の異変に気付いた。


そして、「きっと、母さんからの贈り物だよ」と、優しく言ってくれた。


私も、きっとそうだと、私の中でお母さんは生きてると思えた。


結果、お父さんはギャンブル依存となった。


賭け金は私がいればどうにでも出来るし、私が賭ければ必勝だったからだ。


この時から、私の噂が広まり始めた。


莫大なお金が手に入った。その代わりに、優しかったお父さんは、私に毎日暴力を振るうようになった。


きっと、頭がおかしくなったのだろう。とてもまともな思考が出来てるとは思えなかった。


数日後、お父さんは捕まって、私は親戚の家に住まわせて貰うことになった。


殴られないだけで、随分ましになったが、今度はこの家の主が私にお金をせびってきた。


私の噂はどんどん広がっていて、この家にも届いていたのだ。


私は言われるがままに宝クジを引いて、一等を当てた。


家の人達は狂ったように叫んで、近所にこのことを言いふらした。


結果、強盗殺人に遭い、私以外の全員が殺された。


それから暫くは施設で生活して、高校に入ると同時にボロボロのアパートの一室を一生懸命バイトして貯めたお金で借りた。


保証人とか諸々の細かいことは施設の、面倒を見てくれた人がやってくれた。


私はもうこんな力を使いたくない。いや、使ってはいけない。


高校に通いながら家賃を払うのは大変だけど、頑張るって決めた。


頑張ってお金を貯めて、勉強して、そして保育士になるのが私の夢。


夢、ゆめ、湯目。


はっ!チャイムの音で目を覚ました。


寝ちゃってたか。こんな時間だ。いそいそと長机の上の本を鞄に入れる。


ここは部員2名。文芸部の部室だ。


時刻は午後六時を回っている。急ぐ必要はないが、モタモタしてバイトに遅れたらことだ。


さっさと部室から出て校門をくぐった。


学校から歩いて数分、私の通学路はこの公園を通る。


そこそこの広さを持っていて、大きな桜の木が何本も植えられている。


随分散ってしまった桜を見ながら歩いていると、周りより少しだけ大きな木の下で、遠目に見ても意気消沈した寂しい背中の、同じ高校の制服を着た男子生徒が目に止まった。


どうしたんだろう。


話しかけたいけど、私が話しかけても。


そんなことを思いながら一人で勝手に沈んでいると、不意に前から声を掛けられた。


ビックリしてひゃっ、という声が出た。


声のした方を見ると、サラリーマンのおじさんが立っていて、少し警戒した。


不審者とかだったらどうしよう。


周りに助けを求めても、誰も助けてくれないかもしれない。


「な、なんですか?」


緊張して要件を促す。


するとサラリーマンのおじさんは、手に持っていた片方だけのスニーカーを(緊張の余り気が付かなかった)私に差し出して、


「あそこの少年のだ。届けてやってくれないか?」


と言った。


拍子抜けした私は、そのまま靴を受け取ってしまい、


「じゃあ、頼んだよ」


あ、おじさん行っちゃった。


仕方がないから男子生徒の様子を伺うと、なるほど靴を履いてない。


しかも何故か両方。


そもそも何故あのおじさんがこの人の靴を持っていたのも不可解だが、この際スルーだ。


きっとうちの高校の生徒なら、私のことを知っている。


ある程度の反応を覚悟して、男子生徒にはなしかけた。


「あの、どうしたんですか?」







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