ソラの家庭事情
家に着いたから隼人と別れた。
あの話の後、あいつとはちょっとした言い合いになった。俺は全然キレてないのに「ほら怒った!」ってうるさかった。だから俺は全然怒ってないんだよ!あー、イライラする。
家に入るとき、一応ただいまと声を出す。当然、返事はない。
父さんがいることはいるが、恐らく研究に没頭しているのだろう。.....オカルトの。
そんなことを研究しても、なんの成果もあげられる筈もなく、実質ニートだ。
いや、資料映像などを取り寄せるために金を使う分、ニートよりもタチが悪い。
こんな父親でも、5年前にあの事件が起きるまでは、俺の誇りだったんだ。尊敬していた。
5年前までは大学の教授として、様々な分野での研究によって、数多くの賞を受賞していた。
たくさんの偉い人達が、父さんのことは一目置いていた。その道を進む者なら知らない人はいないほどだった。
憧れた。
いつか俺も、父さんと同じ研究室で肩を並べて、徹夜で試行錯誤するのが、俺の夢だった。
そんな父さんを狂わせたのは、たった一瞬の出来事だった。
5年前、母さんが親戚の結婚式に出るために朝から出かけていた日だ。
遅くなるから晩飯は二人で食べといてと言われたから、父さんが頼んだピザを二人でたいらげていたら。
不意に、母さんの声が聞こえた気がして顔をあげた。すると父さんも同じく顔をあげていて、二人で見つめ合う形となった。
思わず二人とも吹き出して、気のせいだろうと食事を続けた。
それから数時間後、母さんが交通事故で死んだという電話が掛かってきた。
そして、現在。父さんはオカルトに狂っている。