モテるバスケ部と理想の文芸部
入学式を終えて一週間が過ぎた。
俺の周りではこれといった事件もなく、平穏だったと言えるだろう。
しかし、隼人の奴は早速やらかしていいたが。
入学式が終わって三日後、俺と一緒に登校しなかった隼人は、校門から教室までの簡単な道を迷いに迷い、なんとか放送室を探し当て、迷子の放送を頼んだとか。
一連の流れに突っ込みどころがありすぎる......。
まず迷うなよ!そして放送室を探すなら教室を探す方が簡単だろ!迷子の放送にいたってはノーコメントで!
と、まぁ、この高校でも伝説になりそうな程のアホっぷりだ。
伝説の男。わぉ、字面にすればかっこいい。
ともあれ、隼人の暴走と担任の女教師が若干面倒そうなことを除けば、平穏な一週間だったということだ。
今日もHRを終えて、帰りの支度をしていると隼人が話しかけてきた。
「ソラっちー、部活決めた?」
「あー、そういえば来週までだったな。」
この高校では部活動への入部は強制であるため、二週間以内にどこかしらへの入部を決めなくてはならない。
「お前はどーするんだ?」
「俺?バスケ部!」
「隼人、バスケ出来たっけ?」
「え、全然できねーよ?でも入ったらモテそうだと思う」
......マジか。モテそうだからってこんな簡単に自分の知らない世界にダイブするのか。まさかここまでのアホだったとは...。いや知ってたな。そんくらいのアホだったわ。うん。「でも、バスケって素人には難しいんじゃないか?」
「そこは持ち前の明るさでカバー!」
カバー出来るのかよ。持ち前の明るさすげえな。どんだけ持ってるんだよ。......いや、これも知ってるな。こいつくらい明るかったらそりゃカバーも出来るわ。うん。
荷物も鞄の中に詰め終わり、二人並んで教室を出る。
下駄箱までの最短距離は教室を出て左なのだが、一瞬右に行こうとした隼人は、なに食わぬ顔で誤魔化そうとしていた。いい加減覚えろよ。
校門をくぐった後も部活動の会話は続いた。
「部活どーすっかなぁ」
「ソラちはどんな部活がいいの?」
「そうだなぁ」
どんな部活、と言われてもだ。中学の時も帰宅部。高校でもこんな規則が無かったら入る気なんてさらさらなかったのだ。ピンとこない。
「なるべく活発じゃなく、顧問の教師もテキトーで部員が少なく、幽霊部員になっても誰も文句を言わない、そんな部活、隼人知らないか?」
「やる気ゼロだねっ!なんだか爽やかに見えてくるよ!」
隼人の言葉をどーもと言って受け流す。すると隼人は顎に手をやり、さらにコメカミをひとさしで叩くというダブルコンボで記憶を辿っていた。
「.....確か、文芸部?だったかな。ソラっちの条件にぴったりだったと思うよ」
「ほう、文芸部か」
「うん。でもその部活、なんか変な噂がたってて.....」
「噂?どんな?」
「あーっと、えっと、その.....」
ここにきて隼人の歯切れが悪くなる 。
「なんの噂かって聞いてるんだよ」
「いや、でも、これ言ったらソラち怒るし」「は?怒んねーよ。ホラ言ってみろ」
「ホントに?」「ホントに」「絶対?」「絶対!」「誓って?」「殺すぞ、コラ」「こわっ!ソラっち怖っ!」
おっと、ついイライラして暴言が出てしまった。
しかし、ここまで引っ張られるとやはり気になってくる。
「ほら、言ってみろ」
「えーっと、オカルト少女って知ってる?」
「.....ぁあ?」
「ひぃっ!」