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belief   作者: 杜守 幻鬼
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~幕間・一~ 夢―儚きモノ―

第一章でやめにしようと思いましたが、折角なので俺は茨の道を選ぶぜ!

というわけでちぃとばかし更新です。でも今後は気力次第です…

 「そういえば、ねえ、シン」

 「なんだ」

 北の砂漠へと向かう途中、黙ることを知らない男はまた口を開く。その背には、疲れきった少年が眠っていた。

 「これから長い付き合いになるんだからさ、教えてよ。名前」

 「……何を馴れ馴れしい事を」

 ジズは『シン』が偽名であることは分かっていたし、シンもジズが分かっていることを分かっていた。

 「つれないねえ。俺は本名なのに」

 「我は……捨てたのだ。あまりに馬鹿馬鹿しいからな」

 「へえ、そんな名前なの?ね、教えてよ。俺、知っておきたいな」

 シンは足を止め、振り返る。

 「……お前にしてはしつこいな」

 いつもしつこいといえばしつこいのだが、こういった個人的な事についてストレートに食い下がるのは初めてだ。

 「そ。俺、仲良くなりそうな人たちの事はよく覚えておきたいんだ」

 にこにこ。何の屈託も無い笑顔で、この男は笑う。……その顔を見て直感した。隠せば隠すだけ時間と体力の無駄だろう、と。

 大きく溜め息をついて、口を開く。

 「分かった、教えよう。……だが、今まで通り呼んでくれ」

 「うんうん」

 嬉しそうにジズは頷く。

 「……アリア」

 「へえ~!!可愛い!」

 そう言った瞬間、目にも止まらぬ速さで頭をはたかれた。あまりの速さに一瞬状況を把握しかねたジズだったが、相手は顔を背けて歩きつづける。照れ隠しのつもりだったのだろうか……

 「意味は?馬鹿馬鹿しいって言ってたけど」

 「……我が一族の、遥かいにしえの言葉で……『聖歌』を、神に捧げる歌を意味する」

 「へえ……」

 それは確かに、今の彼女には似合わない。

 「アリア、ねえ……」

 「忘れろ」

 「はいはい……って、あれ?」

 ぴた、とそこで彼の足は止まる。

 「どうした?」

 「あ……いや、何でもない……」

 そうか、といって再び歩き出す彼女の背を見ながら、ジズは明らかにうろたえていた。

 (いや……まさか、ね?でも……いや、ねえ?)

 彼は十年程前、シンの一族に逢っている。とある辺境の街だ。旅人たちには伝説とまで云われる民族なのだが、それ故にそうやって普通の街に紛れてしまうと、大抵の旅人にはまさかその「伝説」であるとは思われず、民族の存在すら知らない街の者には、ただ「物凄く珍しい色彩をもつ民族」としか思われていないようであった。だが、「面白そうなもの」を彼が見逃すハズがない。

 そこに居たのは、美しい織物を売りに来ていた家族。二十二、三に見えるが実際は分からない両親と六、七歳くらいの娘。並んでいるだけでとても絵になる美しい家族で、織物を買う余裕も無いのに思わず近寄ってしまった。娘は長く美しい銀髪を母親に梳いてもらっていたが、ジズと目が合うとにっこりと笑い、母親のひざからぴょんと抜け出して彼に近寄った。

 『お兄ちゃん、珍しい髪とお目目』

 君たちの方がよっぽど、とは思うが「そうかい?」と応えた。

 『うん!とても綺麗』

 そしてまたにっこりと笑う。そういう趣味はないのに見ているとくらくらしてしまいそうなほど娘は愛らしかった。人懐っこいし、連れ去られてしまうのではないかと要らない心配までしてしまう。これまた美しい両親はにこにこと娘を見守っていた。

 結局、その家族と色々とおしゃべりをし、思わずなけなしの金をはたいて極小さい織物を買ってしまったのだが、帰り際、娘はとても寂しそうな顔をして彼の服の裾を引っ張った。

 『もう行っちゃうの?』

 『君みたいな可愛い子にそんな事言われると、お兄ちゃんどこにも行けなくなっちゃうなあ』

 娘は恥ずかしそうに笑うと、大人しく父親に抱き上げられた。

 『ねえ、お兄ちゃん。お名前は?』 

 『ジズ・ムラサメ。君は?』

 そして娘は輝くような笑顔で応えた。

 『我はね、アリアっていうの』


 「うっそだぁ~……」

 思わず呟くジズに、前を歩く娘は振り向いた。

 「どうした?何が嘘なんだ?」

 その厳しい顔にあの少女の愛くるしい面影は……微かにあるか?いや、どうだ?

 「……ど、どうした?」

 思わず近寄ってしげしげと見つめるジズからあとずさった相手の様子も気にならず、彼はまだ考える。

 (いや、ただ同名ってだけだろ……だって……)

 そして思わず口にする。

 「夢を壊さないで欲しいもん」

 「は?」

 

 暫くして、三人は小屋を見つけた。この大陸には、あちこちにこういった旅人のための休憩場所がある。中を見ると誰も居なかったので、占領することにした。簡易なベッドが二つ、置かれている。そこで目を覚ましたリディウスが「すいません!僕が見張りますからお二人は休んで下さい!!」と申し出たので、二人はそれに甘んじることにした。

 幸せそうな寝顔を見せる男を横目に、シンはぼんやりと考える。

 (しかし……ムラサメ、か……)

 酒場で出逢った時から引っ掛かっていたのだが。

 (……何故かな。いつか何処かで聞いたことがあるような……)


 ジズの「夢」は、実は崩壊していたのだった。


幕間・一~了~

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