表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
belief   作者: 杜守 幻鬼
1/46

~序章~その名は、はじまり

 娘は雨の中、天を仰いだ。焼け焦げた、家だったものの上に跪き、啼きながら天を仰いだ。

 「報いか!これが、報いなのか!!」

 血を吐くように、娘は天に向かって吼えた。その腕から、炭と化した幼い弟が崩れ落ちていく。

 「応えよ!応えよ、天よ!!」

 しかし天は何も応えない。ただ、雨が娘の体を打つのみだ。

 「……応えよ……こた、え……」

 そして娘は再び、天に吼えた。一族で一番美しいと称えられた銀の長い髪が焼け跡を掃く。口から迸るのは、痛々しく、しかし雄雄しい叫びだった―――


 男は人生何度目かの窮地に陥っていた。

 「どうしてくれるんだ?色男さんよ」

 いかにもガラの悪いごろつきといった風情の男たちが、いかにも……な台詞を吐いて彼に迫っている。その手に酒でもあれば粋だったのだが、どうにも無粋だ。刃物はいただけない。

 だが男は、やるべき事を知っていた。

 「どうって……そうだなあ」

 愛想良く笑いながら、男は腰に留めていた鞭を取り出す。

 「やるか!?」

 無粋ものたちが色めき立つが、男は優雅に首を振った。

 「違うな。それじゃ40点だ」

 そして目も覚めるような一振りを放つ。そのしなやかな革の触手が捕らえたのは、身体を強張らせる男たち……ではなく、その頭上に伸びる木の枝だった。

 「じゃあ、そういう事で!」

 そして男は勢い良く跳んだ。男たちの頭上を飛び越え、一瞬後にはまた別の木の枝に飛び移っている。下で男たちが口々に叫ぶが、「待て」と言われて待ってみるほど冒険好きではない。

 男は何をすればよいか良く知っていた。

 こういう時は、慌てず騒がず逃げるのが一番なのだ。


 少年は神を信じていた。他に祈るものは要らなかった。故に、幼い頃から親元を離れ、大陸一の神学校で学んでいる。この大陸で主流といわれる宗派の、その法王の下で教育を受けながら、少年は心穏やかに過ごしていた。

 全てを知り、全てを与え、全てを守る―――それが、父なる神。大いなる神。世界の創造主。少年はその神に仕える神官を目指して勉強していた。幸せだった。

 そしてその幸せがあまりに強引に奪われた日、その日も少年は何時もの様に教会から帰る途中だった。



 広く大きな世界の中で、三つの運命は出逢う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ