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遠い遠い彼を追いかける

作者: ユカナ

去年の今頃に投稿した駄作の詩が、無事一年消されずに残ったので(基本的に自分で気に入らないやつは消します)、その記念に小説版にしてみました。

勿論これだけでも読めますが、詩もよかったら読んでやってください。

少年は、少女を措いて逝ってしまいます。

そう、少女は今も独りぼっち。



幼い小さな二人の笑い声が空高く響く。


今日も明日もずっと、ずっと君と一緒にいたい。


少女の強い気持ちが少年にも伝わったのでしょう。


少年は振り向き、笑顔で告げる。


「ずっと一緒だよ。」


少女は嬉しさのあまり涙を零しつつ、大きく頷く。


さぁ行こうとばかりに少女は車道へ飛び出す。


これからの二人の人生に期待を込めて。


突然曲がってきたトラックがぐんぐんスピードをあげて突っ込んでくる。


ダメだ、このままじゃ死んじゃう。


そう脳裏に浮かんだ頃には足がすくんで動けなくなっていた。


「―……!」


少年が何かを叫んだが聞こえない。


もうダメだ。


そう思った時、強い衝撃と共に体が宙に浮く。


あぁ、もう死ぬんだ。


あれ。


死ぬのってこんなに痛みを感じるっけ?


目を開けられる。


息ができる。


手足が動かせる。


目を開けると、真っ赤な血だらけになった少年の姿。


美しかった。


顔に傷がなく、手足が少し切り傷ができていた。


彼は生きている。


この状態を見て、誰もがこの少年は生きていると“錯覚”するだろう。


もう少年の息の根は止まっているのに。


もう…2度と少年の目が開くことはないのに。


そのすべてを悟った少女は叫ぶ。


涙を流し、誰かに助けを求めて。


木々が揺れ、小鳥が飛び立ち、風が吹き、空が雲に覆われる。


やがて、少年のお葬式が行われた。


人が死ぬと、沢山の人が集まって、色んな話をする。


「あの子よ、あの子!」


あるおばさんが少女を指さし狂ったように泣き叫ぶ。


「うちの子はあの子を庇って死んだのよ!」


そう。


少女が轢かれそうになったのを、彼は庇った。


おじさんがおばさんの肩をさすりながらなだめる。


「落ち着きなさい、皆さんが驚いているじゃないか。

それに、仕方がなかったんだ。

あのトラックは飲酒運転だったんだよ。

あの子のせいじゃない、運が悪かっただけなんだ。」


少女はいても立ってもいられなくなり、逃げ出した。


それから数年後。


少女は幾多の手段を使い屋上の鍵を手に入れた。


向かい風が、少女を校舎の方へ押し戻そうとする。


でも、そんなことはどうでもいい。


少女は風などお構いなしに、フェンスを楽に乗り越える。


少女は、少年のいない世界など生きている価値などないと気づいた。


やっと見つけたんだ。


少年との約束を果たす方法を。


ふと、あの頃の少年を思い出す。


何も出来ないまま、この世から去ってしまった。


早過ぎる死。


2度と開かないと分かってはいたものの、どうしようもなく流し続けた大量の涙。


ダメ、思い出しちゃ。


少女は小さく呟く。


「待ってて。

今行くからね。」







“ずっと一緒だよ。”

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