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FANCY NOVELS  作者: ハゲゼビア
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ATTACK FROM THE UNKNOWN REGION:THE AGENTS#1

 2人の工作員は襲撃下にあるニューヨークで密かに侵略者達の動向を探っていた。彼らの内一人がテレパシー能力で異星人の精神を覗き込むと、この激烈な攻撃さえ何かの陽動である事が判明し…。

登場人物

―ダグラス・カイル・マン…CIAから派遣された対超常事件の要員、軽度のテレパシー能力を持つヴァリアントの大男。

―ブライアン・ジェイコブ・マクソン…同上、カイルの戦友。

―Mr.グレイ/モードレッド…ネイバーフッズのリーダー。



1975年4月末、襲撃開始直後:ニューヨーク州、マンハッタン、ミッドタウン


「さてと。相棒、これからどうする?」

 禿頭の男は筋骨隆々という言葉通りであった。まさについ先日岩から削り出したかのような、あるいはつい先程木材加工所から仕入れたラワンのような強健さがあった。丸太のように太い腕が体にフィットする黒い半袖のシャツの袖から生えており、シャツの上に付けているごちゃごちゃとしたベストやハーネス類越しにさえ、彼の立派な体躯が見てとれた。

「どうもこうもねぇって」と彼の相棒は言った。禿頭の男程ではないにせよ、灰色がかった黒髪の男も背が高く、そして雑誌のモデルのような鍛えられた肉体を持っていた。

「なんだよそれ。しかしこの戦いじゃこの前みたいに大勢アメリカ国民や外国人が殺されるかも知れねぇな。裏でこそこそ色々やってる俺達が言えた義理じゃねぇが、やっぱムカつくぜそういうの」

 鋭い目付きで眉間に皺を寄せた禿頭の男の様子を常人が見れば、例え彼よりも体重が40ポンド重い相手であろうと怯むと思われた。しかも彼らは拳銃を右腰のホルスターに携行し、左胸と左肩にかけて装着されたナイフの鞘と柄は更なる威圧感を放っていた。

「お前もたまにはいい事言うな。とりあえず奴らの動きを監視しなきゃな」

「ああ、あのガンシップは目立つからいいが、地上部隊の監視は面倒だな」彼らは背中に大きく膨らんだ中ぐらいの大きさの黒い軍用リュックをニューヨークにいる工作員から受け取って背負っており、禿頭の男はその中から小型化されたカメラを一つ取り出した。

「こいつの出番か」



数十分後:ニューヨーク州、マンハッタン、ミッドタウン、エンパイア・ステート・ビル


 ガンシップから砲撃が放たれ、地上では激しい銃撃戦が起きていた。時折眼下のビルが砲撃で抉られ、あまりにも喰らい過ぎるとあのままビルが倒壊してしまうのではないかと思われた。何せ、細かい振動や轟音がここまで届くからであり、西海岸や外国の地震多発地域の恐怖が少しはわかるような気がした。しかしそれはそれとして、彼ら2人は手早く任務を終わらせた。周囲を見渡せるこの一際大きな尖塔の最上階に近い所へ持って来たカメラを全て設置した。この小型カメラを作ったインディアンの血を引く男は色々な事に精通しており、そのため今後多発するであろう超常的な国家の危機にも欠かせぬ存在であろうと思われた――今回のようなどうやら部分的には魔術も関わっている事件ならば尚更。テストをしてみたが、10インチのモニターはしっかりカメラが映す映像を見せ、そしてモニターの下部にあるボタンを押すとカメラが切り替わって各方位が見渡せた。画面の右上に表示されている1から8の数字が全8台のカメラに対応しており、それによってどのカメラがどの方位かを確認できた。各方位に2台ずつを配置していた。これで監視はかなり楽になる。

 全方位を見渡せるよう窓の外向けてカメラを設置し、既にどこかへ避難でもしているのか人が疎らになっている上階から降りた。幸い下階のパニックを避けて通る事に成功し、彼らは次の任務へと向かう事ができた。だが一瞬見えた恐怖の形相と凄まじい金切り声は随分と気の滅入るものであった。段々とこの侵略を企てた者達に腹が立ってきた。奴らを少しでも多く殺してやる。



数分後:ニューヨーク州、マンハッタン、ミッドタウン


「畜生、どうやらあのクソシールドを剥がさねぇと勝ち目はねぇな。ブライアン、とりあえず俺はあいつらの心を読むとするぜ」

 彼らはガラスが割れた宝石店の中で身を屈め、通りの様子を窺った。ミッドタウン上空では戦闘機が敵ガンシップを攻撃していたが、効果は見られなかった。そして通りからは乾いた発砲音やプラズマ兵器の奇妙な音が断続的に聴こえていた。青いプラズマが空気を焼きながら通りを一瞬で横切る様はぞっとさせられた。

「頼むぜ、カイル。正直今のところ俺達じゃ手の出しようがねぇし他にやる事がねぇんだ」

 比較的細い方の男であるブライアン・マクソンは顔を少し出して窓から通りをちらりと見ながら、そのように呟いた。見れば敵は小走りで前進を始めていた。先程ビルに登る直前に凄まじい咆哮が響いていたが、あれはなんだったのか。

 それを傍目に、岩のようにがっしりとしたカイル・マンは窓の下でカバーの体勢を取ったまま意識を集中させ、敵の心から『盗聴』しようとした。彼は本人がモードレッド卿に言った通りのヴァリアントであり、そして軽度のテレパシー能力を持っていた。

 その旅路はまるで異国の川か沼に飛び込んだ気分であった。腐った真っ暗な泥の中で藻掻くかのごとく、未知の精神構造と直面した。もしかすると彼は異星人の心へ初めて飛び込んだアメリカ人かも知れなかった。

 弱い種族、攻撃を継続、皆殺しにしろ。大体そのようなイメージが見えた。一方でブライアンはすぐ近くを敵の歩兵が歩いてゆく事を察知し、見えないように見を更に低くした。彼は通常の人間だがカイルとは多くの修羅場を切り抜けて来た。共に苦楽を乗り越えた、人生の友であった。それ故この緊張極まる瞬間に彼が隣にいるのは心強かった。一瞬カイルと目が合った。カイルは汗を垂らしながら、落ち着けと口だけ動かして無言で言った。お前こそ落ち着けよ。カイルはほぼ安全なテレパシーでブライアンに話し掛けなかった辺り、彼もかなり集中するか緊張しているようであった。

 計画は上手く行く。それまでの辛抱だ、奴らを釘付けにしていれば帰れる。禿頭のカイルが異星人の心という泥沼に慣れ、それが綺麗な川に思えてきたその時、何やら不穏な事を読み取った。計画とは?

 ざっとガラスを踏む音が聴こえた。どうやら外側にもガラスの破片が落ちているらしく、歩道を重厚なアーマーを着込んだ敵が歩いた際にその音が鳴った。敵歩兵部隊はすぐそこを歩いたり銃撃しながら走っている。ふとそこで、敵が唸った。足を止めて周囲を窺っている。もしかすると気配を悟られたのかも知れない。

 カイルはその兵士の心へ滑り込んだ。別のポトマック川の中では疑念が渦巻いていた――ここらにも戦闘員か非戦闘員はいないのか、いたら片付けなければ。

 ブライアンは銃を握り締め、カイルもホルスターを上から撫でた。心臓が緊張し切り、喉が乾いた。胃の辺りのむかつきはどうにも抑えがたかったがなんとか耐えた。やがてその敵兵は他の兵士に何やら言われ、それから立ち去った。緊張が解れると、車のクラクションが鳴り続けている事に気が付いた。彼らは顔を見合わせて一息()こうとしたが、その瞬間どこか近くで戦闘機が落下するような凄まじい音が聴こえ、それはすぐさま大爆発に変わった。戦場は地獄めいていた。

『よう、ブライアン』

 テレパシーの無駄使いで彼はブライアンに話し掛けた。

『さっきはかなりヤバかったな。で、どうする?』

『さっきまでの盗み聞きでわかったのは、奴らが市民さえ問答無用で殺すつもりだって事と、奴らが何か企んでるって事だ』

『侵略が企みじゃないのか?』

『そりゃまあな。だがどうやらあいつらはただの陽動みたいなもんらしいぜ。何かヤバい事をするつもりらしい。そこでそいつを阻止すんのが俺達の仕事だな。ひとまず俺はネイバーフッズのリーダーさんと話してみる』

『了解』

 そこでカイルはブライアンとの会話を中断し、先程会ったばかりのMr.グレイへと意識を集中させた。この地に溢れる無数の精神の中から、あの騎士のわかりやすい精神的放射を探した。すると思ったよりすぐに探査で発見でき、そしてその心のドアを叩いた。

『よう、ヒーローさんよ。戦況はどうだ?』

 会見によると卿は伝説的な人物とは言えど、先程の異星人の心よりは遥かに親しみ深い精神構造であった。

『この感じは…さっきの』

 相手はテレパシーにも慣れているらしかった。

『そう、俺だよ俺俺。こっちでも敵を監視してるんだがな。あんたらは今どこに?』

 隣を見るとブライアンはモニターを取り出してビルからの映像を確認していた。音量は無音に設定されており、下界にプラズマの光や燃え盛る火災などが見えた。そして上の方では戦闘機が見えた。先程の轟音は恐らく空軍のF‐106デルタダートが撃墜された時のものだろう。

『私はズカウバ――まあもう一人のウォードだな――と一緒に上空で戦闘中だ』

 卿が何やら痛そうにしているのが精神の動きでわかった。

『そりゃいい、俺達はエンパイア・ステートにカメラを置いてるがあんたらの方がよく街が見渡せそうだ。ところで怪我でもしたのか?』

『さっき油断してガンシップに撃たれた。腕が痺れるみたいだ』

『あんたじゃなけりゃ即死だな。それで何か対策なんかは無いか? このままじゃシールドのせいで一方的に蹂躙されちまう』

『いい考えがあるんだが生憎ズカウバやウォードはテレパシーが通信用に使えなくて、それに通信機器も――』

 グレイははっとした。

『そうか、君なら!』

『お、何か伝言があるなら中継するぜ?』

 まあまあクロスオーバーイベントっぽくなってきたか。

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