NEIGHBORHOODS#7
ネイバーフッズが駆け付けると、マンハッタンに再び地獄めいた混沌が渦巻いていた。彼らは尋常ならざる異星の軍隊との交戦を開始する。
登場人物
ネイバーフッズ
―Mr.グレイ/モードレッド…ネイバーフッズのリーダー。
―ホッピング・ゴリラ…ゴリラと融合して覚醒したエクステンデッド。
―Dr.エクセレント/アダム・チャールズ・バート…謎の天才科学者。
―ウォード・フィリップス/ズカウバ…異星の魔法使いと肉体を共有する強力な魔法使い。
―キャメロン・リード…元CIA工作員。
―レイザー/デイヴィッド・ファン…強力な再生能力を持つヴァリアント。
―メタソルジャー/…ネイバーフッズの新メンバー。
1975年:ニューヨーク州、マンハッタン、ミッドタウン
ネイバーフッズが駆け付けると既に警察が侵略者と交戦であった。敵はこの惑星の大気でも問題が無いのか、顔や腕を露出させている者も見られた――恐らく暑いのだろう。だがよく見れば戦闘中にもアーマーが開いたり閉じたりしているのが見え、いかに高度な技術であるかがよくわかった。既に駆逐艦は大気圏外へと撤退し、貝殻を短くしたような直角貝じみた硬質な外見の対地攻撃用らしきガンシップが2機、上空から地表を睨め付けて砲撃していた。自在に可動する触腕のような部位からレーザー兵器らしき見えない熱線を放つガンシップは片方がビル街のすぐ上、片割れは数千フィート上空で待機していた。機体下部には別の兵器を積んでいるらしく、時折何かしらの砲弾か爆弾が地上を焼いた。敵はプラズマ兵器らしきものを使用し、大気圏内でのそれらの使用は圧倒的な技術的優位の左証でもあった。
ガンシップからの砲撃でビルが削られた。どろどろに溶けたガラスとコンクリートと鉄筋の融合物が異臭を放ち、運良く巻き込まれなかったとは言えほとんどその付近にいた人々は後ろへと倒れたり脚を縺れさせたりしながら後退った。悲鳴や警報器がビル街のあちこちで鳴り響き、飛来した実弾らしき敵の砲弾で車が爆発して半回転していた。人々は逃げ惑うか恐怖でその場に釘付けとなり、あるいは間に合わせにしかならぬ瓦礫などの影に屈んで身を隠しながら絶叫していた。敵は市民にも躊躇いなく発砲し、運悪く即死し損ねた犠牲者は肉を爛れさせるプラズマの高熱で内臓や骨にまで傷が達し、この世のものと思えぬ悍ましい悲鳴をあげてのた打ち回った。爆発に巻き込まれて市警や市民が絶叫しながら吹き飛び、物言わぬ血塗れの骸と化した。大通りを進軍する敵の歩兵隊は甲殻的な茶色のアーマーとプラズマ銃で武装し、明らかに銃弾が何発も命中しているにも関わらず、強気な姿勢で車の残骸を掻き分けて進軍を続けていた。このままでは警官隊が蹂躙されてしまう――両者の距離が15ヤードまで迫ったところで、上空から砲弾じみた白い塊が落下してきた。それは先頭の猿人を地面に薙ぎ倒し、後続を足止めした。その剛腕は強固なアーマーで身を固めた猿人達をビルに激突させ、力を込めた渾身の一撃でアーマーとシールド機能を破壊して昏倒させた。
「み、見ろ! グレイだ!」
「ハロウィン連中が助けに来てくれたぞ!」
「Mr.グレイだ!」
グレイが猿人に集中砲火を受け、彼は多数のプラズマを受けて怯んだが、そこへ異形の魔道士が現れ、上空を通りながら落雷を落として敵歩兵のシールドに甚大な被害を与えた。
「よう、調子はどうだ?」
見れば異形の男の背から大剣を手にした男が敵の間へと降り立ち、彼は剣を一回転して振り回し、放射状に敵を薙ぎ倒した。猿人の呻き声が他の様々な騒音に加わった。そこへ短距離走者のような恰好をした凄まじい身のこなしのゴリラと、特殊部隊が身に着けていそうな白い服で固めた巨躯の男が現れた。そして続けて後ろに緑のコスチュームを纏ったこれまた軍人じみた男を乗せた空中バイク――明らかに既存のストリート・バイクを改造したもので、タイヤの代わりに円盤状の噴射ノズルを備えたそれは空中バイクと形容する他なかった――をぎこちなく運転する白衣のようなコスチュームのマスクを被った男が現れた。
「来てくれたんだ、ネイバーフッズだ!」
「よし、お前ら気合い入れろよ!」
停車したパトカーでカバーを取る警官隊はネイバーフッズの到着で戦意を高揚させた。見れば警官隊に迫っていた敵部隊は昏倒するかノックアウトされて動けなくなっており、次の敵部隊は再集結中であった。ガンシップからは威嚇するような重低音が鳴り響き、前方両側のビルの窓ガラスを蹴破った猿人達も同じく威嚇するように凄まじい咆哮をあげた。
ウィルと名付けられた空中バイクの運転にDr.エクセレントは慣れてきたらしく、互いに背を向けて周囲を伺う他のメンバー達の周りをゆっくりと地面から少し浮かんだ状態で飛んでいた。ガンシップが攻撃して来ないのは不気味に思えた。
「さて参謀殿、状況をどう見る?」とリーダーたるモードレッド卿はドクとバイクで二人乗りしているリードに尋ねた。ふざけた言い方だが声色や表情は真剣そのものであった。
「どうせ奴らは侵略しに来た異星人だろうし――ズカウバっていう実物の異星人が身近にいるしな――チラッと見ただけでアレだが、敵は見ての通りの軍隊で、軍事訓練も受けてやがる。しかもこういう任務だから精鋭で、士気も高いだろうな。アーマーは…ありゃなんだろうな、SFのシールドみてぇだ。警官の撃った銃弾が弾かれてたぞ。ま、とにかく相当強固だな。グレイやウォードみたいに大火力が出せるメンバーが重要になるな。ドク、何かあのシールドに対策を考えてくれ」
背後からそう言われたドクは上空や周囲を眺めながら答えた。
「実はソヴリン戦でシールドの厄介さが身に沁みたから、対シールド弾を用意しておいた」
「そりゃよかった。あんたが出撃前に渡してきたこいつがずっと気になってたからな。こういう事なら最初から装填しとくべきだったぜ」
リードはリボルバーから回転マガジンを取り外し、対シールド弾を装填した別のマガジンと交換した。リードは服の各所に予備の弾を収納し、背中に背負ったバッグには更に多くの弾が入っていた――似た戦闘スタイルのメタソルジャーも銃の種類以外は同様の装備であった。対シールド弾に切り替えたアサルトライフルを構え、背中にはバッグと彼用に改造したショットガンを背負っていた。
【このような時、我が秘術が役立つだろう。奴らの守りを弱体化させる呪いをかけてやろう。もしも防御を固めたい時は我が半身の出番となる】
異郷で生まれ育った虫じみた魔術師が言った。騎士は頷き、話を纏めた。
「よし、シールド対策を念頭に置こう。それから…私とズカウバでガンシップを狙ってみる」
ガンシップや猿人達の嘶きに対抗するかのように、遠い彼方より訪れた魔法使いは体の節々を鳴らした。
「レイザーとゴリラ、君達には危険な任務を頼みたい。斬撃や打撃で地道にシールドを削りつつ、敵の注意を引くんだ」
「望むところだな、そうだろ?」
「ああ」とホッピング・ゴリラは頷いた。
【しかして警邏人達の誤射があるやも知れぬ。我とてあの程度の武器であれば防げる加護を付与できる】
「決まりだな。さて、銃撃と近接格闘の両方を熟すメタソルジャーには遊撃を、他のメンバーはリードが戦場を確認しつつそれを起点として敵に遠距離攻撃だ。敵は高度なアーマーを装備してるがシールドが剥がれれば強力な一撃でダウンさせられる。警官隊やこれから到着するであろう軍は敵を殺傷する事も厭わないだろう。だが、我々はヒーローだし殺さないよう心掛けよう。では――」
威圧するかのような侵略者達の咆哮が響き渡った。地獄めいた喧騒を掻き消さん程に。
「――ではネイバーフッズの諸君、やってやろうぜ!」
イメージとしてはレイザーとゴリラが前衛のタンク担当。今回は敵集団に突撃してヘイト稼ぎがお仕事。




