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FANCY NOVELS  作者: ハゲゼビア
189/302

SHADOW FORCE#14

 クラブ内での激戦は否が応でも分隊に接近戦を強いた。飛び散るガラス、吹き飛ぶ死体…ここでの戦闘は正体不明のテロリスト達に大量虐殺の報いを受けさせるための序章である。

登場人物

―マウス…アメリカ陸軍特殊部隊シャドウ・フォース、エックス−レイ分隊の分隊長。

―ロコ…同上、エックス−レイ分隊の隊員。

―ロッキー…同上、エックス−レイ分隊の隊員。

―アーチャー…同上、エックス−レイ分隊の隊員。





 マウスは最初の敵を始末後、己が先行した。アーチャーの姿は既に彼の後ろから消えており、影のように部屋のどこかを移動していた――惜しむらくはHUDがアーチャー含む全員の位置や距離を表示している事であろう。

 十一時の方向、前方物陰から機銃手。ベルトで吊り下げたLMGを連射してきた。マウスは敵が現れたとほぼ同時に咄嗟に前転して、床と同じく大理石で作られた腰までの高さの仕切り壁に隠れ、掩蔽が破壊される前にそこからアーマーの脚力でしゃがんだまま強引にスライディングして出ると、スライディング中に五発を連射した。

 内三発が命中したのは思った以上の戦果であり、敵兵の甲高い悲鳴と共に軽機関銃が停止し、仰向けに倒れて後ろで転がっていたテーブルに倒れ掛かって動かなくなった。

 マウスから離れて彼の八時の方向を移動中のアーチャーは、照明によってぼうっと妖しく照らされる左前方四ヤードの所にある室内プールから水飛沫と共に何かが出現したのを見て咄嗟に射撃をお見舞いした。

 しかしその何者かは彼らと同様にバトル・アーマーを装備した兵士であり、強化された跳躍力で彼の背後へと着地した。格闘戦になり、まず相手が殴ってきたが素手だったのでアーマーの背面で受けた。

 強い衝撃が鈍い痛みを呼び覚ましたが、衝撃でがくっと姿勢が低くなりつつも踏み留まって鉄山靠の要領で突き飛ばし、振り向きながら射撃をしようとしたが敵は咄嗟に右ステップしたため、発射には成功したが弾がポールダンス用の柱に当たって弾かれた――一瞬ひやっとした隙に敵が自分のハンドガンを構えようとしたのでアーチャーはそれを蹴り上げて吹き飛ばした。

 アーチャーは角の塗装が擦り切れて下地の銀色が見え始めた9ミリモデルのガバメントを近くにあったソファへと投げ、相手がナイフを瞬時に抜いて刺突して来るに任せた――回避して手首を上向けて捻り上げる事で圧し折った。

 呻く敵の喉へとナイフに見立てた握り拳の小指球側を叩き込んでごぼごぼと咳込ませ、天井に当たってから落下した相手の銃をキャッチしつつ回し蹴りで顔面に致命的なダメージを与えて吹き飛ばし、片手で八発を機械的に連射し、被弾の衝撃でびくつく敵を見下ろし死亡を確認した。

 HUDのスキャン機能が残弾数を表示してくれるのはありがたかった。これはデータにある種類の銃であれば、それの登録済みの各残弾数における重量及びバネの先端位置による二重チェックで残弾数を表示してくれるというものである。

 近々小型ホログラム発生器を銃本体に取り付けてそこに直接残弾数を表示するという製品も発表されると聞いており、例によってホライゾン社が主導していた。

「敵一名死亡!」

 血が広がり始めると同時に前方の入り口が開いたのを視認、入って来た敵二名を射殺してから敵の銃を捨て、己の銃をソファから拾い、銃声がしていたのでマウスの援護に回った。

 部屋の右側にあった個室入り口が急に空いたのでマウスは走って移動し、彼が先程までいた辺りにある部屋を縦に区切るガラスが次々に割られた。ライフル弾の轟音とガラスが割れて散乱する音とが入り混じり、敵はマウスに追撃する前にアーチャーが胴に三発撃ち込んで殺した。

 マウスは自分から仕掛けようと思ったので前方にある他の個室入り口のドアを蹴破り、その背後で出ようと待機していた敵をまず吹き飛ばし、その敵は広い長方形テーブルの上を滑ってその後ろの壁に激突して転んだ。

 右から敵が女子学生――であった血塗れの遺体――を突き飛ばすように投げて来たがそれを躱し、追撃の前蹴りを右脚で払い顔面にハンドガンのグリップで強烈な一発お見舞いして朦朧とさせ、少し遅れて左からライフルのストックを振り下ろしてきた三人目の敵兵の腕を左手で受け止めた。

 見ればテーブルでは居眠りするように壮絶な表情で倒れている死体数体の他にも、先が尖った何らかのガラス製トロフィーがあったので、ハンドガンをテーブルに一旦雑に置いて、トロフィーを右手で掴んで敵の腹へと突き刺し、そのような壮絶な攻撃は恐らくかような虐殺及びその死体を攻撃目的で使用された事への義憤でもあった。

 情けなさすらある悲鳴と共に蹌踉(よろ)めく左側の敵を放置して左手で右側の敵の胸倉を掴んで顎を銃口で押し上げて発砲、運動エネルギーが後頭部を開口させて飛び散る血と脳とを背景に振り向き、左手でナイフを抜いてそれを左側の敵の首へ軽く当ててからさっと斬り裂き、どん(・・)と蹴り倒した。

 最初に襲い掛かったものの一蹴され、藻掻いた後に漸く立ち上がった最後の敵に対してはテーブルを蹴り飛ばして壁と挟んで足止めし、マウスはテーブルの上を滑って顔面を狙い、その敵兵の後頭部を足裏の蹴りで壁へがつんとぶつけて排除した――十秒に満たない攻防であった。

 ところでマウスは咄嗟にナイフと銃を両方装備したものの、しかし彼はこの二つを同時に使う技術が隙ではなかった。彼にしてみれば銃を持ちつつナイフも持つのは射撃も近接攻撃も中途半端になると考えていたからであり、結局彼は左手のナイフを元に戻した。


 一方ロコとロッキーも厨房を制圧しに掛かった。それぞれ縦長で同じ長さがあるゲストルームと厨房は縦辺の中央にあるドアで繋がっており、平時はそこから料理や食器が行き来したものと思われた――派手な銃声が隣から聴こえた。

「なんだよ、向こうの方が楽しそうじゃねぇか」とロコは小声で言い、ロッキーは「お前病気だな」と小声で呆れた。

 厨房はゲストルームと違って明るく、白基調の厨房が明るい照明に照らされているのでずっと見ていると目が痛くなりそうであった。入り口近く包丁仰向けに倒れた料理人の胸が血で赤く染まり、白い服や白い壁が所々血で汚れていた。

 手から零れ落ちて近くに落ちている包丁には生前最後に切った肉のピンク色の汚れが付着し、それがどこまでも生々しかった。見れば他にも死体は十数体確認できた。

「アーメン…R.I.P.だぜ」

 ロコはふざけた調子をやめて本気の顔になり、このような大量虐殺を行なう敵に容赦する必要性を感じなくなった。彼らは実際『最悪の場合は己が今脱ごうとしている下着』すらも武器にできるよう訓練を積んでおり、それら基本的な訓練に各々が専攻する各種格闘技をミックスしていた。

 ロッキーはロコの事をそのコールサイン通りの『Eクラスやカマロやアヴェンタドールが並ぶような裕福な家庭で育ったのにわざわざ入隊して過酷な特殊部隊の道を選んだイカれ野郎』だと考えていた。

 しかし時々ロコはその普段の陽気さが消えて、体格相応の恐ろしい大男のように思える時があり、今まさにロッキーはロコにそのような印象を抱いていた。

 ふと前方から声がして、上下の障害物のせいで見通しの悪い厨房の前方からスペイン語で慌ただしく話す声が足音と共に接近して来た。これを逃すと向こうに負担が掛かるから、仕留めねばならない。ロコとロッキーは屈んで調理台に隠れ、目を合わせるとロコはハンドサインと指差しでこれからする事を伝えた。

 了承したロッキーを尻目にロコは先程見掛けた包丁を拾い、二人は長い調理台の後ろを屈んだまま小走りして前進し、タイミングを見計らってロッキーは敵がドアの近くに来た瞬間に立ち上がって包丁を投げた。

 敵は二人おり、内一人は背後から飛来した包丁が首の付け根に突き刺さり、そこに両手を当てながら短い悲鳴と共に膝から倒れた。もう一人が何かしら反応した瞬間にロッキーが放った弾丸二発が背後から肩と背骨を粉砕し、致命傷を与えて倒れさせた。

 ロコはすぐさまベルト付きのショットガンを構え直し、そのまま二人は前進した。後続の敵が異変に気が付き、反対側にあるクラブの出口から敵が一人乱射しながら突入して来た。ロコは体勢を低くして隠れつつタグ付けし、ブラインド撃ちで敵にプレッシャーを掛けた。

 ロッキーがその間に少し先行し、今度は敵がそちらを狙ったのでその隙にロコはショットガンの散弾を敵にお見舞いし、拡散した金属の粒が敵の胸から上を蹂躙して全身を勢いよく薙ぎ倒した――これだからショットガンは便利だ、弾を持っていさえすれば規格内で色々な用途の銃弾を使用できる。

 彼らはそのまま開け放たれた出口向けて銃を構えたまま早歩きで移動した。残り五ヤードのところで嫌な音が聴こえた――ピンを抜く音、視界情報と一緒に入って来た嬉しくない何か(・・)が転がる音。

「グレネード!」

 二人同時に言ったのでどちらの声であるかもよくわからなかった。彼らは急いで背後へ飛び退り、ロコが調理台の上を何回か転がった――床から来る爆風を調理台で遮ろうと考えた――辺りで、重苦しい轟音が辺りを蹂躙した。破片がそこら中を穴だらけにして、砕けた皿や調理器具、並びに敵の死体の一部が降り注いだ。

 ロコは更に転がって調理台から右方向へどさりと降り、地震が起きた後のように調理台へと倒れ掛かった厨房の他の冷蔵庫より小さい冷蔵庫に背を預け、出口に背を向ける形で一旦息を整えた。

 見ればガロン容器のジュースが床に散乱しており、血のごとく流出しているものもあればまだ無事なものもあった。上客に供される予定であったサラダ料理が容器ごとぶち撒けられ、瓶という源泉から流れる赤ワインの川と合流していた。

 ジュースを一口拝借したいもんだとロコが思った瞬間、異変に気が付き彼はさっと立ち上がって離れた。金属の激突音と共に鉈が倒れた冷蔵庫にざっくりと食い込んだ。

「やる気か、テメェ?」と言いながらロコは振り向きながらショットガンを発射しようとしたが、相手は倒れた冷蔵庫を蹴ってロコにぶつけた。この調子では本当に『やらなければ』ならないだろう。

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