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こたつには足がある

「…ということで、夏季限定スイーツの王様は、やはりトロピカルパフェだということで間違いないのです!!」


 自称ようかいこたつさんの夏季お勧めスイーツの紹介がようやく終わる。

 というか、さっき冬季限定で出没できる妖怪とか言ってたくせに、なんで、夏季のお勧めスイーツ知ってんだよ…。


 ここでようやく一息ついたのか彼女はペットボトルのお茶(ボクの家のだ)をのほほんな感じになりながら飲む。あれだけしゃべりゃあそりゃあ喉が渇きもするだろう。

 彼女が黙ったのをいいことに、ボクはようやく会話の主導権を握るべく動き出す…!!


「あのさ、もういいかな?スイーツの話は」


 主導権を握るためにようやく動き出すなんて言った割には弱弱しい態度になってしまう。


「あ、ああ、ゴメンナサイ…またやっちゃいましたね」


「いや、まぁいいんだけど…」


 またしても急に静かになってしまう彼女の様子に対応しきれないボクである。ひょっとしてもてあそばれてる?


「あのさ、いいんだけどさ。この家に勝手に上がりこんだことについてももう気にしないことにしたし、どうしてもここから出たくないっていうんだったら、このアパートは一人暮らしの借家だから、しばらくいても別にいいんだけど…」


 相変わらず言い訳がましく回りくどい言い方しかできない。


「でも、得体のしれない人を置いておくのは怖いから、君のこと教えてよ。君のこと知っておきたいんだいろいろと。妖怪だとか言われてもよくわからないし」


「わたしのことを知りたい…?」


「うん」


ボクが頷いて答えると、彼女はなぜか顔を赤らめる。


「そんな、私のことがもっと知りたいだなんて、そんな…そんなことを言われてしまっては、何からお答えすればいいやら…えっと…とりあえずスリーサイズからでいいですか?」


 …なぜそうなる?


「…いや、そういうんじゃなくて」


「えっ!!スリーサイズ以上のことですか!!経験の有無とか、性感帯とか!?さすがにそれはちょっと…」


「なぜそっち方面にいく!?」


「えっ!?だって、あなたの年頃の男性なんて、エロのことしか頭にないんじゃないんですか?それともわたしってそういう対象として見られてません!?うわぁ…なんかちょっとショック…」


 なんか多大なる偏見を持った返答が返ってきた気がする。

 というか、ほぼ初対面の女の人を速攻でエロの対象として見てる男ってそれはそれでダメじゃないか?とかなんとか頭におもいいつつ、


「だから、なんで勝手に解釈して落ち込んでるの?ボクが言いたいのはそういうことじゃなくて、アナタの素性が知りたいってことなの!!妖怪だとか言ってるけど、その証拠は今のところ見せてもらえてないし、仮に妖怪だってのが作り話にして人間だったとしても、アナタが何を目的にここにきたのか、ボクは聞いておく権利があると思う」


 ボクは言いたいことの要点をまとめて、彼女に伝える。

 さて、どう答えるかな。妖怪である証拠を出せと言われてあわてるかな?

 しかし、彼女は特にあわてる様子もなく、ただ一言、


「なんだそんなことですか」


 といった。


 そして彼女はいたずら心が前面にあふれたいい笑顔でこう言った。


「そういえば、主さんずっと立ちっぱなしでしたよね。寒かったでしょ?こたつ入ってくださいよ」


 そう言われてボクが今までかなり不自然な状態で彼女と話していたことに気がつく。

 悲鳴を上げられて壁際に逃げてからずっと部屋の隅にいたせいで体は冷え切っていた。


「まぁそういうことなら…」


 言われて彼女が暖まっているこたつの中に足を入れる。

 入れて、しばらくして、本当にしばらくして、無ければおかしいものがこたつの中に無いことに気がつく。

 普段一人でこたつに入っている時にはあるけれど、複数人でこたつに入っている時には必ずと言っていいほど触れ合うものがない。

 普段は無いのが当たり前だから、一瞬気がつかなかったが、よくよく考えてみればおかしい。

 ボクは足を伸ばして座っているのに、彼女の足にボクの足が触れないのだ。これは、おかしい、ちょっと、いや、相当おかしい。


「ふふ、どうかしました?」


 目の前の自称妖怪は、それは楽しそうに、いたずらっぽくほほ笑んだ。


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