期間限定という言葉に日本人は弱い。
「『でっ』…ってそれだけですか?もうちょっとこう、感心してくれたり、へぇそうなんだぁ!!そうなんだ池上アキラ!!っていう感じになりませんか?」
…そうなんだ池上アキラ!!ってどんな感じよ?
「いや、もういいので。もうやめてください本当に。もう今日一日ここにいていいので黙ってくださいお願いします」
ボクの疲れた懇願に、(´・ω・`)こんな表情をして見せる彼女。
「すいません…さすがにちょっと調子に乗って騒ぎすぎちゃいましたね…。あの…ゴメンナサイ」
彼女はそう言ってちょこんと頭を下げ、ようやく少し落ち着いた様子になった。
その落ち込んだ様子が、先ほどまでの饒舌さとあまりにかけ離れていて、思わずボクが悪者になってしまったかのような居心地の悪さを感じてしまう。だから、
「…いえっ、ボクもちょっと言い過ぎました。ゴメンナサイ」
ボクもそう言って頭を下げた。
これに対して彼女はさらに深く頭を下げる。
「本当にゴメンナサイ。今日までだいたい半年くらい誰ともお話できなかったので、思わずうれしくなってしまって…」
「…半年っ!?」
いや、半年もしゃべってなかったってんなら、異常なさっきのテンションも納得だわ。
というか、半年もしゃべって無かったって?友達いないのかこの子?
「今、『友達いないのかコイツ?』とか思ったでしょ?」
…図星である。
「さっきも言ったじゃないですか。わたしこたつの妖怪なんです。つまりこたつの置いてあるシーズンしか現れることができないんですよ。去年は去年で居心地のいいコタツを見つけて住ませてもらって、そこの主の方にもよくしてもらって…でも当然夏の間にコタツを置いている所なんか無いので、私は半年ほど一人ぼっちだったというわけです」
…はぁ。つまりそういう設定っていうこと?
「今、『つまりこいつの頭の中ではそういう設定になっているのか』とか思ったでしょ?」
…またしても図星である。コイツ読心術でもできるのか?
「まぁ疑うのも無理ないですけどね…。ともかく私は冬季限定の妖怪なんです…あれっ?冬季限定って聞くとなんとなくプレミア感があふれてきません?ほら、『秋季限定! 栗きんとん』みたいな感じで思わず食べちゃいたくなりますよね~…だからと言って私を食べちゃだめですよ~もちろん性的な意味で」
そんなことを言ったあとわざとらしく「いや~ん」なんて言いながら、肩を抱き、例のくねくねダンスを踊る自称妖怪こたつさん。
…この娘は一体何を言っているのだ?というか、何を言っちゃってるんだマジで。
ついでに言っとくと秋季限定栗きんとんって、まんま某推理小説タイトルのオマージュじゃなイカ?
「ああ、冬季限定といえば、去年出てた冬季限定『冬のパイの実キャラメルラテ味』今年も出てないかなぁ…?今年も出てますよね?たぶん」
うわぁ、また脱線して勝手にシャベリダシタァァァァァ!!
その後、延々と期間限定スイーツへの熱い思いを聞かされること30分、ようやく彼女の話は終わった。
この子と出会ってわずかに2時間にして、ボクは聞き手レベルが3上がり、スキル「馬耳東風」を習得したっ!!
今回はなかなかにひどいですね。
パロディーオマージュなんでもあり。テンションの赴くままに思いついたことを書き連ねてます。