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こたつさん

「あれ?覚えてませんか?前世ではあれほど激しく愛し合った仲だというのに…」


突然自分の肩を抱きしめるようなポーズをとったかと思うと体をくねくねさせるような変な動きをした。


(うわぁ…見た目は好みだけど、この子なんかめちゃくちゃ電波なこと言いだした!そのうえなんか残念な感じの動きだ…)


 声には出さず(というか出せず)ジト目で彼女を見ていると、さすがに空気を読んだのか、くねくねする動きをピタリとやめて、照れくさそうに髪をいじった。


「いやぁ、いやだなぁ!冗談ですよ?何そんな怖い目で見てるんですかぁ。たはははっ…」


「いや、即座に警察を呼ばなかっただけボクは寛大だと思う。普通に考えてアンタのやってること不法侵入だし」


「…あはぁっ、いやぁ、それは面目ない」


「繰り返し問います。アンタ、だれですか?」


「…ああ、わたくしめはその、通称『こたつさん』と呼ばれる部類の妖怪でして、快適なこたつライフを求めてこたつからこたつへと渡り歩くものでございます」


 俺は無言で彼女に近づくと、どてらの首元をつかんだ。


「へっ!?」


キョトンとした表情で見上げる彼女。

その表情はあどけなさが残る少女のようで、なんとなくキュンとしてしまいそうになったが、家に不法侵入した挙句、電波なことをまくしたてる女相手にキュンキュンするなどもってのほかだと自分自身を叱咤激励する。


「わけのわからないこと言ってないで、用がないなら出ていってくれません?」


どてらをぐいと引き上げ彼女をこたつから引っ張り出そうとする。その瞬間…。


「…だっだめぇぇぇぇっっっ!!!」


「!?!?」


ものすごい絶叫がボクがどてらをつかんでいる女性から発せられて、ボクは思わず驚いて手を離してしまう。

赤らめた顔に涙目で抗議するような視線を向けてくる目の前の彼女。


「今、言いましたよね。わたしこたつに住む妖怪だって。コタツを愛する、こたつなしには生きられない妖怪だって!!それなのに、こたつから引きずり出そうとするなんて…あなた人でなしです!!妖怪殺しです!!卑猥です!!エッチです!!」


…後半二つおかしくね?


「私は梃子でも動きませんからね。意地でもこのこたつから動きませんから!!この冬はこの家のこのこたつが私の城になることに決まったのです!!」


…家主のボクに決定権ねぇの?


「あのさ、ここボクの家だからさ、頼むから出ていってくんない?本当に警察呼ぶよ?」


「…呼んでみたらいいです。そんなことしたら、わたし『この男に連れ込まれて凌辱されました!!』って言ってやりますから!!」


「…りょっ!!」


口をパクパクさせたまま思わぬ言葉に動けないボク。


「アンタ、ふざけんなよ!!ほんと!!」


「なんなら今だって言ってやりましょうか?『キャー!!タスケテー!!オソワレルー!!』」


「おまっ!!やめろ!!」


ただでさえ壁の薄い下宿で棒読みとは言えそんなことを大声で言われたら…!!


「キャー!!コワイ!!タスケテー!!オカサレルー!!」


「ひっ!!やめろ!!やめてくださいお願いします!!」


「じゃあ、わたしをひと冬このこたつにおいてくれますか?」


「それは…ダメ」


「キャー!!レイプサレルー!!」


「やめてください!!いいです!!許可します!!だからやめてください!!本当にやめてくださいお願いします!!」


目の前の黒髪短髪で優しそうな顔立ちをしており、清楚な雰囲気の女性は、見た目に合わない卑劣かつ卑猥な手段により、ボクの家のこたつの居住権を無理やりむしり取っていった。


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