出会い
落ち込みながら家に帰る。
強い風とはらはら舞う粉雪が、さらに気持ちを陰鬱にさせる。
はぁと一つため息をついて、家のドアの前に立つ。
ドア脇の曇窓ガラス越しに望める部屋には灯りがついていた。
(電気、消し忘れた?)
不思議に思いつつも、鍵を取り出し回す。
「…あいてる」
ここでようやく不審に思う。鍵が開いた状態で電気がついているなんて、まさか泥棒?
そっとドアを開けると、そこには見なれた玄関とキッチンの合体した一間があり、朝の様子と変わっておらず、荒らされた様子は全くない。無いのだが…玄関先に一足、見なれないスニーカーがあった。
サイズから見てこの靴の持ち主は小柄な男か女性だろうか?ともかくこの家の中に見知らぬ誰かがいるのは間違いなさそうだ。
ちなみにボクの家の鍵を持っているような親しい女性はいないし、仮に鍵が開いていたとしても、勝手に中に入ってくるような仲の友人もいない。
ゆっくりとリビングのドアに近付き勢いよく明けると、
一人の女性が我が家のコタツの中で温まっていた。
その女性は黒髪の短髪で、美人ではないけど優しくて少し丸みを帯びた整った顔立ちをしていて…つまり顔はボクの好みドストライクので…それなのに残念な感じの色合いのつぎはぎだらけのどてらを着ていた。
そんな見た目では何とも把握しきれない彼女は、
「おかえりなさい。お邪魔してます」
そう言ってボクににっこりと笑った。
「おかえりなさい」
この言葉を言ってくれるだろう人のことを考える。両親であったりとか、姉であったりとか、妹であったりとか、若しくは遠い昔に分かれた幼馴染であったりとか、彼女であったりとか、元カノであったりとかがボクの家に上がりこんで、「おかえり」というのは不自然ではないだろう。
では、彼女はそのどれに当てはまるのかというと、まるきり、何一つ、当てはまらないし思い当たらない。遠い昔に別れた幼馴染説は覚えていない可能性があるのでゼロとは言えないが、それでも社交性の低い自分が幼いころにそんな友人(しかも女の子)を作っていた可能性は限りなく低い。それらを考えて自分なりにまとめて咀嚼したうえで、彼女に返すべき第一声目の言葉は決まった。
「アンタ、だれ?」