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(`д´)(`д´)

「おい、そこのストーカー。通報するぞ」

「相変わらず冷たいなー」


専門学校の建物を出たところで私を待ち伏せしていたストーカー男が、

ポケットから車のキーを取り出した。


「送るよ。で、綾音ちゃんを拾ってレストランに行こう」

「嫌、って言ったでしょ?」


とは言いつつ、私の心は揺れていた。

顕に向かって揺れていたのではない。

車だ。


雨がポツポツしてきたし、傘も持ってない。


「ここで雨に負けてストーカー男の車に乗るか、

女のプライドで雨にびしょ濡れになりながら帰るか・・・」

「何1人でブツブツ言ってるんだよ。

明日からバーゲンだろ。風邪引いて出られなくなったら、美貴の店の人が困る」

「・・・」


私はそう言われると弱い、ということを心得ているところがまたムカつく!


仕方なく私は顕のワンボックスに乗り込んだ。

そして、家に着いたら「じゃあ、バイバイ」とは言わせてもらえず、

顕はさっさと1人で車を降り、勝手に私の実家のインターホンに向かって、

「綾音ちゃーん!パパが迎えに来たよ-!」とか言ってやがる。


「パパ」って!!!!

やめれ!!!!





「しんっじられない!!」

「そう言いつつ、しっかりコース料理食ってるのはどこの誰だよ?」


あたしだよ(にしおかすみこ風)。

これ食べたら速攻で帰るんだから!


「綾音ちゃん。ご飯とデザート食べたら、パパとおもちゃ探しに行こうね」

「うん!綾音、『モノランモノラン』のお人形がいいなぁ!」

「よしよし。んじゃ、トイザラスに行こう。どのお人形がいい?

プート?ライゴウ?スイリン?全部でもいいよ」

「虫眼鏡の探偵さん!」

「渋いね」

「ちょっと、顕、綾音!ダメよ!」


勝手に盛り上がってる2人を私は慌てて止めた。


綾音は何度か顕に会ってるし、なついてる。

しかも今日は綾音の誕生日ってことで、

ご飯も豪華だし、バースデーケーキまで出てきた。


しかもトイザラス。


綾音がご機嫌にならないはずがない。


でも、ダメ!!!


「綾音!もうプレゼントは買ってあげたでしょ!?じいじからもばあばからも、

かー君ママからも貰ったじゃない!」

「えー?パパからは貰ってないもん」

「綾音!」


綾音はB男のことは「お父さん」と呼んでいた。

そして今、顕のことは「パパ」と呼んでいる。

(というか、顕が呼ばせている)


「顕も!綾音に自分のこと『パパ』なんて呼ばせないで!」

「えー?どうせ近々本当の『パパ』になるのに」


ならん!!!


「じゃあ、お・・・」

「『お父さん』もダメ!」

「ちぇっ」

「それに!私、今日は学校の課題があるから、もう帰らなきゃ!」

「よし、じゃあ綾音ちゃん。パパと2人でトイザラスに行こう」

「うん!パパ!」


だから、ダメだって!!

てゆーか、「パパ」じゃなーーーい!!







「はあ」


私は型紙に線を引きながら、ため息をついた。


本当に2人でトイザラスに行ってしまった。

信じられない。

B男だって、綾音と2人でおもちゃ買いに行ったことなんてないのに。


あのアホ顕め。

さては綾音に取り入って私に近づこうって魂胆だな?

ふんっ、そうはいくもんですか。

それならこっちも利用させてもらうんだから!


綾音のおもちゃはこれから全部顕に買わせよう。

私がちょっと顕に気のある振りをしたら、絶対上手く行く。


男って、ほんと馬鹿よね!



「あ、しまった・・・」


勢い余って、強く線を引き、台紙を破ってしまった。


あーあ、やり直しだわ・・・



今日は踏んだり蹴ったりだ。


学校の前で顕に待ち伏せされるし、

車に強引に乗せられて、綾音ともども拉致られるし、

なんか一緒にレストランでご飯食べさせられるし、

そのまま綾音はトイザラスに連行されるし。


・・・。


でも、お陰で雨には濡れなかったな。

それに子連れで行けるレストランなんてファミレスくらいしかないのに、

今日行ったところはちょっと高級なレストランだったけど個室だったから、

綾音が一緒でも気兼ねせずにすんだ。

ご飯も久々にコース料理なんて食べれたし、ケーキも・・・



私は台紙を机に置くと、

立ち上がって窓から外を見た。


すっかり土砂降りだ。


そう言えば、天気予報で今夜は夕方から雨って言ってた。

顕はそれを知っていて、迎えに来てくれたのかな?


それに・・・そうだ。

「モノランモノラン」。

NHKの「おかあさんといっしょ」のキャラクターだ。

顕はそのメインキャラの名前を知っていた。

「モノランモノラン」はこの4月に始まったばかりのお話なのに、

なんで顕はそんなの知ってるんだろう・・・?


もしかして、綾音と仲良くなるために勉強したのかな?

・・・まさか、ね。




「ママー!じいじ、ばあば、ただいまぁ!!!」


玄関の扉の大きな開閉音と共に、1階から綾音の元気な声がこだました。


「あら、お帰り。綾ちゃん」

「見て!ばあば!虫眼鏡の探偵さんのぬいぐるみ!!」

「あらまあ、よかったわねぇ」

「うん!」


そんなマイナーキャラのぬいぐるみ、よく売ってたな。


私は、やっぱ一言お礼言っとかなきゃな、と思い、

部屋の扉を開けて1階へ降りようとした。


ところが、それと同時に、また綾音とばあばの会話が聞こえてきた。


「羽田さんが買ってくれたのよね?ばあば、ちょっと羽田さんにお礼言うわね。

綾ちゃんは、濡れちゃうからお部屋で待ってて」

「え?もう帰っちゃったよ」

「あら、そうなの?」

「うん。『ばーげんのじゅんび』があるからお店に戻るんだって」


今から!?

・・・って、まだ9時だ・・・


私の学校が終わったのが6時だったから、

顕はお店がまだやってる時間にもかかわらず、私を待ち伏せしていたことになる。


・・・私と綾音と食事して、綾音にプレゼントを買うために、

バーゲン前なのに、お店抜けてきたのかな。


私はバイトだから、問題ないけど、顕は・・・



「ママ!見て、見て!」


私が考え込んでいると、綾音が正真正銘「虫眼鏡の探偵さん」のぬいぐるみを、

満面の笑みで抱き締めながら走ってきた。


「凄いでしょ!?一個だけあったの!!」

「ほんとね。よく見つけたわね。どこ探してもなかったのに」

「うん!ダディが3つもトイザラス回って探してくれたの」

「そう、よかっ、」


おい。


「ダ、ダディ?何、それ?」

「パパがね、

『ママがパパのことパパって呼んじゃダメって言ってたから、ダディにしよう』だって!」

「・・・」



どこの郷ひろみだ!!!!

ふざけんな!!!!



やっぱり、

男なんて大ッキライだっ!!





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