どんな気持ち?
「申し訳ありませんっ! ロイス様はメアリー様が熱を出してしまいまして……」
婚約者のロイス・ロードリーとの週に一回の茶会の為にロードリー家を訪れていた私にメイドが申し訳なさそうに言った。
「そうですか……、それでは帰ります。メアリー様にはお大事にと伝えておいてください」
私はそう言って屋敷を出て馬車に乗った。
「お嬢様、まさか……」
「えぇ、今日も中止になったわ」
馬車に乗っていたメイドは呆れていた。
「もしかしてお嬢様の事を舐めていませんか? いくら政略だからと言ってもここまでの態度を取られると……」
「そう思われても仕方が無いのよね……」
私セリアーヌ・コーネルとロイス様とは幼い頃に家の都合で決まった婚約だった。
それでも、かつては良い関係を築いていた筈だった。
それが変わりはじめたのはこの数年、ロイス様の妹君のメアリー様が流行り病で寝込まれてからだ。
ロイス様はメアリー様は優先する様になり私との約束をすっぽかす様になった。
まぁ兄妹仲というのはそういう物だろう、と理解はしている、しかし当日に言われるのは納得出来ない。
翌日には謝罪され次の約束を決めるんだけど当日になるとすっぽかされる、を繰り返されている。
最初は腹も立っていたけど、最近は諦めの気持ちの方が強くなった。
そろそろ両親に伝えて関係を見直すべきなんじゃないか、と考えている。
(でも、やっぱり何らかの仕返しはしてやりたいわね……)
解消するにしても、この数年を無駄にはしたくない。
(ロイス様はメアリー様を優先するのが当たり前になってる、その当たり前が普通では無い事をわからせてやらないと……)
帰りの馬車の中で私は色々考え、ある計画を思いついた。
(目には目を歯には歯を、すっぽかしにはすっぽかしよ!)
翌日、案の定学院内でロイス様に声をかけられ謝罪された。
「昨日は申し訳無かった、メアリーが咳込んでいたから……」
「仕方がありませんわ、病弱なんですから」
「次は必ず一緒に過ごそう! 次の週は……」
「でしたら、今度は我が家で茶会をしませんか?」
「そうだね、そうしよう」
次の茶会は我が家で行う事になった。
そして、迎えたその日、私は家にはいなかった。
『急な用事が出来たので』と、私は当日にすっぽかす事にした。
勿論、用事なんて無い、家の自室に籠もっている。
来ていたロイス様は困惑されている様に見えた。
そして次の日には私は謝罪をしてまた約束をしすっぼかす、それを何度も繰り返した。
そして、遂にロイス様に言われた。
「セリアーヌ、最近の君はおかしいんじゃないか?」
「あら、どうしてですの?」
「約束しても用事がある、と当日に言われて……、僕は君に何かしたか?」
「あら、何かしたんですの?」
「それは……」
「……メアリー様が病弱なのはしょうがありませんわ、しかし毎回約束を当日に破られる私の気持ちを考えた事がありますか?」
「え?」
「不愉快だし私に何か瑕疵があるんじゃないかと責めたりしましたわ、腹も立ったし自分が情けなくなりました」
「それは……、君はメアリーとも仲が良いし我が家の事情もわかっているから……」
「わかっている事と、存在を軽く見られる事は違います」
そう言うとロイス様は黙った。
「今、どんなお気持ちですか? 不愉快ですか?不安ですか? 私はその何倍もの気持ちをこの数年間感じていました」
「……申し訳無かった」
ロイス様は謝罪した。
それは言葉だけではなく心から出た言葉に感じた。
結局、家同士の話し合いで婚約は解消となった。
1度崩れてしまった関係を修復するのは難しいし、私も同じ事をやったから。
ロイス様はご両親からお叱りを受け再教育を受ける事になり学院から姿を消した。
メアリー様からは『私のせいで』というお詫びの手紙を受け取った。
本格的に治療に専念する事にして施設に入る事になったらしい。
私も両親からお叱りを受け反省している。
それでも、黙っていたら私は壊れていたかもしれない。
だから、離れて正解だったんじゃないか、と思っている。




