聖女召喚の儀、巻き込まれたはどちらか 秋の陣
出てくる人達 ↓
モサ子と美少女 ←ついに彼女達の名が……
愉快な異世界の人々
初見の方の為の、前々回と前回のゆるいあらすじ ↓
初召喚。傲慢な王族をボコして帰った、春。
二度目の召喚。超美人だが性格悪辣な女王に駒として喚ばれたが、やっぱりボコして帰った。帰還直後に怖い目に遭わされた美少女だが、華麗な海割りシュートを決めたモサ子により、事なきを得た。そんな夏。
そして、秋…… ↓
聖女召喚。
以下略。
……こんな言葉がある。
二度あることは三度ある。
仏の顔も三度まで。
その言葉が意味するところは……、
「―……――っ!!」
誰かが騒いでいる。
「……っっ?!―――!!」
無理矢理意識が浮上させられ、自分が顰め面になっているのが分かった。
「―――……、……ろ!」
「――う、……?」
目を開け、ぼんやりとしたまま身を起こす。揺れる視界に、光が入った。その光は、奇妙な紋様を描いている。弱い明滅を繰り返しているそれを辿り、自分はその中に居るのだと、ようやく理解した。
「ちょっと……コレ、もしかしなくても魔法陣?噓でしょまたぁ……?」
「起きたか。異世界人」
魔法陣の外に、貴族らしい壮年の男が立っていた。その隣には、魔導士らしき女も。女の手には、赤黒い光を放つ仰々しい杖。今、自分が居る魔法陣が放つ光とは、真逆の色だ。
男は苛ついた様子で、クイと顎を動かす。
「さっさと出てこい。次はお前の番だ」
「……アンタ誰よ」
異世界召喚も三度目となると、耐性も付く。過去の二度とも、ロクな召喚先ではなかったが、今回はそれを超えそうな予感がした。
「勝手に喚んだ上にその態度って、大人としてどうなのよ」
「…チッ、コイツもか。生意気な口を叩きおって……おい、引きずり出せ」
男はあくまで指示するだけで、自分では動かないらしい。部下らしき男らに乱暴に引っ張られ、魔法陣の外へ押し出された。何するのよ!と叫んでも、部下達は無表情だ。
それらを鋭く睨みつけ、男と対峙する。
「そう睨まずとも、お前もすぐに帰れる」
「え…?」
「我々が多大な犠牲を払い、異世界人を喚んだのは、アレらを連れ帰って欲しいからだ」
此処は地下のようだが、更に下があるらしい。男は先を歩き、視線を下へ遣る。警戒しながらも、倣うよう覗き込んだ。
気にはなっていた。ずっと、ギャアギャアと無数の鳴き声が響いているのだ。
嫌な予感がする。
「我々の世界は今、危機に瀕している。魔物が溢れ、多くの国が滅び、多くの英雄達が命を落とした。今や人が住まう地は、ほんの僅か。その僅かな土地すら、襲われ喰い尽くされる一方……」
下で光を放つは、見覚えのある帰還の魔法陣。
「絶望の中……我々は思い出した。異世界に繋げる、魔法陣の存在を。うまくいけば、魔物共を異世界へ流す事ができる。だがそれをやるには、一度異世界人を喚び、再び陣を開かねばならぬ。膨大な魔力が必要だ。まぁその辺りは、魔物共も使い何とかできたのだがな」
その周りには、埋め尽くす程の魔物、魔物、魔物。あちこちで共喰いが始まっており、その断末魔が木霊する。気付いた数匹が雄叫びを上げよじ登ってくるが、結界に弾かれ、蠢く魔物の中へ落ち、喰われる。
初めて目にする光景に、溢れかえる瘴気に吐き気を覚え、口を押さえた。体の震えが止まらない。男はその様を、情けないと嗤った。
「もう一人の方が、余程気丈だったな。怯えもせず、我々に立ち向かってきた。あの魔物共の中に放り込んでも果敢に戦っていたが……おい、陣が閉じかけている。向こうに着く前に喰われたんじゃないだろうな」
「…、……!もう一人って、まさか、……っ!?」
押さえつけようとする手を振り払い、帰還の魔法陣を強く見据える。
召喚される時は、必ず彼女も居た。一度目も二度目も、相手が何であれ自分を曲げない強メンタルで、理不尽を振り払ってきたのだ。そう簡単には……、
……見えたのは、歪んだ空間で魔物に囲まれ、血塗れになった彼女の姿。
「――ちょっと!!どういう事?!何で聖女の力が無いのよ!!選ばれたのなら能力が付けられるんじゃないの?!」
「……歯向かわれると、面倒くさい。だから、召喚魔法陣に、少し……細工して、……無効にしてやった。だから、お前らは……聖女でも、何でもない…。ただの、イケニエ」
魔導士の女は、欠伸をしながら杖を振る。
「……選ばれたとか、聖女とか、………自分で言ってて恥ずかしくない?あ、お前みたいなのが、オメデタイアタマなんだぁ……ププ…」
「おめでたいのはあんたらでしょ!!馬鹿なの?!自分の世界で起きた事ぐらい、自分で片付けなさいよ!!あんな化け物送られたら、私らの世界がメチャクチャになるじゃない!!」
「知ったことか。我々は手を尽くした。多くを失った。――それともお前は、我々に黙って滅べと言うのか?」
「別世界の何も知らない人間を、巻き込むなって言ってんのよ!!!」
結局は目の前の男らも、今までと同じだ。
自分達では手に負えないからと、簡単に他の世界の人間に丸投げする。此方の意思も、何もかも知らんふりして。
薄ら笑いを浮かべる、壮年の男を強く睨みつける。
「気取った喋りで煙に巻くんじゃないわよ!!アンタはただ問題を丸投げしてるだけで、何も解決策出せてない無能よ!!!」
その言葉に、顔を歪め、青筋を立てた男が腕を振り上げた。殴られる。
でも、黙ったままあの中に放り込まれるくらいなら、言いたい事は全部言ってやる。それがせめてもの、意地だ。
――…おぉぉ……、ふぅぅぅんぬおぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!!!!!
帰還の魔法陣が突如光り輝き、巨大な剣が現れる。周囲の魔物らを霧散させ、地下は一瞬にして明るくなった。
一体何が起こったのか。
見当がつかず、誰もこの事態に頭が追い付かない。ただ、立ち呆ける。
そして、空中から降ってきた影が、男に踵落としを決めた。突然の襲撃と衝撃に、男はなす術なく地に叩きつけられる。それをやったのは、
「……私、復活」
「モサ子ぉぉぉ!!!?!?」
血塗れで弱っていた筈の、モサ子であった。美少女は驚きながらも半泣きで飛びつき、ガクガク揺らしながら怪我の有無を確かめる。
「アンタっ……さっき!ボロボロでっ!!血が、すごくてっっ!何なのよ??!」
「お前が何だ。というか誰がモサ子だ。私には、金剛あやめという名前がある」
揺さぶられながらも反論するモサ……改め、金剛あやめ。体幹しっかりしていて流石である。
「知ってるわよぉぉ!!私は西園寺ルリよ!何か文句ある?!」
「知ってるよ。同じクラスだろ」
それは安堵か喜びか。美少……改め、西園寺ルリ。感情が不安定になっているのか、何故か切れ気味の自己紹介。斬新だ。
「あの姿は何だったのよ??本当にケガしてないの?!」
「そうだ…!お不動様、ありがとうございます!!」
折り目正しく九十度の礼をした、あやめのその先には。
巨大な不動明王が居た。
『うむ』
右手に剣を。左手に縄を。そして背には煌々と揺らめく火焔を背負っていらっしゃる。その御顔はとても険しくも、何処か慈悲深く感じる……。
そんな有難く頼り甲斐もある、巨大な不動明王が立っていた。
どうりで地下が明るい筈である。
「ゑ?」
『我が手を貸せるのは、後数秒…。……あれだな』
「ひっっ、」
萎縮して動けない魔導士の女は、鋭い眼光に捉えられ、もう泣いている。
不動明王は、巨大な剣を女に、……正確には、その手にあった杖に……轟音と共に突き立てた。
杖、木っ端微塵。
周りに居た異世界人はその余波で吹き飛ばされ、岩壁に刺さる。
魔導士の女も哀れ、岩に減り込んでいた。
『原因は潰した。直にその身に宿るだろう。しかし、決してその偽りの力に溺れるでないぞ……』
すう……と、不動明王の姿が消えていく。あやめは最後まで、折り目正しい礼をしていた。
「……どういうこと?ねぇ、どういうことなの??なんでアンタはあるがまま受け入れてるの?」
「金剛家は代々お不動様を信仰してるんだ。……まさか生きてその御姿を見られるとは…。父さんと母さんに報告しよう」
「うん。嬉しいのは分かったから、ちょっと追い付いてない私に説明を」
今まで見た事がない、あやめの歓喜の表情を眺めながら、ルリは問う。全く展開についていけてないのだ。
しゅる、と吹いてきた風が二人を包む。
「この騒ぎは人災だと、お不動様は言っていた」
流れ込んできた力が馴染んでいく感覚に、あやめは体を動かす。
「前々から国同士で戦争中。中々落とせず、業を煮やした片方の王が、魔物を利用するよう命じた」
「できるの?そんな事」
倣うように、ルリも大きく体を伸ばす。
本来は無理だ。しかし、魔物を操るのではなく、狂わせる魔術を作り上げた。それを使い、混乱に乗じて相手を陥落。勝利を収めたが……。
魔物の暴走は止まらず、あっという間に世界中に広まり、
「止め方考えてなかったせいで、今こんな状態?」
「元凶は、あいつら」
準備運動を終え、あやめが指したその先には、壮年の男。ちゃんと聞こえていたようで、思い切り目を泳がせている。本当に、無策無能男じゃねぇか。ルリの目は冷え冷えとしていた。
しかし、それ以上に冷えているは、あやめ。その目は絶対零度。
狂った魔物共を、手に負えないからと、こちらへどうぞと流そうとしていた。それはどういう事か。
あやめやルリの家族親戚縁者諸々……を、生贄に差し出しているようなモンである。
……そのような悪質丸投げ行為、許せるだろうか。いいや、万死に値する。
「っごばぁっ?!!」
異世界召喚三度目にして、モサ……いや、金剛あやめはガチギレ。音速で拳を叩きつけた。
気付けば元凶無能は、岩に突き刺さり。周囲にはひび割れすらなく、ドリルで穴をあけたような美しさがあった。
「力を凝縮すると、無駄な破壊が無いって本当なのね……」
今回ばかりは助ける気も起きないルリは、静観の構えだ。もう色々と麻痺している彼女は、感心するだけ。ともあれ、これからどうするかだ。このまま帰れば、無事魔法陣も閉じて、魔物の脅威も無くなる。しかし、また第二第三の無策無能が現れないとも限らない。
魔物はまた、集まりつつあった。元凶を潰せばいい……そんな簡単な問題ではないようだ。
「一度狂ったら、元には戻らない。だから、こいつらのリーダーに直談判してくる」
「リーダーって、魔王…?何処にいるのよ」
地響きと共に頭上に穴が開き、巨大な竜が咆哮を上げる。降ってくる岩の雨から、ルリは結界で身を守り、あやめは拳でいなす。
「ちょうどいい、あいつに訊こう。走るよりあいつのが速そうだし」
「走るつもりだったの?てか、竜よアレ。戦った事な、」
ルリは見た。ワンパンで竜を鎮めたあやめの姿を。
その背中は、何よりも誰よりも、頼もしく逞しく見えた。……なんか前より強くなってない?ルリはこっそりステータス確認。
姦しかった魔物らも、一瞬正気に返ったように静かになり、あれは本当にニンゲンかと訝しがっている……ように見えなくもない。
相変わらずの全ステータスインフィニティ。それに加えて、『憤怒の加護』がついていた。
「ねー、金剛。不動明王様、アンタに力貸した?」
「うん、助けてくれた時に。怪我が一瞬で治って、今も力が凄い湧いてる。一時的らしいけど」
竜を引きずりながら答えるあやめに、でしょうね、とルリは無表情で頷く。
「こいつ、居場所知ってるらしいからちょっと行ってくる。西園寺は帰り道守ってて」
「私を一人にするの?!アンタみたいに圧倒できないんだけど??!」
「結界張って、入らせないようにしといて。すぐ戻る」
「無理かな!!私も連れてって!!」
例え聖女の力があっても、魔物がわんさか居る場所で一人は、精神的にきっつい。ルリはあやめの腕を掴んで離さない。
何を甘えた事を、と振り払われるかと思いきや、優しくそっと手を握られる。
「大丈夫だ。西園寺は必ず守る。だから、少しだけ待っていてほしい」
あやめは掴まれていた腕を取り返すと、竜に跨り颯爽と飛んでいく。
……魔物らは、竜族を従えるその様を静かに見送った。地下は静寂に包まれている。
戻るタイミングを逸してしまった魔物らの間には、ざわつきが広がり始めた。誰が先陣を切るか……お互いを窺っていると、静かに佇んでいたニンゲンが地面を殴る。
「ぜんっっっぜん!!ときめいてなんかないんだからね!!!!!」
それを皮切りに、魔物らは再び雄叫びを上げ、ぎゃいのぎゃいのと好き勝手暴れ始めた。しかし、モサ子のくせにぃぃぃ!!!……と、地面をだんだん殴り続ける赤い顔のニンゲンには、決して近付かなかったとか。
そして。
魔王城にて、ニンゲンって愚かだねと傍観していた魔王に、竜と共にダイレクトアタックを決めたあやめは、そのまま担いでUターン。三分で戻ってくると、怯える魔王に回収させ、世界に平和が戻った。
「戻せるならこうなる前にやれよ」
「ウン。ゴメンネ聖女。腰ガ重イ魔王デ」
「二度とすんな?」
「ウン。肝ニ銘ジル。ホント、ゴメンネ聖女」
「……」
……ともあれ、二人は無事、元の世界に戻れたのである。
……ざわざわと多くの人で賑わう、芋祭り会場。
奥に広がる畑で芋掘り体験。出来立ての焼き芋を食べられ、更には多くのおいもスイーツを満喫できる、夢のようなお祭りが現在開催されている。
そこにやってきた金剛一家。全員芋好きという事もあり、張り切って芋掘りをする父と母。あやめは一足先に、スイーツ会場で舌鼓。そのテーブルで偶然相席になったのは、ルリである。
「……居たんだ」
「居たら悪い?近所で大きなフェスやってるって聞いたから、行ってみようと思ったのよ悪い?」
「悪いとは言ってない。あと、フェスじゃなく芋祭り」
さつまいもタルトとスイートポテトでーす。明るい笑顔のお姉さんが運んでくる。
「連れは?」
「私が一人じゃ変かしら?」
いもけんぴといもチップスと大学芋でーす。爽やかな笑顔のお兄さんが運んでくる。
「芋好きなん?」
「そこまで好きじゃないわ」
「何で来たん?」
「何処へ行くかは、私の自由だと思うのよ」
焼き芋出来立てだよあっつあぁぁ。豪快なナイスミドルが運んでくる。お茶付きで。
「あのさ、……また、ああいう事あると思う?何か聞いてない?…不動明王様から」
「聞いてない。そんな暇なかった。私、半死状態だったし」
「しれっと重要な事言わないでよ!本当に大丈夫なんでしょうね?!」
「完治。影響もない。心配させてごめん」
「しっっっ……てないし!まぁアンタなら一人でもワンパンで片付けちゃうんだろうし?でも私はそうじゃないのよねっっ。全部補助能力だし?」
いも饅頭といも大福といも羊羹おまちどおさまー。朗らかなマダムが運んでくる。お茶付きで。
「アンタ、私を守るって言ったでしょ」
「言ったっけ?」
「言ったし聞いた!だから、そう!そうしてもらおうと思ったのよ!私ほどの美少女が一人で居たら、周りがほっとかないでしょ、何その眉間の皴!!」
「いもけんぴガ固イダケダヨ」
いもご飯御膳でーす。ニッコリ笑顔がかわいい、お手伝いのお子さんが運んでくる。
「と、ともかく、言ったからには、ちゃんと守ってよね。眉間の皴ふっかいな!!」
「………、…………条件がある」
「心底面倒くさそうな顔しないでよ。何?」
いもけんぴを食べ終えたあやめは、焼き芋を割った。半分をルリに突き出す。
蜜いっぱいの黄金色に、甘い香りが食欲をそそる。
「芋を食え。芋祭りは芋を全力で堪能する為にあるんだ」
「……夏の時も思ったけど、アンタ本当に全力ね。てか、頼み過ぎ!!全部食べれるの?!」
「去年完食したが?」
「嘘だろ?」
「あらー見て父さん、あやめお友達と会ったみたい。なんだか楽しそうねぇ」
「お、獲得した芋を見せたかったが……後にするか。母さん、見て回ろう」
「今年は食べ過ぎないでよー」
……ときめきから始まる友情もある、かもしれない。多分。
コメディー……で、いいんでしょうかね?
未だ分かっていなくて、間違えていたらスミマセン……




