第8話 生徒会に目を付けられたマガツ
(助けて)
そんな俺の切実な声は誰の耳には届かず、この赤いオーラを放つ男にも届かない。
…今、そんな覇気を放って俺に宣戦布告してきてもどう反応すればいいのか分からん。
「ど、どうしました?」
「いや、どうしたもこうしたも言った通りだ!俺と戦えマガツ!」
「な、何故?」
「…何でだっけか?」
何故俺に宣戦布告してきたのか分からず、問いかけてもこの人も分からないと言ってきた。
いやもうどうしろと…。
「あの人ってさ…!」
「うん、レギオン五本柱の力の象徴『オメガ・ゼパル』さんだよね…!?」
「で、相手があのマガツ君…!」
「二人が戦ったらどうなるんだろう…!」
ギャラリーの声を聴き分け、分かったことは覇気を放つこの人は生徒会の五本柱のオメガ・ゼパルという人。
何故俺に宣戦布告してきたのかは何一つわからん。
誰か助けて。
「まぁいい!俺と戦」
「何してるゼパル!」
「あだっ!?」
そう思っていたらオメガ・ゼパルさんの後ろから別の人が出てきた。
あの覇気を気にせず、後頭部に一撃ぶち込んだこの女子…女子なのか?多分制服的に女子生徒だと思うけど。
そんなことはどうでもいい、よく後頭部に一撃入れられたな。俺には無理だぞ。
と認識したと同時に。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
「アダムス様ぁぁぁ!!」
「生アダムス様よ!」
ギャラリーから黄色い声援が湧き上がる。
アダムス様…っていうらしいな、この女子生徒は。
黒髪でポニーテールでいかにも厳格って感じで、制服は軍服っぽい感じだ。
「ゼパル…お前は会長からの指示すらまともにこなせんのか!?」
「だ、だってよぉ!」
「はぁ…おい、貴様」
「は、はい!?」
唐突に鋭い眼光が俺に向く。
「お前がマガツか?」
「はい…」
「ちょっと来てくれ、話がある」
「話…?」
「そこまで警戒しなくていい」
どうやら俺に話があるとのこと。
何で俺に?
とはいえ、話を聞かないと食堂の中に入れないし、まともに飯は食えないと思うし…付いていくか。
「分かりました」
「よし」
俺はオメガ・ゼパルさんとアダムス様の後ろをついていく。
「何でお前はこうも毎度毎度騒ぎを起こさないと気が済まないんだ…!」
「しょうがねぇだろ!マガツと戦えるかもしれない唯一の機会だったんだ!血が騒ぐだろ普通!」
「お前…最近の依頼で単独でコカトリスの群れの大半を叩き潰しただろうが!」
「あんなの手ごたえにならねぇよ!」
俺の前で痴話げんかをしないでほしいんだが…反応に困るのもそうだけど、周囲の視線が刺さる。
なんて心の中で不満を言いながら付いていっていると、一つの席にたどり着いた。
「会長、連れてきました」
「ご苦労」
「やっとですね」
「ほわぁ~、ようこそマガツ君~」
「は、はぁ…?」
「ゼパル、全部話したのか?」
「話そうとしたら忘れた!」
「ですよね」
如何にもキャラが濃そうな3人が既に座っていた。
一人はわかる、確か対抗戦の実況席にいた生徒会長のマーリン・レラジェさんだよな。
んでもう二人が分からん。
片方はゆるふわな雰囲気を醸し出し、もう片方はアダムス様とは違う如何にも堅物ですって感じだ。
…この5人がいったいどんな理由で俺をここに連れてきたんだ?
「座ってくれ」
「…」
ソフィーさんに言われた席に腰掛ける。
「…警戒しているな、マガツ」
「まぁ…急に呼び出されたりしたので」
「すまないな、うちのゼパルが」
「ゼパル…貴様のせいで会長が」
「しょ、しょうがねぇだろ!」
…改めて思うけど、上級生をぶっ飛ばした後にこうも上級生に囲まれた。
警戒せざる負えない。
「安心してください。前のような人たちと同類ではありません」
確かに同類っぽくは無いが…信用できるのだろうか。
こんなことは口で言いたくはないが、キャラの濃さならこっちの5人の方が強い。
「…一応は信頼します」
「よかったです~」
「…ゼパル、反省しろよ」
「うっす…」
「それで、俺に何か用があるんですか?」
「おっとすまない、本題に入ろう。マガツに二つ要件がある、モラクス」
「はっ。マガツ、これを」
モラクスというアダムス様とはまた別の真面目そうな人に3枚の真っ二つに切られた学生証を渡される。
「これは?」
「君がぶちのめした三人の学生証です。今頃は学園から去る準備をしてるかと」
「…!?」
一瞬、意味を理解することが出来ず固まった。
学園から去る準備…だと!?
「あの三人に関しては元々、結構問題児でした。無断欠席、授業妨害と問題をあげるときりがないくらいに。そんな時に入学式にて新入生を標的にした虐めを行おうとしたときに君が助けたと…1年首席のラム・アロケルが言っておりました」
ラムさん…首席だったのか、知らなかったな。
まぁだからといって何も思わないが。
「流石に我ら生徒会も苦労をしていましたが今回の件で三人の除籍を先生方に掛け合った結果、先生方も同意見だったようで退学に至りました。まずは生徒会『五本柱』を代表し、『ハワード・モラクス』が感謝します。ありがとうございました」
「は、はぁ…」
喜ぶべきなのか、罪悪感を感じるべきなのか分からない。
…いやまぁどうでもいいか。先に弓を引いたのはあっちだ。
矢は俺に当たってないけどね。
「それで二つ目が、こちらです」
次に渡されたのは『生徒会加入届』と書かれている一枚の紙。
いや書類か…ん?加入届?
(さっきキャシーさんとシェリド君が言っていた生徒会の加入届…え、入れるの俺?)
推薦って中々もらえないって言ってなかったっけ!?
確かこの五人の推薦が無いと入れないとかなんとか…。
「正直、貴方は今の生徒会に欲しい人材です」
「あぁ!強いしな!」
「お前はそればかりじゃないか…」
この場にいる五人は俺をそれなりに評価してるってことか。
だが
「…」
俺は静かに左腕を見る。
確かに使える人材かもしれない。かもしれないが…俺は力を培い家族を一人残らず消そうとしている人間だ。
生徒会という生徒に示しがつくような存在に俺という異端は似合わないだろう。
なら、俺の答えは決まっている。
「お言葉ですが、俺はこれにサインをすることはできません」
「「「「!」」」」
「…何故か、聞いてもいいか?マガツ」
俺は生徒会に加入するつもりはないことを口にすると5人とも目を見開いて小さく驚く。
すると、マーリン生徒会長は俺に理由を聞いてくる。
「マーリン生徒会長含め皆様に評価されたと自負していますが、俺は…生徒会に見合う存在ではありません」
「存在?」
「詳しくは言えませんが、俺は生徒会に相応しくないです」
「君が決めるべきではないことだとは思いますが」
「入学式で何のためらいもなく平気で上級生をぶっ飛ばす俺がふさわしいとでも?」
「…ふむ」
モラクスさんに正面を切って言い放つ。
「…尚更気に入るぞ貴様」
「へ?」
俺の隣に座ったアダムスさんがそう呟く、いや…目付きが鋭いままなんだが。
「まぁ無理にとは言わない。それにまだ時間はある、もう少し考えてからでいい」
そういってマーリン生徒会長は俺に生徒会加入の書類を俺の手に握らせた。
…逃がすつもりはないってことか。
一応、考えておくか。他に気になる部活動とかなければな。
「すまないな、時間を取らせて」
「…では」
そういって席を立とうとした次の瞬間。
――バァァンッ!!
「!!?」
爆音が鳴り響き、食堂の後ろから閃光が差し込んだと同時に窓ガラスが全部割れて破片が飛んでくる。
「!」
防御…いや間に合わない!
それにここには他の生徒もいる。俺の魔法に巻き込まれたら終わりだ。
魔剣を抜け!
「バルムンクッ!!」
その名を叫ぶと同時にダインスレイヴ、裁定剣とは違う黒い刀身に剣の柄の部分にユリの花のような刻印が刻まれている魔剣を握りしめた。
「叫べ…バルムンク!」
魔剣を両手で握りしめて、思い切り窓ガラスにバルムンクを横に薙ぎ払うと同時に柄に刻印されたユリの花びらが散り…バルムンクから紫色のオーラと強烈な音を響かせると同時に音の斬撃が放たれる。
――ギギャァァァァァッ!!!
飛んできた窓ガラスの破片たちはバルムンクから発せられた音の斬撃により、空中でガラスの破片は分解が起き、食堂の外へ飛んでいった。
「ふぅ…バルムンク、抑えろ」
バルムンクのユリの花は花びらを付けなおし、また咲き誇った。
『叫ぶ亡者の塊:バルムンク』…君たちの復讐心は目を見張る。
俺と似ている。
しかし、何が起きた?窓ガラスが全て割れるほどの衝撃って…。
バルムンクを握りしめながら割れた食堂の窓から外を見る。
そこには…。
【グルルル…!!】
「何だあれ…!?」
全身が炎で纏われている龍が悶えながら学園の校庭に鎮座していた。
実物を見たことはないが、前に勉強の一環で見た図鑑に酷似している奴がいる。
アレは…『サラマンダー』だ。
確か付近にサラマンダーが住まう巣があったはずだ。けどサラマンダーの性質上、よほどのことがない限り住処の外に出ることはない。
…そうなるとよほどのことがあったってことか?
「流石だ、マガツ」
「!」
俺がサラマンダーの様子を伺っていると俺の横にマーリン生徒会長が立ち、共にサラマンダーを見る。
「私には見えていたぞ。窓ガラスが割れ、破片がこっちに向かってきている間に自分の身を守ることも考えつつ、この場にいる全員を守ると一瞬のうちに考えていたことを。その思考の結果が、その剣か」
「…まぁ」
俺のバルムンクを見ながらマーリン生徒会長はそう話す。
「マガツ」
「はい」
「お前は生徒会という器に自分自身が相応しくない、そういったな」
「さっき言った通りですが…」
「それは過去の影響か?それとも目的か?」
「…言えません」
「別に言わなくていい、それにそこまで踏み切る気もないからな。だが一つ言いたい」
マーリン生徒会長は俺の目を見つめながら言った。
「そんなことはどうでもいい」
「は?」
「存在だとか相応しくないだとかどうでもいい。私はお前を生徒会に入れたい、ただそれだけだ」
何を言ってるんだこの人はと俺は頭の中がおかしくなる。
ただ俺を生徒会に入れたいだけって…我が儘なのかこの人は?
「別に私も他のアイツらもお前の存在が似合わないとか気にしていない。というか気にしない、私たちには私たちなりの道がある。一蓮托生というわけでもない」
「…」
「しかし、お前は他の生徒を守るという行動に出た。本来先生方や動きやすい私たちがやるべき行動をやったんだ。『存在意義は無く』とも『器』はある、それだけで十分だ」
小さく微笑みながらマーリン生徒会長は話す。
一蓮托生ではない、俺の行動が生徒会にあっていることもわかった。
別に存在がどうでもいいことも…良いのだろうか、俺は。
「会長、あのサラマンダーは…」
「恐らくあの集落から出てきた個体だろう…どうしたものか」
「よぉし…ぶっ飛ばすか!」
「待て待て、あの集落の人たちが黙ってないだろう」
「しかし、このままにするっていうのも」
「そうですね~どうしますかぁ~」
「…」
生徒会の五人が話している間に俺はサラマンダーについて考えていた。
サラマンダーという個体はよほどのことがない限りは住処から出ることはない。
そして何らかの影響でサラマンダーは住処から飛び出し、このレギオンに来た。
何の因果で、何の目的でここに来たのかが分からない。
「…」
魔法で確認してみるか。
「…バイタル」
補助魔法『バイタル』
相手の状態や病気などを確認する攻撃魔法とは違う補助魔法。
…攻撃魔法とは違い補助魔法はフレイ、フレイヤ、フレイドーム、フレイバーンのようにレベルごとの魔法の名前が変わることはない。
しかし、練度が上がると色々と出来ることが変わる。
例でバイタルの練度が上がると相手の状態、怪我、病気だけではなく感情とかも読めるようになる。
今のサラマンダーにある感情は『憤怒』『焦燥』…そして『激痛』。
何らかの影響を受けて、この三つの感情が働いている。
んで、バイタルの結果…頭部に『鱗諸共抉られたかのような』傷があることを確認した。
(頭部を治して気分を落ち着かせれば、一応鎮圧は出来そうだな)
俺に鎮圧する意義はないかもしれないが…一撃でも喰らえばおしまいの対格差でもやるしかない。
何のかかわりもないが、このサラマンダーは殺してはいけない気がする。
何かの影響で怒り狂っている。この状態で誰かを殺せば…サラマンダーは訳を話すわけもなく殺されてしまう。被害を抑えつつ、落ち着かせるにはやるしかない。
それにここはレギオン。マルバス様の学園だ。
まだ返せていない恩の為にこの学園を守らなきゃならない。
そう思い、俺は食堂の割れた窓から飛び降りた。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




