第3話 新クラス及び新しい仲間たち?
翌日。
俺の身につけるものは制服だけに限らず、教科書とか魔導書とか授業で使う物たちが詰め込まれた鞄が追加された。
…今更増えようがどうでもいいが。
レギオンに登校し、校舎前に張られているクラス表を確認する。
(1年2組か)
俺は1年2組だそうだ。
周りを見ると旧友とクラスが同じで喚起する者や、逆に自分一人だけ別クラスになってしまい絶望している奴もいる。
俺はどっちにも属さないけどね。友人はおろか知り合いも居ないし。
まぁここで突っ立ってても意味ないし、さっさと教室に向かうとしよう。
(大講堂もそうだけど校舎内も滅茶苦茶綺麗だな。掃除が行き届いている)
流石ローダムの国立魔術学園。
そりゃマルバス様も大切にするわけだ。
(…でだ)
さて、いい加減触れるか。
「ねぇ…あれ…」
「あ…マガツ君だよね…」
すっごいひそひそと聞こえてるんだよな俺の話が!しかも上級生は俺を見つけると避けて通るし…俺のせいじゃないだろアレに関しては!
喧嘩を吹っかけて、来てはないけど明らかに嫌がる行為をしてたし、それをやめなかったあの三人が悪い!俺は悪くない!俺は悪くない…よな?
ヤバい、自分のやったことに自信が持てなくなってきた。
(これ以上、俺の評判を下げるようなことが起きなければいいが…)
と心の中で念じながら教室に向けて歩く。
「2組、2組…あった」
マップと教室前に張られている学園クラスの標識を確認しながら歩いていると『1年2組』を見つけた。
ガラガラッと扉を開けて中に入る。
「…」
多少の会話があったが俺が入った瞬間、スン…と教室内が静まった。
(居心地悪くなるだろうが…!)
俺のせいで静かになるのはちょっと勘弁してくれ…罪悪感がすさまじい!
こうもうちょっと喋ってていいんだぞ?俺に気にせず!
何て…言えるわけもなく。
扉の前で突っ立ってるわけにも行かないので、黒板に張られている座席表を確認する。
席が5列あって、俺は一番右の一番奥。
…つまるところ、ここから一番遠い席。そう、ここからだ。
(視線が刺さる…!)
何でこう地獄が続くんだよ…!
俺が何したって言うんだ!ただ上級生三人を殴り飛ばしただけ…。
(十分か…。)
理由にしては十分すぎるか、俺もそんなのがいたら警戒する。
とりあえずできる限り目を合わせないように自分の席に向かう。
…すると
「あ、あの!」
「!?」
急に俺の視界の中央に現れる女子生徒。
えっと、確か。
「ラム・アロケルさん、だよね?」
「は、はい!えっとその…お、おはようございます…ま、マガツ君…」
「え?あぁ、おはよう?」
何故俯きながら俺にあいさつしたんだ…?若干プルプル震えてるし。
まさか、目を合わせないように!?
取って食われると思われているのか!?
はっ!?そうだ、昨日のアレのせいか!?よく分からないままラム・アロケルさんがもじもじしてた時、俺が意識せずに変な事をしたせいで目を合わせないようにしているとか!?
…いや昨日のこともあるし、あの上級生共が逆上したせいで…!!
「えっと、何で俯いている?」
「えっ!?それはそのぉ…」
「まさか、上級生か?何処のどいつだ…!!」
「ち、違うよ!?」
「なら何で…?」
「うっ…あの…その…!」
「???」
一生混乱したままなんだが!?
「マガツ君?」
「えっ?」
「ダメじゃない、女の子には言えない秘密もあるんだから」
「は、はい…?」
今度は一風変わって大人っぽい女子生徒が横から入ってきた。
女の子には言えない秘密もあるのか。
「あー、その言えない秘密だったか?」
「…うん」
「すまない…変に聞きこんで」
こればっかりは俺が悪い。
秘密があると知らずに変に聞きまくってしまったからな。
「だ、大丈夫…言えない私が悪いから」
「…なんか顔赤くないか?」
「ふぇっ!?」
「熱がとかあるんじゃ…?」
なんか顔が赤い気がして少し態勢を低くしてからラム・アロケルさんのおでこに手を添える。
「熱じゃない…?」
「は、はわわわ!?」
「じゃあ何で顔が…?」
「ま、マガツ君!!」
「はい!?」
急にラム・アロケルさんが声を荒げておでこに添えていた俺の右手を握りしめた。
「その!よろしくお願いしますぅ…」
「あ、あぁ。同じクラスメイトとしてよろしく?」
「では…」
そういって頭から湯気が出ているように見えるラム・アロケルさんは自分の席に戻り、座って…机に突っ伏した。
「え、いや…え?」
「マガツ君って結構紳士的だけど距離の詰め方に遠慮がないのね?」
「…俺が悪いの?」
「うん、でも正直そういう男性もカッコいいと思うわ」
「ありがとうございます?…そういえば貴方は?」
「『キャシー・グレモリー』よ、よろしくねマガツ君」
「よろしく…」
会話に入ってから一切、名前とか知らなかったけどこの大人っぽい女子生徒は『キャシー・グレモリー』さん。
…いやぱっと見、同級生には見えない風貌。正直、1か2歳年上でも違和感ないぞ。
――キンコンカンコーン。
と学園のチャイムが鳴り響いた。
「あら、今日って授業あるのかしら?」
「あるんじゃないか?一応普通に学園が始まるんだろ?」
「いえ、噂程度だけど最初の授業は同学年の顔合わせをするって聞いたのよ」
「顔合わせ…オリエンテーションみたいな感じか?」
「多分ね。あ、そろそろ座りましょう?」
「あ、あぁ」
先生が来る前に指定された自分の席に座る。
そして俺が据わったと同時に教室の扉が開き
「皆さん、席に…座ってますね。よかった」
薄い水色の髪色をして、いかにも名簿のようなものを握りしめた女性が入ってきた。
まぁ先生だろう。
「皆さん、魔術学校レギオンにようこそ!私は1年2組の担任『ジェシカ・ベリト』です。授業としては一般魔術の教師を担当しています。よろしくお願いしますね」
ぱちぱちと拍手が起こる。
俺も拍手したいが…。
(この腕じゃ無理だな)
如何せんこの腕だとガシャガシャと義手の音が響くし、手を叩いたら叩いたて右手が痛くなる。
ジェシカ先生には申し訳ないけど、両手での拍手はできないけど片手の拍手ならギリできるので片手で拍手する。
「さてこのまま皆さんの自己紹介となる、はずだったんですが…」
「?」
名簿を机の上にポンとおいて一呼吸入れてからジェシカ先生は話し始めた。
「これから1年生全クラス対抗試合が始まります」
「…???」
「勿論、これは1年生同士の顔合わせを含めたオリエンテーションですので肩の力を抜いて望んでください。あ、それと上級生たちや他の教員の皆さんも見てますが気にせず」
それで気にせずは無理があるんじゃなかろうか…?
1年生全クラス対抗試合?いきなり戦うの俺ら!?
…キャシー・グレモリーさんが噂で聞いてたオリエンテーションってこれかよ。
とんでもねぇな。
「それで試合が始まる前に、まずはルール説明をします」
ジェシカ先生がポンと黒板に何か魔術をかけると黒板に付けられたチョークが勝手に動き出し、何かを描き始める。
…というかジェシカ先生、詠唱してなかったな。かなり魔術に手慣れていると分かる。
「ルールとしては1年生全クラスでバトルロワイヤル方式で戦い、最後に生き残ったクラスが優勝となります。フィールドに出れるのは二人までで一人がリタイアもしくは降参したら次の人が出るといった形になり、出撃できる人が0になったクラスは敗退となります。そして相手をリタイアさせる条件は魔法での攻撃で一定のダメージもしくは気絶させたらです。なお魔術は専用魔術も使ってもいいこととしますので本気で戦っちゃってください!」
「…」
魔術での攻撃か。
…魔術は一旦禁止だから専用魔術で、ぶった切るしかないな。
「では、出撃順番を決めましょうか」
とクラス全員で出撃順番を考える…はずだったんだが。
「とりあえずマガツ君は最後として」
「ちょっと待て」
いの一番に俺が一番最後にさせられかけたので止める。
「な、何で俺が最後なんだ…?」
「だって多分、このクラスの中で一番強いから?」
「そうとも限らないだろう!?」
「でも魔術使わずに上級生に勝ってたじゃない」
「うんうん!」
キャシー・グレモリーさんが俺の強いと思われている理由を話し、その横でラム・アロケルさんがヘドバンしてるんじゃないかってくらい首を縦に振っている。
「…一応聞くけどさ、俺を最後にするのは何でだ?こういうのって一番最初に出される気がするけど」
「最悪負けてもマガツ君が全部跳ね返してくれるから?」
「だよなぁ!」
そんな気がしたよ!
前半戦負けても後半戦を全部俺に任せる気まんまんじゃないか!
「じゃあマガツ君が最後で」
「先生、待って。まだ…まだ俺が最後って決まったわけじゃないですよ?」
ジェシカ先生が決定しようとしたので止めにかかる。
「でも皆さんマガツ君を最後にしようとしてますけど」
「…」
その言葉が信じられず後ろを振り向くと…もう全員腕を組んで縦に頷いていた。
…。
「…最後でいいです」
「では一番最後はマガツ君で」
クラス内が『やったー!かったー!』とか『これで優勝は俺たちの物だー!』ともうすでに勝つ気満々である。いっその事、俺を出撃させず勝ってくれよ。
(責任重大だな…)
俺の悪名の評判で影響で強いと思われるのはとてもうれしいが、その分の重圧が降りかかっていることに流石に不満があるが、これからこのクラスメイト達と過ごすわけだし…相手を潰せばいいだけ、それにただのオリエンテーションだしな。
一つの成長だと思って頑張るか。
◇◇◇
和気あいあいとしている2組の教室。
では1組と3組はどうなのかというと…とてつもなく静寂に包まれていた。
原因はその1組と3組にいるある二人のせいだった。マガツの理不尽な悪名に続く悪名をもつ二人が勝手に仕切り、ある目的を告げた。
『2組を狙え』
『何が何でも2組を苦しめろ』
その二人はマガツが気に入らなかった。
入学初日から学園の話題になり、上級生からも恐れられる強者の悪名。
…マガツ本人はそれが嫌だが。
二人はそれが気に入らなかった、いわゆる嫉妬。ただ首席を助けただけなのに、ただ上級生が弱かっただけなのに。
それだけの理由でクラス全員を巻き込んで2組を潰そうとし、オリエンテーションというなの顔合わせという機会を完全に潰す気なのである。
1組と3組に狙われていることもつゆ知らず2組は和気あいあいと話し合っている。
…この戦いはどうなるのか。
それは神のみぞ知る。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…