第1話 ローダム国立魔術学校レギオン、入学
魔術学校レギオン内、生徒会室にて。
「本日、新1年生が入学ですね~」
「遂に…か」
「新しい獲物の品定めだ!!おい、モラクス!今年の新入生はどんなのがいるんだ!?」
「口を慎め、ゼパル!」
「いいじゃねぇか!新入生に期待を膨らませたってよぉ!会長だってそうだろ?」
丸の机を囲み、十人十色のように個性の強い5人が話し合う。
ショートボブのほわほわとした雰囲気を持つ女、眼鏡をかけ、魔術の本や勉学用の本だけではなく新入生の一人一人の書類に目を通す男、赤い髪を靡かせ、豪腕を持つ男、刀を携え厳格に判断する女。
そして
「…多少の期待はある、が。どうなるかは分からない」
黒の雷、そして禍々しい覇気を放つ女。
この五人こそ、魔術学校レギオンの生徒会の『フィフス・トップ』。
話題は本日行われる入学式。その新入生の『品定め』だ。
予め、新入生の実力や出身、専用魔術に目を通し目星をつけ生徒会に入れさせる、というのが品定めの一環。
「どうなるかって?どういうことだよ」
「年々上級生や我々の一部の同級生が新入生をとやかくする馬鹿が居る。わかるな?」
「いつものですね~」
「騒ぎを起こさなければいい物を、勝ち目など無いというのに」
4人が呆れたかのようにため息をつく。
最近のレギオン内でいわゆる新入生虐めのようなものが横行していた。
そのたびに生徒会が対応していたのだが完全に全てを対応することはできない。
「…使える奴が欲しいな」
「こればかりはそうですね」
「出来れば早くてカッコいいのが欲しいですぅ~」
「それはナベリウスが今欲しい召喚獣の話じゃないか?そんなことよりも強さも必要だろう!」
「お前は強いやつと遊びたいだけだろ…まぁ必要だが判断力も必要だ。できれば礼儀正しく上下関係なく噛みつけるやつが欲しい。会長は如何ですか?」
「面白そうなやつであれば何でもいい。元々お前たちも面白そうだから入れただけだからな」
「お、面白そう…!?」
「ま、面白そうでも何でもいいぜ。実際ここにいても面白いしな」
「それは肯定です」
「うぃ~…」
「しかし即戦力が欲しいのは事実だ。何処かに居ればいいが」
「お言葉ですが簡単には見つからないかと…」
「まぁそりゃそうだな。てかそろそろ時間じゃないか?」
「そうですね~、入学式に行きましょうか~…」
そうして生徒会のフィフストップはレギオンの大講堂に向かう。
生徒会の新しい人材含め、新入生がいじめに合わず、そして余計なことが起きなければいいなと思いながら。
だがしかし、もうすでに。
「…!」
その三つが一気に起きようとしていた。場面は変わり、大講堂に向かうマガツ。
そして…。
「なぁ一年なんだろ?ちょっと来いよ」
「離してください!」
「お、君結構かわいいじゃん」
明らかに複数の上級生に新入生虐めに巻き込まれている女子生徒を見かけた。
「…」
マガツの自覚していないちょっとした良い所でもあり悪い所。
彼は復讐心を募らせた結果、非常に情に流されやすく情も厚い故に目に映る人が困っていると無条件に身体が動く時がある。
「嫌がってるだろ?離してやれ」
「あ?」
「誰だお前」
「別に。誰だっていいだろ?」
更に困っている人を助けた際に、加害者が反省及び謝罪の言葉がない場合。
「何だとこの野郎…!」
「おい、コイツ1年じゃね?」
「は?おいおい、こんな生意気なのが1年なのか!?」
「わざわざいじめられに来たのかよ?はははっ!」
彼は本能的に動いてしまう。
――ガシッ。
「あ?」
上級生の一人の胸倉をつかみ
「ふんッ!!」
「は」
上に放り上げ地面に近づいてきた瞬間、マガツは放り上げた上級生の後頭部を掴み、顔面を叩きつける。
そう、マガツは『手が出やすい』。
「ぶっ!?」
「は、はぁ!?」
「騒ぎを起こしたくなかったんだけどな…ま、しょうがないか」
「て、テメェ!!」
「君、先に大講堂に行って」
「え…?」
「いいから、ね?」
「は、はい!」
マガツは先に女子生徒を大講堂に逃がした。
「ヒーロー気取りか!?」
「んなわけねぇだろ」
「その舐めた口を今すぐ縫い合わせてやる…!!」
気絶した上級生以外が魔術を構え、マガツに向ける。
(…魔術使っちゃダメなんだよな)
マガツは魔術を向けられているが、そんなこと気にせず自身の左腕を見る。
マルバスから魔術の使用を禁止されている為、上級生たちに魔術を使うことはできない。
というか使ってはいけない。もしマガツが魔法を使えば上級生たちは確実に無事じゃすまないからだ。
専用魔術の使用も考えたが、こんなところで使っていいのかすら分からない為使わないと判断した。
「…仕方ない」
マガツは構える。
己の今使える武器を。
「さぁて…やるかッ!」
ーーー
しばらくたち、大講堂。
新入生が大講堂の最前列に集められ、その後ろに上級生、更に後ろに来賓や保護者たちが集まっていた。
「お待たせしました。これよりローダム国立魔術学校レギオン、入学式を始めます。一同、起立」
そうして入学式が始まり、学園長挨拶、生徒会長挨拶、来賓と進んでいったがここで異変が起きる。
「では新入生からの挨拶です。新一年生、首席の『ラム・アロケル』、壇上へ」
しかし返事もなく、誰も上がってこない。
「…え?ラム・アロケル?」
司会進行をしている生徒も予想外の事態に一瞬素っ頓狂な声が出てくる。
ざわつく大講堂内。
「…モラクス。本日、ラム・アロケルの欠席の報告は貰ったか?」
「いいえ、教員方からの報告もなかったのでそれはあり得ないかと」
「遅刻か?」
「いえ、首席であるラム・アロケルの情報を見た限りでは遅刻はあり得ない」
「でもそうなってくると~」
「まさか…」
生徒会のフィフストップは最悪の予感を感じ取る。
大講堂に向かっている最中に虐めに合った可能性が高い。
「…マルバス様、もしかすれば」
「かもしれないな。生徒会を動かせるか?」
「命令とあれば」
「分かった、では」
とマルバスが生徒会に新入生であるラム・アロケルの捜索を命令しようとした次の瞬間。
――バァンッ!!
大講堂の扉が勢いよく開かれ、息を切らした女子生徒が入ってきた。
「はぁ…はぁ…」
「え、えっとラム・アロケルさんですか!!」
「そう…です!!」
「ち、遅刻ですか!?」
「遅刻なんですけど…さっき上級生に詰めれていて…それで男子生徒が庇ってくれて…!」
遅刻した理由を話すラム。
「やはりか…!!」
「めんどくせぇな…よぉし!行くか!」
「面白そうにするんじゃない!良いから行くぞ!」
約1名、目を輝かせながらフィフス・トップが動こうとしたら
――ブゥンッ!!
今度は開かれた扉から人が二人、吹き飛んできた。
吹き飛んできた人は上級生の制服を着ており、一人だけ顔面が原型をとどめていないほどボコボコにされていることが確認された。
残りのもう一人も中々に酷い。顔面の半分が変形していて激痛のあまり唸りながら蹲っている。
そして
「はぁ…魔術を使ってその程度かよ…」
次に入ってきたのは上級生の顔面を鷲掴みにして引きずりながら入ってきた新入生の制服を着ている生徒。
そう、マガツである。
「ば、化け物が…!」
「俺を化け物呼ばわりするな。お前たちが弱すぎるだけだ」
「な、なんだとぉ!?」
「魔術を使ってもなお俺に傷1つ与えられず、一方的に蹂躙されているだけのお前たちに『弱い』以外の言葉があるか?」
「きざま…!!こ、後悔させてやる…!」
顔面が半分変形している上級生が詠唱し始める。
「フレ」
詠唱が終わり炎の魔法を唱えようとしたが。
「――キヒッ…!!」
「へ」
その上級生にとっての死神は笑顔のまま既に懐に入り込んでいた。
そして魔法を唱えるよりも先に、彼の顔面に死神の鎌が振り下ろされた。
死神の鎌という名の空中蹴りが。
――メギャアァッ!!
崩壊していない方の顔面がぶっ壊され、歯が何本か吹き飛んだあと壁に激突。
「…ふん」
足を振り払い、脚についた血痕を振り払った。
その姿を見た教育陣、新入生上級生は驚いたが…フィフス・トップのみ反応が違った。
「ふむ…『マガツ』ですか」
明らかに使えそうで
「ほわぁ~!」
中々にかっこよく
「お、おいおい…!」
明らかに強そうで
「ほぉ…?」
上級生だろうと何の気なしに噛みつき
「…ふむ」
マガツを生徒会に入れると面白そうである。
どうみたって新しい人材の条件に合致しているというより合致しすぎている。
「やはり、魔術が無くても強いな…マガツ」
マガツの姿をみてマルバスは一人、子の成長を感じつつ運動神経のとんでもなさに若干引いていた。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
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超絶不定期更新ですがご了承ください…