第13話 魔剣を振るうモノとして
武具店のひと悶着があった後。
正式にあの店主は逮捕されることになった。
まぁ…理由は十分すぎるな。詐欺まがいの武具の提供、納める武具の出来の悪さ、被害とその他もろもろ。
そのおかげか繁華街はいつも以上に活気にあふれていて、全体的に冒険者の負傷が減ってきているらしい。
あの店主だけで負傷が減ってきたって分かるなら…どんだけ駄作を売ってきたのも同時に理解できる。
それとあの空き地には新しい武具店がオープンした。
それで今日は…キャシーさんと一緒にお邪魔させてもらう事になった。
ついでに
「初めてね、この4人で出かけるなんて」
「それもそうだね、けど…お出かけする箇所が武具店って」
「いいんじゃないか?僕も丁度、買おうかなって思ってたし」
ラムさんとシェリド君も一緒だ。
前の一件で二人は武具を買えなかったらしく、それなら4人で一緒に行こうって話になった。
「でも、今回は武器のスペシャリストが居るから」
「…何で俺を見る?」
そういいながらキャシーさんは俺に期待の眼差しを向けてくる。
「だってあそこまで詳しい人ってそこまでいないじゃない」
「俺は魔剣を使ってるから詳しくなっただけだ。専門的なのはまだ分からないぞ」
「でも知識はあるでしょ?」
「…それはあるけど」
「じゃあスペシャリスト」
「暴論」
なんて駄弁りながら歩き、新店舗の武具店の扉を開けて中に入る。
トンカンと金属と金属を打ち付ける音が店内を響かせ、壁や箱の中には剣、槍、ハルバードなど武器がたくさんある。
「む、いらっしゃ…って君、マガツ君?」
「え?」
店主らしき人と目線が合ったタイミングで俺の名前を言われた。
何で俺の名前を?
「確かにマガツですけど」
「やっぱりだ!いやぁ前の事は本当に助かった…元々は俺の店なんだが前の奴が急に自分の店に改造したせいで俺の武具店が消えちまったんだよ。でもマガツ君が追い払ってくれたんだろ?」
「追い払ったって判定なのかはわかりませんが…」
「どちらにせよ助かった、本当にありがとう!それで…何か買いに来たのかい?」
「今日は後ろの友人の三人の武具について、ですね。俺は武器を持てないので…」
「持てない?そりゃ何で?」
「俺の力に耐えれる武器がないです」
「あー…なるほどな。なら試し切り」
「多分破壊しますよ」
「どれだけ怪力なんだ…!?」
なんて話した後に4人で武具について話し合いながらどれを買うべきか考えていた。
あと、俺たち以外にも客は居る。
やっぱり悪評が消えた分、足を運びやすくなったんだろう。
「うーん、ナイフに剣、あとは槍か…」
「私はそこまで力がないし」
「私も。マガツ君のおすすめは?」
「力が無くても触れる武器ならショートソードとかかな。ナイフよりも長くてソードよりも刀身が短い剣。ナイフに比べると取り回しは実戦的だし、刀身が短い分、力がない人でも勢いに身体が持ってかれにくくなる」
「おぉ…凄い説明、流石スペシャリスト」
「もうツッコまんぞ」
「なら僕は何がいいんだろう…」
「シェリド君は力に自信は?」
「そこそこかな。でも大剣みたいな大きい剣を振り回せるほどの力はないかも」
「うーん…別に剣に固執しなくてもいいから他のもどうだろう。例えば槍は?」
「槍か、剣に比べてのメリットデメリットってある?」
「やっぱりリーチだな。槍は刀身が先についてるし、リーチがある分、敵との距離を開けやすくて自分の距離感を作れる。デメリットとしては至近距離に入られるとどうしようもない事と剣に比べて技量がいる事」
「流石、スペシャリスト。分かりやすく聞きやすい説明」
「…」
「そんな不服そうな顔しないでよ、褒めてるから」
そんなわけで耳にタコができるほどスペシャリストという単語を聞かされ続け、何とか三人は自分の武器を購入した。
ラムさんはショートソード、キャシーさんは普通のソード、シェリド君はランス。
うん、きちんと自分にあった武器を買ったようで良かった。
「毎度アリ!また来てくれな!あぁ、それとマガツ君?」
「?」
「改めてありがとう、また来るときは何かお茶でも出させてくれ」
「そこまでしなくていいですよ、きちんとした武具を売ってくれるだけで十分ですから」
「む、そうか?」
「それで十分です。では」
「おう!また来てくれ!」
そうして俺たちは武具店から退店した。
「これが僕の相棒かぁ…何か嬉しいな。初めてプレゼントをもらった時みたいな感じがする」
「私も…何だろう親近感?」
「そういえば、マガツ君は武器を買わなくていいの?」
「振ったら壊れる」
「あー…さっきの会話はそう言う事なんだね」
俺の発言に納得できたようにキャシーさんが肯定する。
「ね、ねぇ…マガツ君」
「ん?」
すると、ラムさんが話しかけてきた。
「剣の振り方って…どうすればいいの?」
「剣の振り方か」
「あぁ、マガツ君って魔剣を使ってるから振り方を知ってるよね」
「いや…気にしたことないな。騎士道とはかけ離れた振り回し方するけど」
「それも分かるのは何でかしら…」
「あー…うん」
「…確かに」
「でしょ?だから剣の振り方を教えることは出来ないんだよ」
残念ながら俺は剣術を教えることが出来ない。
基本的に俺は魔剣を振り回し、持ち前のパワーと魔剣自体の能力で力押しするかのような戦法だ。
この三人には俺の剣の使い方は明らかに合っていない。
「でも志みたいなのってないの?」
「志?」
「うん、こういうことを思って剣を振るう…みたいな」
剣を振るう上での志か。
(…復讐心、憎悪を持って敵をなぎ倒す。慈悲はなく相手の命を刈り取る)
…騎士道とかけ離れた剣を振りかざす俺の志。
申し訳ないが教えることもできないし、あまりにも愚者の振るい方だ。
けど…一つ。
俺なりに教えられる志がある。
「一つ、教えられるのはあるな」
「お?それは、何?」
「それは」
そう言って俺は振るう上での志を話そうとしたら
「キャーッ!!」
「ん?」
後ろから女性の悲鳴。音の鳴る方へ首を回すと
「ひ、ひったくりよ!誰か私の荷物を取り返して…!」
「ひったくり!?」
「ど、どうしよう…」
「警備局を呼んできても逃げられるだろうし…」
そうか…ひったくりか。
「丁度いいな」
「マガツ君?」
「剣を振るう上での志を1つ教えよう」
丁度いいことに俺が剣を振る上で気を付けていることが目の前で起きた。
ここはひとつ、教えると一緒にひったくり犯をぶった切ることにしよう。
「叫ぶ亡者の塊…!」
俺はバルムンクを抜剣し、構える。
「剣とは自分自身を守る力でもあり、武器でもある。剣は自分自身を見せる…故に剣とは鏡だ」
バルムンクに刻まれたユリの花びらが散っていき、魔剣の刀身に紫色のオーラが纏われていく。
「傷つけば傷つけるほど、剣は血で染まっていき、剣に映る自分すらも赤く染まる」
纏われている紫色のオーラが刀身の二倍くらいまで伸びていき、バルムンクを空へと伸ばし、ひったくり犯をロックオンする。
「…剣という自分を守れる力だという事に固執し、人を傷つける力であるという事も忘れるな」
そしてそのまま俺は…紫色の刀身を地面に叩きつけ
「叫べ…バルムンクッ!!」
――ギギギャァァァァァッ!!
バルムンクは叫び声を響かせる。
紫色の音の斬撃はひったくり犯を目指して道を引き裂きながら、突き進み
「ぎゃあぁぁぁぁ!!?」
ひったくり犯に直撃すると同時に、音の爆発が巻き上がる。
安心しろ。あくまでひったくりであり、罪を償うと信じて致命傷は避けた。
まぁ…衝撃で吹き飛び、爆音を聞いた耳は身体を起こすのを拒否するだろう。
バルムンクを握りしめながら、何とかして立ち上がろうとするひったくり犯に一歩一歩と距離を縮める。
「あぁぁぁ…ぐぞ…!?」
「起き上がれないだろう?安心しろ、殺しはしない。罪を償うと信じたからな」
「がぁぁぁ…!」
…ほぉ?
蹲りながら何かを呟いている。
「――アイズ!!」
「そんな行動を俺が予測していないと思っていたか?」
「…あ”?」
視界一杯に氷塊が広がり、それが俺に襲い掛かってくるがそれを裁定剣で叩き壊す。
呟いている文言は氷魔術の詠唱だった。
騙し打ちのテクニック…いいな、それ。
やったことがないから参考になる。
「…まぁ黒だろうな。最初はアンタを切ってからさっきのひったくりが嘘か本当かと判断しようとしたが、俺に攻撃を仕掛けたってことはそういうことでいいな」
「ちょ…ぢょっどまっでぐれ…!」
「待たない。それに、お迎えも来ている」
そう言って俺は道の先を見る。
そこには…
「あそこだ!」
警備局がこっちに向かって走ってきている。
「じゃあな、迎えの人によろしくって伝えてくれ」
そう言い残し、俺は倒れた男から離れて友人たちの方へ足を進める。
何か喚いていたが…悪いな、バルムンクがお前の話は聞くなって言ってきたせいで何も聞こえなかった。
「凄いわね、マガツ君は…」
「別に」
キャシーさんが俺の戦い方を見て、そういった。
「それにしても剣は鏡で自分を守る力でもあるが、人を傷つける物でもあるという事を忘れるな…か。何というかカッコいい」
「かっこいいのか?」
「うん、何というか『剣聖』?みたいでね」
「そんなおとぎ話のヒーローみたいな表現は止めてくれ…」
…俺はヒーローなんかにはなれない、なりたくもない。
だって剣という鏡に映る俺は真っ赤に染まり、ヒーローなんて言われるような奴らとかけ離れている。
それに今の時点で俺を映す鏡はもっと真っ赤に染まっていく。
(俺には殺すべき人間があと2人いる)
家族を全員ぶっ殺す。
…全く記憶がないが、アマツは状況判断次第だ。
害をなすなら殺す。
「あ、あの!」
「?」
なんておもっていたら、急に後ろから声をかけられる。
振り向くと、先程バッグをひったくられた女性だった。
「ありがとうございます!何とお礼を言ったらいいか」
「礼は要らないです。では」
「その…お名前は?」
「名を名乗るような人じゃないです、それと…」
「?」
俺はその女性に近づいてから、片手に触れる。
「え!?」
「ひったくられた時、傷とか出来てないですか?」
ひったくり犯が持っていたバックはトートバックのようなものだった。
借りに勢いよく取られたのなら手に傷がつく可能性も高い。
しかも、相手は女性だ。
傷跡なんて身体につけたくないだろう。
「え、いや…その…」
「もし傷があるのなら治しますが。きれいな肌に傷跡が付くのも嫌でしょう?」
「!!?」
「…ん?」
なんか急にこの人の体温が上がったか?
よく見ると顔がほんのりと赤くなっていて、口をぱくぱくさせている。
「どうしました?」
「な、なんでもない…です」
「???」
それから女性は声を小さくしながら俺の手から離れて、千鳥足になりつつ警備局の元へ歩いていった。
…そういえば女性に触れすぎるのもマナーに反すると聞いた覚えがある。
やらかしたな…こればっかりは素直に反省だ。
手にできたかもしれない傷の方を心配しすぎた。
「はぁ…」
「ど、どうした?さっきの女性に嫌な事でも言われたのか?」
「いや、そういうわけじゃない…ちょっと心配しすぎたかって」
「どういう事?」
「あの女性はトートバックをひったくられた。んで、勢いよく盗られたのなら手に傷跡が付く可能性が高い。もしさっきの女性の綺麗な肌に傷がつくのは嫌なので治す」
「待って?」
「え?」
シェリド君に何か言われたのかと聞かれたので、話したことを全部話していたらキャシーさんに止められた。
「…さっき言った通りに言ったの?きれいな肌に傷が付くって」
「あ、あぁ。手も握ったし、ちゃんとそういうのは治さないとなって思って」
「…」
「…」
「…」
「…え、何?マズかったか?」
急に三人が黙った。
「うん、マズイね」
「あぁ、これはマズい」
「さっきの女性の人の男性観壊れちゃうよ」
「お前たちは何を言ってるんだ。」
◇◇◇
翌日、ローダム国の掲示板及び新聞にて。
『通りすがりの剣使いがひったくり犯を無力化!レギオンの生徒か?はたまた剣聖の再来か?』
「…」
「…」
マルバス様と共にレギオンに向かっている最中に、それを拾って凝視されると共に周囲の人たちの声が耳に入ってくる。
「剣使いだって…しかもレギオンの生徒ってなったらさ…」
「マガツ君くらいだよね…!」
「どんなふうに解決したんだろうね…」
なんかもう俺で確定みたいな感じになってる。
…事実だが。
「マガツ」
「はい」
「…何をした?」
「ひったくり犯を無力化しました」
「そうか…それでなんだが」
「?」
「最近、ある女性が件の生徒を探しているようだ。何でもお礼がしたいとかなんとか言って」
「…」
「…何をした?」
「本当に心当たりがないんです…」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




