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第12話 主と子の怒り

「休みですか…」

「休みだな」


机の上のコースターの上に乗ってるコーヒーを飲む。

勿論、俺は砂糖とミルクは多め。それに対してマルバス様はブラックコーヒーだ。

マルバス様に対してあまりこんなことを言いたくないが、よく苦い飲み物を飲めるなと常日頃から思う。


「マルバス様は本日は何もないのですか?」

「勿論だ。流石に休日にレギオンは開かない。休日も使えたら魔術監査警備局が黙ってないだろう」

「それもそうですね」


ずっと働かず、適度に休ませるための法律ルールだ。


「…こればっかりは労働に時間制限を付けたバエル家の王達に感謝だ」

「俺はよく分かりませんが」

「大人になればわかる」


コーヒーをズズッと飲み、軽く息を吐いたマルバス様。

バエル家。このローダム国の頂点に立つ王様の家系。

法律も、規律も、風紀も全てそのバエル家が仕切る。

仕切ってもなお、国からの不安や反発が無い時点でよい王様だって事がわかる。

…俺の育ったあんな国とは違う。


「そういえばマガツ」

「はい」

「レギオンはどうだ?入学してからもうすぐ一ヶ月ちょっと経とうとしているが」

「正直、楽しいです。魔術だけじゃなく、座学や実験、魔物に植物と色々な事を知れるので毎日が楽しくて刺激的です」

「それはよかった」


またコーヒーを飲む、マルバス様。


「友達は出来たか?」

「仲の良い人はいますね」

「誰だ?」

「キャシー・グレモリーさん、ラム・アロケルさん、シェリド・バラム君の三人です」

「ふむ、いつも一緒に居るあの三人か。良い奴らか?」

「はい」

「ふふっ。良かったな、入学の時にやらかしてもなお仲良くしてくれる人がいて」

「マルバス様がそれを掘り出すんですか?」

「いい思い出だろ?」

「いいえ…」


何で家族から傷を抉られないといけないんだと頭の中で文句を言いつつ、あの三人を思い出す。

本当に、何だかんだ言ってあの三人とは仲良く学生として生活している。

一緒に学食を食べたり、授業で分からない点はお互いで補いあったり。

実に充実している。


(…復讐を忘れそうになるくらいには、な)


左手を軽く見て、そう思う。

俺は…復讐するために強くなる。

相手がどれだけ強大でも、どれだけ卑怯な手を使ってきても正面から叩き潰せるくらい強くなる。

そして次に会った時は、俺がこの手で腕を剥いでやる…!


「それと、そろそろ中間試験だな。自信はあるか?」

「多少はあります。一応、勉強してますし」

「ふむ、なら予め言っておこうか」

「?」


マルバス様は急に俺の方に向き直し、俺に真っすぐな眼差しを向けてくる。

それを感じ取った俺の背筋をただして、向きなおす。


「レギオンの中間試験は二つの形態がある」

「二つ?」

「一つは座学。今までに学んだことのテストだ、こっちに関してはマガツなら余裕で行けるだろう。だが問題は二つ目だ」


そういいながらマルバス様は俺の前に一つの書類を出した。

この書類は…『依頼書』?


「二つ目は実技形式の試験。こっちが特に難しいとされている」

「何故…ですか?」

「冒険者ギルドは分かるな」

「それは勿論」


冒険者ギルドとは冒険者になった人専用の集会所のような物。

依頼、任務をこなしその分の報酬をもらう。

極大メリットと極大デメリットがある最もリスキーな職業と聞いてはいる。

ただ今のところは割と人気な職業とも聞いた。


「ですが、何故冒険者ギルドの話が」

「冒険者ギルドには階級があるのは知っているな?」

「はい。下からウッド、コッパー、シルバー、ゴールド、プラチナム…その上は分かりませんが…」

「プラチナムの更に上には冒険者の区切りではなく王国の刃と成れる『トップ』というものがある。それ相応の実力者ってことだ。ただ…トップになった奴は見たことがないな。大体の命知らずはあえてプラチナムで停滞する奴が多い」

「…それで何故クラスの話を?」

「ここからが関係する。実技は『ウッドもしくはコッパー級の依頼の完遂』が条件だ」

「!」

「勿論、完全に完遂することが素晴らしいが…物によってはかなりの難易度を誇る物もあり、そこは運が悪かったで片づけるのではなく頑張りとどれだけ貢献したかで点数がもらえる…とはいえだ、私が言いたいことはわかるな?」

「…多少は」


冒険者ギルドには毎回毎回様々な依頼が舞い降りてくる。

俺が聞いた限りのメジャーな任務は薬草採取とか小型の魔物の討伐がコッパーやウッドに多いが…偶にとんでもない魔物が出てくるところで依頼を完遂しないと行けないパターンがあったと聞いたことがある。

ゴールドやプラチナムが対応するレベルの魔物…キングオークとかそういうの。

その危険性がある分、難しいって事だろう。


「ある意味、レギオンで学んだ魔術や知識は自分自身の身を守る為にも使える。その為にも、実技はそれ相応の難易度がある。それを覚えておけ」

「はい」

「…まぁマガツなら大丈夫だろう。その気になったらキングオークもアンデットキングも片手で抑えられるだろ?」

「マルバス様は俺を何だと思ってるんですか…」


コーヒーをすすりながらマルバス様の言葉に苦言を零す。


「それでだ。マガツは午後は何もないか?」

「ありませんよ。買い出しの予定もないですし、昼食も夕食も作れます」

「ふふっ、なら…少し繁華街に行くとしよう」


マルバス様はそうつぶやきながら椅子から立ち上がり、支度を開始した。


「な、何故です?」


何故繁華街に行くのかが理解できず、そのままマルバス様に質問するが…質問している間にマルバス様の支度が終わってしまい訳も言われることなく、そのまま繫華街へと連れていかれてしまった…。


「…」


慣れない私服に袖を通し、服の襟をいじる。

前にマルバス様からのプレゼントとして服を受け取り、今回はそれを着てきた。


「久々だな、二人で繁華街に来るのは」

「そうですね、前は…俺が拾われた時ですし」

「あの時のマガツには服らしい服もなかったしな」

「…そうですね」


と話しながら歩く。


「それと、今度こそ訳を話してください。なんで繁華街に?」


マルバス様の家からおおよそ20分程度の繫華街。

レギオンからも近く、ローダムのなかでは結構人気があり、店が多くあるおかげで基本的に何でもある。

困ったらここに寄れって言われるくらいの場所だ。

だからこそ何で今日、ここに来たのかが分からない。

買い出しもした。学園関連の買い物も既に終了している…追加で買うものも無いはずなので、余計に疑問が増える。


「簡単にいえば中間試験用の『アイテム』を買いに連れてきた」

「アイテム…?」

「あぁ。中間試験は先程も言った通り任務を拝命し、実行する。故にその遂行を手助けするアイテムが必要だ」

「つ、使っていいんですかそれ…」

「甘いぞ、マガツ。使える物はすべて使う、それこそが任務を遂行する近道だ」


中間試験にアイテムを持ち込んでいいのは驚いたが…どんなものを持ち込んでいいのだろうか。


「それで…何を買うんです?」

「ふむ…使える物の中に薬草や治療薬があるが、マガツの場合は手持ちの魔力があるだろう?買うべきなのは魔術用のエリクサーの方だ」

「魔術用のエリクサー…?」

「それを飲んだら魔力の残量が増える。沢山、魔術を唱えられるぞ」


良いんだそれ。

下手したらそのエリクサーを飲みながら戦えば半永久的に戦えるんじゃないか?なんて思っていたが。


「まぁ個数制限があるがな、そんなじゃぶじゃぶ飲んで遂行されても此方が困る」


俺の疑問は一瞬で解決した。

そりゃそうだ…と心の中で納得した。


「それと、剣を買っておくか」

「いやマルバス様…俺が『剣』を持てないこと知ってますよね?」


そう、俺は『剣』を持てない。

正確に言うと、俺の力に耐えられる剣が無いから剣を使えない。

そんな剣は見たことも聞いたこともない。

俺はマルバス様に会うまでに何度も何度も魔剣を片手で振り回してきた。

多分、並大抵の冒険者以上の腕力がある。実際に幼いころにマルバス様との訓練で訓練用の剣を腕力で何本も折ってきた。

今更買ったところで無駄だろう。今の俺には魔剣があるし。


「それもそうだ…む?」

「どうしました?」

「いや、あそこに人だかりが出来ているなと思ってな」

「?」


歩いていたら急にマルバス様が足を止めた。

やがて明後日の方向を見て居て、俺もその方向を見た。

確かに人だかりができている。今日の繫華街には何のイベントもなかったはずだが…。


「行くか?」

「な、何故です?」

「エリクサーの店の方向だ」


何故かマルバス様は人だかりの方に行こうとしたので一応聞いたが、まさかのエリクサーのお店が人だかりの方という事らしい。


「わかりました」


とりあえず、何が起きたのかよく分からないまま俺とマルバス様は人だかりの方へ歩いていく。


「!」


すると、人だかりの中に俺がいつもお世話になっている精肉店の店主のおばさんが居た。

ついでに聞いてみるか。


「あの、精肉店のおばさん?」

「うん?ってマガツ君じゃない!それにマルバス様も!」

「マガツ、知り合いか?」

「俺の作ってる料理の肉はここのお店で買ってるんですよ」

「ふむ…ありがとう、良い肉を仕入れてくれて」

「とんでもないですよ!こちらもマガツ君にお世話になってますから!」


とマルバス様と精肉店のおばさんは雑談を開始しそうになるが、いったん止める。


「それで、この人だかりは何なんです?」

「あぁ、それね…」

「?」


精肉店のおばさんの表情が一瞬暗くなる。


「最近、ここに武具店が出来たの」

「良いことでは?」

「それは質のよい武具店ならって話よ」

「…そんなに悪いんです?」

「悪いわね…良い噂はひとつとしてナシ、でも見た目も普通で何でこんなにもろいのかが分からないって感じよ」


なんだそりゃ。

見た目は普通で脆いって意味が分からないんだが…。


「ふむ…マガツ」

「はい?」

「剣の知識はあるな?」

「それはハイ。専用魔術が魔剣ですし、それ相応の知識は頭の中に入っていますが…それが?」

「ならいい。レギオンの学園長としてもそのような詐欺まがいの店があると困る。潰しに行くぞ」

「――マルバス様の仰せのままに。」


マルバス様の表情が変わったと確認したと同時に、俺も思考を変える。

俺はレギオンの生徒にして、マルバス様の子供であり…復讐者リヴェンジャー

マルバス様が仰るならその通りに刃を振るおう。

俺の恩が返せるのなら。

そうして俺とマルバス様は人ごみをかき分け、中央に近づいていく。


「何でこんなに簡単に折れるのよ!」

「だから知らねぇよ!冷やかしならよそでやれ!」

「きゃ、キャシーさん!?」


俺は驚いてしまった。

中央で言い合いをしていたのはなんとキャシー・グレモリーさんことキャシーさんだった。

…キャシーさんって怒るんだな。結構、大人っぽい人だと思ってたけど。


「ま、マガツ君って…マルバス様!?」

「ま、マルバス様…!」

「ふむ、丁度繁華街で買い物をしていたらこのような場面に出くわすとはな」


キャシーさんは俺とマルバス様の登場に驚いている。

そりゃ…そうだろうよ。

てか、よく見たら魔術監査警備局の警備員も一緒に居た。

この騒ぎの鎮圧のために派遣されたのだろう。


「マルバス様、聞いてください!この子娘が私の作った武具にケチを」

「お前の言葉は聞いていない」

「は、はい…!?」


武具店の店主であろう人はマルバス様にすり寄ろうとしたが、マルバス様が一喝し足を止めさせる。

…後ろに居る俺ですら圧を感じた。流石、マルバス様。


「キャシーよ」

「は、はい!」

「その折れた剣をマガツに渡せ」

「えっ…わかりました」


キャシーさんは俺に折れた剣を渡してきた。

俺はそれを受け取ると同時に、からくりに気が付いた。

そして


「な、何だこの剣!?こんなの折れるに決まってる!」


俺は驚きのあまり、声を上げてしまう。

その声に周囲の人たちも、キャシーさんも、武具店の店主も黙ってしまう。


「何かわかったのか、マガツ」

「はい、何故脆いのかもわかりました」

「申せ」


俺は折れた剣の刃の隙間をマルバス様に見せ、話す。


「この剣には『芯鉄』が入ってません」

「芯鉄…それは剣の根幹を支える鉄の部分のことだな。それが入っていないのか?」

「はい。本来の剣の中央には様々な芯鉄が組み込まれています。魔術のエンチャントを行うのなら魔術を蓄えられる『貯蔵鉱石』が用いられ、魔術を弾くのなら『反射鉱石』が芯鉄に用いられます。芯鉄の例として貯蔵鉱石を用いられるとすると…貯蔵鉱石自体の効果として魔術を貯えることができるので、それを芯鉄にすると魔術を用いたエンチャントを可能とします。それと同時に芯鉄と言うものは武器の耐久力を上げる役割があります。何度も切っても何度も弾いても折れないように根幹を強靭にし、そこから刃を形成する…はずなのですが、これはそれがありません」

「分かりやすい解説をご苦労、流石は私の子だ」

「勿体ない言葉です」


マルバス様からのお褒めの言葉を頂き、俺はその言葉に反応する。


「なるほどな、だから刃の隙間に穴が空いているのだな。しかし、この方が作りづらいのではないか?」

「実際はそうではございません。普通の剣の製造方法として芯鉄を強靭にしたのち剣の型に溶解した鉄を流し、苑中に芯鉄を淹れて冷やしてから刃を打つという手法がとられますが…芯鉄が無いとなりますと芯鉄の型を先に入れたのちに型を砕き、隙間を開けてから柄にくっ付け、剣を貯蔵すれば『隙間のある剣』が完成します。そうなると芯鉄の素材もないので、その分の材料費が浮き、買う人はそれに気が付かず買ってしまいます」

「気が付かないのか?」

「簡単です。『軽くて振りやすい』と『切れやすい』といえば、その通りなので買ってしまいます。それにここはレギオンからも近く学生が居ますから…買わせるとしたらいいカモかと」

「…だ、そうだが?」


マルバス様の圧力が一気に放出され、武具店の店主に向けられる。


「て、テメェ!適当な事を言ってんじゃ」

「私の子に、文句があるのか?」

「い…いや、そういうわけではありませんが!で、でも!それは職権乱用では」

「私、言われたわ!軽い刃で切れやすいって!」

「!!?」


ここでキャシーさんの援護射撃。

俺の中で推理していた言葉をキャシーさんが肯定すると同時に、俺の推理の信ぴょう性が増した。


「警備員」

「はっ、マルバス様」

「最近、ここの武具店に関係した通報はあったか?」

「何度もございました。ですが、何故折れやすいのかという決定的な証拠もなかったため動けず…」

「なら仕方ないな…マガツ」

「はっ!」


マルバス様に呼ばれ、俺は膝を曲げて指示を待つ。


「魔剣を持つお前の意見を聞かせてほしい。剣が脆いとどのような欠点がある」

「致命的かつ重要な欠点として『命が危険にさらされる可能性が高い』です」

「ふむ…」

「剣とは魔術師や冒険者が持つ命を守るための道具です。それが脆いとなると命を守る道具は無くなり、簡単に命は潰える…と思われます」

「そうか、つまりこの武具の店主は不特定多数の冒険者及び私の生徒を危険にさらしたと?」

「そういって差支えないでしょう」

「ちょ、ちょっと待ってください!それはおかしい」


とこの武具店の店主…いや詐欺師はマルバス様に言葉に意見を言おうとしたので


「がっ!?」

「マルバス様の言葉にケチをつけるのか貴様」


俺はその口を開かせないようにするために、首を掴み持ち上げる。


「俺からも一つ言う。この女の子は俺の友達だ、そんな友達を命の危険にさらすと言うなら…容赦はしない」

「が、がはっ!?」

「よせ、マガツ」

「…わかりました」


マルバス様に止められたのでその場で男の首を話す。

男は蹲りながら首を抑えて、咳をし始める。


「しかし、この男の言い分も事実だ。マガツの推理も、私の見解も証拠がないのも事実…故にこうしよう、マガツ」

「はい」

「武具店の中にある剣と工房を調べろ」

「分かりました」

「ま”…まで…!?」


マルバス様に言われた通りに武具店の工房を調べようと店の中に入ろうとしたら男に足を掴まれる。


「ここで止められると『マズい物を隠しています』って言ってるようなものだぞ」

「!!?」

「…警備員さん、一緒に来てもらってもいいですか」

「わかりました」


証拠を含め、証人が必要と思った俺は警備員と共に武具店の中に入る。

…中は意外と普通の店内だ。剣だけではなく、槍、ナイフ、盾に鎧と様々だ。


「マガツ様」

「マガツでいいです、マルバス様の子ではありますがただの一人の通りすがりの青年ですので」

「…では、マガツ。頼りにしているぞ」

「はい」


まずは武具を確認しよう。

俺は飾られていた槍を手に持つ。


(…軽い)


やはりというべきか、予想通りとても軽い。

刃の方は…よく切れると謡っておきながらあまりよろしくない。

そして、軽く刃を握ると


――パキッ。


「こんなにもろいのか」


軽く力を入れただけで刃の全体にヒビが入った。

…論外だ。これは武器じゃない、こんなのは武器の姿をした薄っぺらい何かだ。

これに命を預ける奴らの気持ちが分からないのか、武具店の詐欺師は。

ついでに盾も鎧も軽く触った。貫通、変形、粉砕。

どれもこれも駄作ばかりだった。


「…どうだ?」

「これに命を預ける人たちが可哀想としか」

「やはり芯鉄が入っていないのか」

「そうですね。この槍…というよりこの店の品の全部に入っていない可能性が」

「なら工房に何らかの秘密がありそうだな、こっちだ」


俺はその警備員の後ろをついていき、この武具店の工房についた。

見た感じは普通の工房。だが…。


「なるほどな」


俺は見つけてしまった。

剣の型とは別の…ただの石で出来た沢山の『芯鉄』を。

やっぱり予想通りだった。鉄を流し、この石の芯鉄を入れて石を砕き、柄を付ける。

その手法で正解だったようだ。


「…やっぱりか」

「やっぱり?」

「冒険者の人たちからもこの店の事は耳に胼胝ができるほど聞いた。剣はすぐ折れる、盾はすぐ曲がる、鎧はすぐ曲がる…逮捕してほしいと」

「証拠がなかったんじゃどうしようもないですよ」

「だが、今回の件で終わりだ。十分すぎる証拠があるし、地下牢は絶対だろう」

「…とりあえず、行きましょうか。それと警備員さん」

「なんだ?」

「もし、あの男が暴れ始めたら俺に任せてくれませんか?」

「何故だ?」

「アイツは俺の友達の命を危険にさらしそうになったんですよ?」

「…程々にな」


ーーー


石で出来た芯鉄を持って店の外に出る。


「どうだった?」

「簡単に折れる剣、簡単に曲がる盾。簡単に貫く鎧。これでよく武具店を開けますね」


といいながら俺は石の芯鉄を道に放り投げた。


「そ、それは!?」

「黒です、言い逃れも何もできないほど真っ黒でした」

「私もこの目で見たので間違いないかと」


俺と警備員でマルバス様にこの武具店の店主は黒だったことを告げる。

すると


「う…うあぁぁぁぁっぁあ!!!」

「!!」


男は懐からナイフのようなものを取り出し、マルバス様へ走っていく。

そんなカスの行動を、俺が見逃すと思っているのか?


狂い奏でる(ティルヴィング)


俺は魔剣を握る。

『狂い奏でる:ティルヴィング』

それは真っ白な魔剣だ。見た目は魔剣のように見えないが不気味と感じるほどに装飾も何もなく、ただ刃と柄があるだけ。

その剣で男のナイフを受け止める。


「な、なっ…!?」

「貴様…マルバス様に刃を向けたな…?」


俺に受け止められたことに驚いた男は、折られたナイフを握りしめながら一歩下がる。

そして俺は刃を男に振り下ろす。


「…へ?」


しかし、その刃は男の身体をすり抜けただけでダメージは入らなかった。

そりゃそうだ、このティルヴィングは『肉体的なダメージ』は一切与えられない。


「な、何だよ…!ただの見掛け倒し」

「狂え、喚け、泣き叫べ…ティルヴィングの元で理由のない恐怖を知るといい」

「は…?」


そういってティルヴィングを地面に突き刺した。

次の瞬間


「あぁぁぁぁさぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁあああぁぁぁ!!?!!?!?」


男は発狂し始める。

全身から汗が吹き出し、両目から涙が湯水のごとく吹き出し、鳥肌が立ち、顔は真っ青に染まった。


「聞こえていないだろうが、俺のティルヴィングは肉体にダメージを与えることはできないが…『精神に直接ダメージを与えられる』。お前に映るのは理由のない恐怖だ」

「ああぁぁぁ!!!?あはかぁあぁぁぁぁ!?!?」

「圧倒的強者に対する恐怖、絶対的事象に対する恐怖…そんなものは生易しい。何故恐ろしいのか、何故絶望するのか分からない恐怖をその身に刻むといい。それこそが、お前の剣に命を預けた者たちの怒りだ」


やがて…男は泡を吹き、白目をむきながら倒れた。


「ふん」


ティルヴィングをしまい、武具店を見る。

すると


「マガツ」

「はい」


マルバス様に話しかけられる。


「消せ。ローダム市民、レギオン生徒を危険にさらす店など、必要ない。私からバエル家に話しておこう。『ここに武具店はなかった』と」

「マルバス様の仰せのままに」


マルバス様はこの武具店が何故かあるのが気に入らないようだ。

俺は『何故かある武具店』に左手を向け、詠唱を開始する。


「―――。」


基本的に最上位魔術でも詠唱無しで唱えることはできるが…俺でも詠唱が必要な魔術がある。

それは…『禁忌魔術』。

本来、学ぶこともできない魔術だが…知っての通り俺は『英才教育』を受けてきた。

…俺は知ってしまったんだよ、禁忌を。

勿論、俺は絶対に禁忌を使わないようにしてるし、マルバス様もそれは許可しない。

だが、今回に関しては俺の怒りとマルバス様の怒りが一致したからこそ許されている。

遠慮なく、文字通りに消してやろう。


「『プリペアティング・スタート』」


禁忌補助魔術『プリペアティング・スタート』。

一時的に魔力の制限をなくす魔術。本来、魔力の限界を超える魔術は唱えることはできない。

そもそも発動できないし、借りに発動できたとしても肉体にどんな負荷が出てくるのか分からない。そのリミッターを外す。

…俺の場合はリミッターを外して規模の拡大と魔術の威力上昇を目的で使う。


「『コマンド・コピー』」


禁忌補助魔法『コマンド・コピー』

使う魔術の威力と範囲の拡大及び俺にかけられている魔術の効力を倍化する。

単純明快だが、肉体への負荷はすさまじい。


「『バイオマス・イニシエーティング・リペア』」


禁忌補助魔法『バイオマス・イニシエーティング・リペア』

一時的に肉体の再生能力を上昇させる。

ただの再生能力向上ならヒールでいいが…バイオマス・イニシエーティング・リペアはその回復能力が逸脱している。乖離された腕も綺麗につなげ、欠損部位は新しく生え変わる。

…俺も一度は引きちぎられた腕を生やそうとしたが、止めた。

俺の腕はこの世で一本だけでいいし、アイツから返してもらわないといけない。

そして、準備も整った。

さぁ、消滅させる。


「『ブラックホール・イミテーション』…!」


そう唱えた瞬間、俺の中の魔力が半分ほど取られたと同時に武具店の中央に真っ黒な丸が表示されたと同時に


――ビュオォォォォォッ!!


武具店の店を黒い丸は吸い込んでいき…やがてその場所には、瓦礫の一つも残らずただの『空地』があった。


「あぁぁ…疲れる」


禁忌攻撃魔法『ブラックホール・イミテーション』。

現在、研究されている宇宙の事。

そこには星で出来た海、このローダムと同じような大地がある惑星、星を泳ぐ生物が居ると聞いたことがある。

そんなことを信じ、研究したある人が『ブラックホール』という何でも吸い込む何かを発見した。

やがて研究を開始し…『ブラックホール』という魔術が使えるようになったが調整が出来ず、出来てしまったブラックホールに研究者は…ということもあり禁忌魔術に『ブラックホール』が出来たが、俺が唱えたのは『ブラックホール・イミテーション』。

疑似ブラックホールを発生させるだけなので、調整や消滅といった操作が可能だ。

まぁ…魔力を凄い使うが。


「…あっけにとられてるぞ、マガツ」

「消せって言ったのはマルバス様でしょう…」

「いや、そんな空地を作るくらいまで消さなくてもよかったが」

「あー…俺、やりすぎましたか?」

「あぁ、やりすぎだ」


それから人だかりは驚きから歓声に変わった。

原因である詐欺師が作った武具店が綺麗さっぱり消えたからだろう。

だがそれ以上に…。


「ふふっ!」

「なんで…キャシーさんは付いてくるんです?」

「助けてもらったからかしら」


マルバス様、俺、キャシーさんの三人で歩いている。

なんかずっとキャシーさんが付いてくるんだが…?

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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