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第11話 魔術の授業

サラマンダー襲来から数日。

レギオンの修繕は完全に終わり、俺もアレからちょくちょく事情聴取を受けた。

マルバス様にも色々聞いてみたが、サラマンダーは完全に落ち着きを取り戻し、最近異様なほど増えていたコカトリスの被害は収まったらしい。

…んで、サラマンダーが暴れた理由は魔物の被害やサラマンダー自身の何らかの影響ではなく『第三者の影響』という事で確定した。

今は『魔術監査警備局』がその第三者を探して、証拠集めに奔走していると聞いた。

とにかく今は第三者が捕まってくれることを願うばかりだ。


「…」


授業の合間に左腕の義手の調整を行う。

サラマンダーと戦ってから義手の調子がおかしい。変に隙間があるような感覚があるんだよな…一旦、ネジやらなんやらでカチャカチャといじる。


「ふむ、ちょっぴり収まったか?」


左腕を動かし、左手を開いたり閉じたりを繰り返す。

多少は隙間があるような感覚は収まった。

ちょっぴり残ってるが、気にならない程度だな。

義手の上に包帯で巻きなおす…これで良し。


「ま、マガツ君」

「ん?」

「次の授業始まるよ?」

「え、マジか…!?」


義手の調整をしているうちに時間は立っていて、次の授業が始まる3分前まで迫っていた。

次の授業は魔術の授業。前の講義の形式ではなく、演習のような実技の形式の授業だそうだ。


「すまん。あと待っててくれてありがとう」

「えっ」


そんなわけでラムさんと一緒に歩きながら実技の場所へ歩いていくが…。


「…」

「…」


会話が一言もないんですが…。

一応、目線だけラムさんに向けるともじもじとしていて、一向に俺の方を見ようとしない。

というか首すら俺とは逆方向に向いている。


「…ら、ラムさん?」

「ふぇっ!?な、何!?」

「そんなに驚くか…?」

「いやそんなつもりはないんですけど…」


そんなつもりじゃないなら先程までの行動とその驚き方は何なんだという指摘は一旦、取りやめて軽く深呼吸。


「ま…マガツ君」

「うん?」

「マガツ君って…普段ってどんなことしてるの?」

「!?」


一旦、その質問の意図を聞いてもいいか!?

何で俺の普段の事を聞く!?

い、いや…これはコミュニケーションの一貫かもしれない。お互いの好きな事とか趣味とかそういうのを聞き出すタイプの奴かもしれない。

ならきちんと答えるべきだろう。


「普段なら家事全般、料理、あとちょっとした魔術の研究だ」

「か、家事?」

「マルバス様は常に忙しいから俺が代わりにって感じだ」

「へぇ…!もしかして料理が得意な理由って家事をしてるからって事?」

「まぁね、ラムさんは?」

「私は…ちょっぴりだけ。あ、でもお菓子を作るのは得意」

「お菓子か、作ったことないな」


一瞬、お菓子作りをしても良いなって思ったけど…止めだ。

マルバス様からお願いされる料理のレパートリーの中にお菓子が入ると考えると正直…うん。


「マガツ君?」

「…健康的な食事の提供にはお菓子作りはアリなのか…!?」

「ま、マガツ君!?」


ーーー


そんなわけで魔術の実技の時間になり、クラスメイトの全員がジェシカ先生の元に集合した。


「皆さんきちんと集まったのでよかったです。では早速、本日の魔術の実技を行いましょう!今回は基本的に魔術威力の向上をメインに授業を行っていきます。あそこにアンチマジックバリアが張られたデコイがありますのでひたすら撃って破壊してみましょう!」

「「「はーい!」」」

「勿論、補助魔術はなしで攻撃魔術のみでお願いしますね?属性は問いません!」


今回の魔術の実技は魔術威力の向上。

魔術の威力を上げるためには2つの項目がある。

一つ、『その魔術の属性の練度をあげる』

例え最下位魔法でも練度を極めれば威力が上がり、やがて下位魔術の繋ぎにもなる。

二つ、『詠唱の簡易化』

魔術には詠唱が必要だ。それを簡易化すれば連発も可能になり、無詠唱で放てるならもっと連発も可能で、技量が上がったという証拠なので必然的に威力も上がる。

んで、もう一個あるが…これは誰でも出来るというわけではない。

一人一人の魔術回路には一定の魔力が込められており、それを消費することで魔術を使うことが出来る。という事はたくさんの魔力を消費すれば必然的に威力は上がるが…消費量が上がるという事は魔力枯渇状態になりやすい。

つまり、残存魔力が増えれば増えるほど必然的に魔術の威力が上がるがおいそれと残存魔力が増えることはない。

それ相応の訓練や鍛錬が必要だ。

…俺の場合は魔力回路の密度が濃いから元の威力が高すぎるだけだ。


「それとマガツ君」

「は、はい!」


急にジェシカ先生に呼ばれたので驚きつつ、返事する。


「マルバス学園長から伝言を預かりました」

「マルバス様から…?」

「はい。本日の演習なのですが、マガツ君は魔力回路の密度が高く元の威力が高いと聞きました。実際にオリエンテーションで森を半分燃やしたので疑いはありませんが」

「す、すみません…」

「怒ってるわけじゃないんですよ。それでアレが炎最下位魔術『フレイ』と聞いて驚きました。そして今回の演習では最下位もしくは下位魔術をやろうと思いましたが…マガツ君だけ唱えられないのもアレですので、これを持ってきました」


するとジェシカ先生は何処かに手を伸ばし


「『グラヴィトン』」


と唱えた。

グラヴィトンは確か…『重力』の魔術だったはずだ。

補助魔法の一種で対象の重力を重くしたり軽くしたりする魔術。

何故グラヴィトンを唱える必要が?と心の中で思っていたら、遠くからふよふよと巨大な岩の柱が出て来て


――ドッシィィィィン!!


俺の目の前にぶっ刺さった。

砂埃が舞い、俺の前髪がオールバックになる。


「はい、マガツ君はこれにお願いしますね?」

「え、えぇ…?」


そう言いながらジェシカ先生はこの石の柱を指さす。

…他の人たちのデコイに比べて俺の方が何十倍も大きくて何十倍も堅そうなんだが。


「それともう一つ伝言がありますよ、マガツ君」

「も、もう一つ?」

「最下位のみ使用という規制を払い、上位まで許可するとマルバス様が言っていました」

「えっ!?」


じょ、上位まで!?上位まで使っていいのか!?

と驚いていたら


「マガツ君って上位まで唱えられるの!?」

「す、すごい…!」


シェリド君とラムさんが俺以上に驚き、キャシーさんに至っては両目を開いたまま硬直している。

他のクラスメイトもそうだ。

大地が揺れる…まではいかないが俺以上に大きい声を出して驚いていた。


「あ、あぁ…」

「本当にすごいな…上位魔術なんて僕はまだ唱えられないし」

「唱えられない?」

「え?だって上位魔法からは詠唱も長くなるし、とんでもない魔力も消費するから」

「あー…そうだったな」


そういえばそうだった…。

俺は良くも悪くも英才教育のお陰で基本的な魔術は詠唱無しで唱えられるし、最上位も全然使える。

ただ他の人たちはそう簡単にはいかない。

実際、最下位魔術を学ぶ機会があったとしても上位魔法から先はもっと魔術の鍛錬を積む必要もあるし、幼いころから上位魔法なんて学んでもそもそも魔力の消費量に身体が追い付かないこともある。

いわゆる『危険』だからやらないってやつだ。

俺は魔力回路の密度が濃かったから出来たってだけだしな。


「ならマガツ君の上位魔法見てみたいわ」

「キャシーさん!?」

「僕も見てみたいな!」

「わ、私も…!」

「おいおい…」


クラスメイトは俺のフレイを見てその発言をしているんだろうな!?


「マガツ君、安心してください。此の柱に関してはマルバス様が直々にマジックバリアをかけてくれました。遠慮なく撃って大丈夫ですよ」


ジェシカ先生の発言に少し安心した。

マルバス様のマジックバリアなら俺の魔術でも割れないはず。

なら遠慮なく撃っていいかもな。


「それなら…」

「それに教員の一員としてもマガツ君の上位魔法は気になりますから」

「先生もそっちの味方なんですね?」

「はい」


そこは堂々と宣言するんだな。

そんなわけで俺が上位魔術を使う事が確定し、俺は柱の前に立ち、ジェシカ先生のマジックバリアのドーム内にクラスメイトたち全員が入ったことを確認した。


「ではマガツ君。皆のお手本としてもお願いしますね」

「分かりました」


俺は軽く息を吐く。

俺にかけていた魔力の制限を今だけは取っ払い此の柱を破壊するために、魔術を唱えよう。

それでどの上級魔法で攻撃するかだな。


(うーん…)


別に『この属性なら使いこなせる』みたいなものは俺にはない。

基本的には何でも使える。

故に…ちょっと迷う。どれが一番ダメージを与えられるのかと。


(よし、サラマンダーとの事もあったし…炎で)


魔剣のサラマンダーの事もあるし、炎魔法にすることにした。


「…ッ!」


左手を柱に向けて、魔力を込める。

例え上位魔法でも俺は詠唱無しで唱えられるが…多少のチャージが必要だ。

左手に魔力がこもっていき、赤色の魔法陣が出現するとともに手に火がともる。

やがてその火は淡い灯くらいの大きさしかなかったが、一気に火は膨張し、焔となって俺の視界が暑さで歪んでいく。

そして…!


「フレイ…ドーム!!」


炎の最下位魔術『フレイ』でもなく、下位魔術『フレイア』でもない上位魔術『フレイバーン』を唱え、左手にたまった魔力をそのまま柱に向かって放つ。


――チュドォォォォォン!!!


俺が放った炎の上位魔法『フレイドーム』は狙い通り柱に直撃し大爆発。

爆発で生じた砂埃とフレイバーンが爆発した際に生じた赤白い爆発が巻き上り、風圧が襲い掛かって来る。


「…フーズ」


向かってきた風圧に風の最下位魔術をぶつけて、打ち消す。

やがて、爆炎が消え先の姿が見えてきた。

そこには


「やっぱりダメか…」


傷1つない柱が姿を現した。

本当、マルバス様の背中まで遠い。何度も訓練したし、特訓もしてきてマルバス様の背中が遠いことは今に始まったことでもないが…やっぱり遠いと感じてしまう。


(もっと、強くならないとな)


左手を握りしめて、そう思った。


◇◇◇


「「「え、えぇぇえっ…!?」」」

「す、凄い威力…」

「マガツ君って何者なんだ…!?」

「―――。」


先程のマガツの上位魔術を見たクラスメイトは反応は人それぞれだが、一致していたのは『驚き』の感情のみ。

マガツはレクリエーション時のフレイで、森を扇状に焼き切った。

その光景をクラスメイト達は見て居たうえで、上級魔術を使えるマガツに興味を持ち上位魔術を実際に見て…言葉を失うと同時にもしこれがレクリエーション時に放たれていたら森は…更地になっただろう。


「凄いですねマガツ君、流石の威力です!」


なお、ジェシカ先生だけは驚きもせずマガツのフレイバーンについて褒めていた。


「多少の魔力溜めの時間はありましたが、十分くらい短いですし詠唱も無しであの威力…結構練習したんですか?」

「あー…昔にちょっと」

「なるほど…ではマガツ君をお手本にして皆さんも頑張ってみましょう!わからないことがあったら遠慮なく先生に聞いてくださいね?」


全員『マガツ君のようには無理!』と心の中でツッコミながら各自が魔術の練習を行い始めた。


「――フレイア!」


シェリドがデコイに炎の下位魔術『フレイア』を詠唱し、放つ。

その火球はデコイに直撃し、爆発。デコイに焼き焦げを付け、傷をつけることができた。


「うーん…マガツ君のようにってやっぱり難しいな」

「それもそうよ、流石にアレは無理ね」

「やっぱり凄い」

「…聞こえてるんだが?」


一旦、シェリド、マガツ、ラム、キャシーはグループを組み、お互いの欠点やコツを相談しつつ魔術の実技に励んでいる。


「マガツ君ってどんな魔術でも唱えられるのかしら」

「ある程度は昔に学んだから出来るぞ」

「昔って?」

「…その辺はちょっと言えないがまぁ色々あったんだ」

「なら聞かないわ。それとマガツ君、ちょっと魔術のコツを教えてくれない?詠唱無しってなるとちょっと難しくて」

「わかった」

「私も教えてほしい!」

「僕もお願い」

「さ、流石に三人を一気には無理だぞ?」


マガツは昔の記憶を掘り起こし、英才教育で学んだ魔術の事を話し始めた。


「詠唱無しにする方法だけど、手っ取り早いのはいきなり詠唱無しでやるんじゃなくて詠唱の簡易化が早いと思う」

「簡易化?」

「元々詠唱する意味って『魔力を込めるタイミング』と『魔力を放つタイミング』を計るために詠唱って用いられるんだ」

「え、そうなの?」

「あぁ。だから最初の頃は詠唱が必要。そうでもしないと込めるタイミングと放つタイミングがズレて威力が下がったり、暴発したりするから詠唱がいる。逆を言えば込めるタイミングと放つタイミングさえ掴めれば」

「詠唱無しで打てるようになるってこと?」

「その通り」

「えぇ~…そうなんだ」


マガツなりの解説を聞いた三人は納得しつつ、早速やってみることにした。


「詠唱の簡易化…込めるタイミングと放つタイミングを掴む…!」

「―フレイ!」

「うん、ちょっと早く撃てるようになってるな」

「こんなに簡単に出来るなんてマガツ君ってやっぱり凄いわね?」

「…昔のことを話してるだけだ」


『そうやって訓練してきたからな』とマガツは心の中で呟いた。


「でも実際、凄い。とっても分かりやすいし、すぐコツが掴めそうな気がしてきた」

「う…そうか」


シェリドにそう言われ、マガツは照れくさそうにそっぽを向いて、頬を爪でポリポリと搔き始めた。


「あ、照れてる」

「うっ!?」


そこをキャシーに指摘されたマガツは図星を突かれたときのような声が口から漏れる。


「マガツ君って照れるんだ?」

「て、照れてない!」

「そういっても顔は真っ赤よ?」

「ぐ、ぐぅ!?」

「もっと見たい…!」

「…ッ!!」


三人はマガツの弱点を見つけたかのように、マガツを攻め立てる。

しかし


――チュドォォォォォン!!


その三人の攻めの愉悦は一瞬のうちに消え失せた。


「おいたが過ぎるぞ…三人とも…!!」

「ご、ごめん…」

「ごめんなさい…」

「あ、あはは…」


マガツは顔を赤く染めながら自分専用のデコイにフレイバーンを放ち、爆風を巻き上がらせて三人を黙らせると同時にその光景を見て居たクラスメイト全員と三人はあることを確信した。


(((絶対にマガツ君だけは怒らせないようにしよう…!)))


そう心の中で決めたのだった。


ーーー


「ジェシカ先生、どうでした?魔術の実技は」


場所は変わり、レギオン職員室。

魔術の実技の授業が終わり、ジェシカがレポートをまとめているときに1組担任の『ハーメルン・カイム』が話しかけてきた。

根元は黒色で毛先にかけて赤色のグラデーションの髪に、肩に乗っている小鳥を小さく撫でている。


「カイム先生。そうですねぇ…新入生全員の魔術の質もそうですが何よりはマガツ君の説明でコツを掴んだ生徒もちらほらと見受けられました」

「おぉ、話題のマガツ君。やっぱり凄かったですか?マガツ君の上位魔術」

「はい!マルバス理事長が使用を禁止していたのも納得しました。あの威力をほいほいと放たれたらって思うとちょっと恐ろしいです」

「そんな威力だったんですね…それで『中間試験』についてなのですが」


その言葉を聞いたジェシカはペンを止めて、レポートとは別の書類をカイムに手渡す。


「例年同様、筆記試験は学んだ事の復習、実技は個人が任務を遂行する形式で大丈夫そうです」

「分かりました、此方の方から学園担任に話しておきます」

「あ、3組担任の『ロノウェ』先生は」

「あちらも例年通りの形式で大丈夫だと」

「そうですか…今回も無事に終わるといいですね」

「えぇ…本当にそう思うばかりです」


二人の教員は窓ガラスから外を見る。

そこには生徒たちが互いに笑い合い、話し合い下校している姿が。


「…もし、私たちの生徒を害するものが」

「粛清たる教育を」

「「そして然るべき罰を」」


レギオンの教師たちの心得。

『いつ、如何なる時でも生徒の事を考え、時には教育(ムチ)を、時には褒美(アメ)を』

『そして生徒を害するものが居れば、粛清たる教育(サバキ)を、然るべき(バツ)を』

この2つがこのレギオンの教員の心得だ。


「ふふっ、この心得を言うだけで気が引き締まりますよね」

「そうですね…では学園担任に提出しておきます」

「よろしくお願いします」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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